
南2局1本場、微差のラス目で迎えた南家。
点棒状況は自分から順に、10600、11800、31800、45800。
3着目の西家とは微差となっている。
ソーズに寄ったチャンス配牌をもらっている。
赤があるのでこれはぜひともものにしたい手だ。

ツモ切りが続いて少し手間取ったが、急所で絶好の3sツモ。
ここさえ埋まれば、日の目を見るチャンスだ。

終盤に入り、上家から9sが出た。
さて、あなたならどうする?
大体の人は以下のいずれかに該当するはずだ。
@9sチーして東切り
A9sチーして5s切り
B9sチーして1s切り
Cスルー
ちなみに、結論からいうと、
この4つの選択肢のうち3つが正解だ。
適当に選んでも大体間違えないということになる。
選んで間違うなんてこと、さすがにないよね?

ひとつ、言い忘れたことがあった。
上家から出たこの1sにラグがあった。
このラグを覚えてさえいれば、1sは山にないとわかるので、Aの選択肢は必然的に消えることになる。

実戦での選択はひとまず9sチー。
巡目的にも多くの人がとりあえず鳴くだろう。
そして…
第一感は高目一通に取る東切りだったが、ちょっと待った。
巡目はすでに14巡目と終盤だ。
ここで例えば他家からリーチが入った場合、東切りだとどうだろう?
危険牌をツモった場合に、単騎待ちで回るという選択ができなくなってしまう。
その点、5sか1sを切っておけば、ソーズは変化形となり、
状況変化に対して柔軟な対応ができる。
1sのラグを見ているので、ここでは…

B9sチーして1s切り、これが最善と見た。
7sのノーチャンスで8sは止まらないだろう。
「終盤の仕掛けは変化形に受ける」
これは無駄な放銃を避けることにつながるため、ラス回避の重要な天鳳では必須のスキルだ。

真っ先に除外した147sをあっさりツモる。
A9sチーして5s切り正解!1300・2600ツモ

さらに、親リーチが入った一発目、6sをツモる。
言うまでもないが痛恨のド裏目だ。
安全な方を切って2s切り。
@9sチーして東切り正解!2000・4000ツモ

そう、このドラツモに備えた変化形受けだったわけだ。
2回あがり逃した後に言っても説得力がないが。
しかも、36sも安全ではなく、感触は非常に悪い。
ここでは6sを切ったが、3sの方がやや安全度は高かったか。

結局親との2人テンパイで流局。
ほうほうの体でテンパイに逃げ込んだ。

遡って9sチーした時の全員の手はこのようになっていた。
山には、
@36s2枚残り
A147s2枚残り
そしてB258sだけはもう山にない。対面の8sトイツが誤算だった。

そして、9sスルーした場合、どうなっていたか?
下家に流した4sを手中にしてテンパイ。













ツモ

3s3枚見えにつき、手順で5s切りの69s待ちに受けられる。

対面、上家と掴ませることになる69sが偶然止まったとしても、
下家に流れた海底の9sを自力でツモっていた。
Cスルー正解!8000出あがりから
牌姿をよくよく見返してみると、
イーシャンテン時の牌姿から、ソーズは何を引いてもテンパイ。
慌てて仕掛けて自ら難しい選択へと飛び込まなくても、
ツモによって自然に導かれた最終形を追っていくだけでよかった。
なぜかというと、メンゼンなら東切りでピンフがつくので自然と369s待ちに寄せることができるからだ。
ともかく、9sスルーというのはこの巡目でも十分ありえた選択で、
この9sをスルーできる人は、強い麻雀が打てる人、というイメージだ。
結局、唯一の裏目を選択してしまったわけだが、
麻雀を覚えたての初級者なら、当然高目の一通に受けるだろうし、
受けの意識を視野に入れていなければ、打点を見ての一通に傾きやすいだろう。
そして麻雀を知っている人でなければ9sスルーという選択肢はないだろう。
麻雀を知れば知るほど、自分の中の引き出しも増えていくわけだが、
引き出しが増えるということは逆に言うと迷いの種が増えるということでもある。
知識が増えることで、難しく考えすぎてしまい、
かえって麻雀自体を難しくしてしまう。
これが「麻雀上達におけるジレンマ」だ。
この迷路に迷い込んでしまうと、
上級者の思考になったゆえに、成績がかえって悪くなるという事態も起こってくるだろう。
ただ、ひとつ言えることは、
受けに備えてABの選択を考えた上で、@を選んだ人と、
何も考えずに手拍子で@を選んだ人には明確な差があるということだ。
様々な選択肢のメリットデメリットを実戦中に考えられているか、
考えたうえでの裏目・ミスであるならば、それはさらなる伸びしろがあるということでもある。
そして、できるだけ間違えにくくする方法論のひとつに、
局面をシンプルに持っていき、自ら選択しない構えを取るというのがある。
これはツモに従って自然に打つということだが、
9sスルーも優秀な選択肢であるのは、ツモに沿って打つことでシンプルな答えを導けるからだ。
引き出しは多く、思考はシンプルに、というのが麻雀における好循環のコツで、
迷いをできるだけ作らないスルースキルというのは、実は局面をシンプルにするための体系化でもある。
例えば、「迷ったら鳴かない」というスルースキルの基本は、まさにこの事例に当てはまっている。
閑話休題。
実戦ではあれだけのあがり逃しがあったわけだが、
これによって何を生んだかというと、なかったはずの親の連荘だ。

3本場。親に追っかけられたらこうなるわな。
裏1で5800。
この放銃により飛び寸に追い込まれ、そのまま飛びラスを食ってしまった。
考えれば考えるほど難しいと思える1局だった。
ラベル:天鳳