俺の持っているポジションも輝きを増してきた。
これほどまで急速に変化するとは嬉しい誤算だが、
こういう展開になった以上は、とことんまで突き上げる可能性が高い。
なぜかというと、理由のわからない不気味な上昇に、
大衆はまだ懐疑的であり、疑心暗鬼になっているからだ。
中途半端に上がった状態からはポジションを積極的に取りづらく、
投資家は様子見の姿勢に傾きやすい。
買う暇を与えないほど急伸させた方が短期筋にとっては利益が取りやすく、
買い遅れた投資家が慌てて殺到する頃に天井を迎える、とこういう構造になっている。
この上昇がバブルの入り口になるかどうかは定かではないが、
政府の株の買い支えというのは市場原理に逆らった行為であり、
その金額がどれだけ大きいものであろうと、
結局はその企業が持つ本来の価値へと株価は収斂することになる。
この視点だけは常に持っておく必要がある。
さて、本題の方に移ろう。
仕掛けをする際に意識すべき重要なポイントとして、
その形が単純形か複合形かというものがある。
例えば、344sと持っていたら複合形、
34sと持っていたら単純両面形、
44sと持ってたら単独トイツ形(単純トイツ形)だ。
344sのような複合形からは焦って鳴かずとも自力で何とかなる部分であり、
5s引きのようにさらなる伸びも期待できる好形であるため、
迷ったら鳴かない方が有効であることが多い。
それに比して、34sの単純形の場合、
その部分からの伸びを期待するには手数が必要であるため、
形が決まっているという意味で、複合形よりは即鳴く価値は高まる。
一方、44sという単独トイツ形の場合、
横伸びの変化は十分に見ることはできるものの、
やはりシュンツになるためには2手と時間がかかる上、
最終的に切り出す4sが危険牌となりやすい。
こういう観点から、仕掛け前提の手で単独トイツであるなら、
積極的に仕掛けることが攻守両面の点から有効となりやすい。
結局、速度と将来変化の有効性を天秤にかけた際、
複合形は伸びも見込めて急所となりにくく、
単純形は急所となる可能性があるため、
鳴くなら複合形ではない部分から鳴いた方が失敗が少ないということである。
それでは、実戦例を見ていこう。

トップ目で迎えた東4局、南家。
自風の南がトイツであるところに、下家から3pが出た。
さて、どうしよう?

これはポンした。
ピンズやマンズでもう1メンツと考えた際に、
横伸びの要素はあるものの、シュンツだと2手かかるため、
ポンした方が圧倒的に速度が見込みやすい。
しかも、捨て牌含めて固めている369pのスジは他家の急所になりやすく、
シュンツで使う場合に切り出す3pは後々危険になりやすい。
それならば、36pをここで処理してしまい、
4mにくっついたらタンヤオ移行も見ると、そういう算段だ。

ほどなく南が鳴けた。
感触十分の最終形だ。

しかし、ラス目下家のリーチ一発目にドラを掴んでしまう。
さすがにこれだけはという感じでいけない。
8mの暗刻落としでオリ。

結局、2人テンパイで流局。
親に粘られてテンパイを入れられてしまった。
まっすぐ行っても47sであがりを逃したわけではないのが救いだ。

別の半荘。
東4局、16000点持ちラス目で迎えた親番。
ダブ東が暗刻で入っており、やる気十分。
対面から3sが出たが、さてどうしよう?

単独トイツのコラボなのでポンした。
これは変化期待が十分なので鳴かない手もあるが、
ポンしないと少し遅いし、愚形残りなら3900が確定するというのがポイントだ。
これが、233sなら複合形なので鳴かない。

即赤をツモって美味しい2600オール。
機敏な仕掛けがリズムよくあがりに結びついた。

別の半荘。
南3局、23700持ち、3着目の北家。
対面が3800点の離れたラス目。
ドラ暗刻のチャンス手をもらったところ、
対面から4mが出たが、どうしよう?

これは迷わずポン。
単独トイツなので複合形の2pや8sより格段に仕掛けやすい。
これが344mや445mなら、マンズの伸びを見るため、4mはスルーだ。

7s、2pと引き込み、あっという間にテンパイ。
ピンズの下が絶好に見えるので8s切りとした。

すぐにトップ目の下家から出て7700。
この半荘は2着で終了した。

別の半荘。
南1局1本場、23200点持ち微差の3着目。
端よりの手牌で、赤5mが浮いている。
下家から1mが出たが、さてどうしよう?

メンゼンではあがりが厳しいとみてこれをポン。
この手はおそらく1mからポンするのがベストだ。
東は受けに効きやすいし、899mの複合形が残っていることによってテンパイチャンスが広くなっている。
ペン7mの受け入れもあることでこの手の安定性は増していることがわかるだろう。
単独トイツだからこそ1mからは積極的に仕掛けやすいわけだ。

東もポンしてテンパイ。
ド急所のペン3p待ちとなってしまったが、
覚悟の上であり、これはこれで仕方ない。

親リーチが入って苦しくなったが、親が上家に3900放銃で決着。
この最終形でこの結果であれば、どちらかというと満足のいく別れだ。

別の半荘。
東3局1本場、微差の3着目の北家。
1メンツもないが、ドラの発がトイツ。
対面から7sが出たが、どうしよう?

少し遠い仕掛けになるがこれはポンした。
好形を犠牲にしない単独トイツからならこの手は仕掛けやすい。
北や中の重なりも含めてゆったりあがりに寄せていき、
ドラが鳴ければラッキーという感覚での仕掛けだ。

終盤にさしかかるところでドラもポンできた。
欲を言えばポンテンぐらいはほしかったが、
かなりのチャンスであることは間違いない。

対面のリーチに対応して4mが鳴けた。
58mは場況から悪くないように見えるが果たして…

!!!
ツモの声によって開けられた手、
対面の名前に違わず、それはそれは美しいものだった。

俺の切った8pを我慢して、赤5pを引き込んでのドラリリース。
腰の入った見事な手順であった。