麻雀を打っているとよくあることである。
あがり牌というのは、たった1枚だけ自分の山に(できれば次巡)いればいいのであり、
その1枚がワン牌に沈んでしまうと永遠にあがれないということになるし、
7枚8枚山にいたところで、自分の山に1枚もいなければやはりあがれない。
天鳳で牌譜を振り返ってみると、
山にいっぱいいると思ってかけたリーチが、
実は相手の愚形と変わらない枚数だったなんてことはしょっちゅうある。
めくり合いの段になってしまえば1枚2枚の枚数差などほぼ無いに等しい。
逆に言えば、だからこそリーチ合戦では勝ちを確信するということはありえず、
常にドキドキ感や緊張感と対峙できるのだろう。
麻雀の中毒性の一部として、めくり合いに勝った際の快感というのは確実にありそうだ。
不調時というのはこの巡り合わせがとにかく悪いものだが、
枚数の多寡に関係なく、山の深いところに沈んでいる場合は、
勝負が長引かない限りあがれないわけで、
あがり牌が山に深いというのは非常に厄介なものだ。
こうしてみると、スリカエというイカサマは、
手っ取り早く勝つための最善の手段という気がしてくる。
たった1枚のありかがわかれば確実にあがりがものにできるからだ。
そんなことを考えたくなってしまうほど、無作為に積まれた山ではあがりを得るのに苦労するということである。
取りとめのないことを書いたが、
その1枚をツモる可能性を上げるべく、
山読み、手牌読みを駆使して、いい待ちを選ぶ努力を雀士は日々しているわけだ。
ちなみに、わかりやすい用語がなかったので、
アクティブ山=ワン牌以外の生きている山
パッシブ山=ワン牌
として用いることにした。
それでは牌山の数奇な巡り合わせ、
気軽にご覧いただきたい。
case1 ファン牌は山に深いとあがれない1

南2局、24700点持ち3着目の西家。
ラス目の北家が南を一鳴き。
競っている2着目が親番となっている。
下家から8sが出たが、これを鳴く?

ポンした。
単独トイツの2pから仕掛けるのがベストだが、
北家が仕掛けたということもあり、こちらも速度を合わせた。
発さえ鳴ければ電光石火のあがりが見込める。

ただ、バックの難点は、この一段目ぐらいで発が出てこないと厳しいということだ。
全体的にわりと脂っこい中張牌が出ているにも関わらず、
このへんで発が出てこないということは山に深いか、あるいは持ち持ちの可能性があるからだ。

そして最悪の事態がこの親リーチ。
発さえ鳴ければなあ、と何度つぶやいたことか。

ほどなくツモられ裏なしの2000オール。
苦しいカンチャンをあっさりツモられているのは仕掛けがイマイチだったということか。

発はアクティブにはいたが、まあまあ深め。
ファン牌頼みの手は、それが山に深いとかなり厳しい勝負を強いられやすい。
case2 ファン牌は山に深いとあがれない2

ダントツトップ目で迎えた南2局の親番。
何だこの配牌は!?フィニッシュは役満で決めろということだろうか?

打点妙味の薄れるカンチャンが埋まってがっかりというほどではないが、まあいい。
後は仕掛けるだけ。

中盤になっても字牌が高く、一向に鳴けない。
浮かせていた赤にドラがくっつき、渋々このターツを残す。

さすがにこれは持ち持ちの可能性大と読み、チートイに転身した。
巡目的にドラが切りづらくなってきたというのもある。

終盤にオリ、結局下家の1000・2000ツモとなった。

9巡目。東西北発誰もな〜〜〜んも持ってない。
世が世なら5秒ぐらいで親満をあがっていただろう。
これでラス目とかだったら、焦れて耐えられなかったはずだ。
case3 あがり牌が山に深い1

東3局、16600点持ちラス目の南家。
河が変則手っぽくない絶好の西単騎。自信の即リーチだ。

一発目のツモが7mで、マジかよ!となる。
チートイツではよくある光景だ。

2人テンパイで流局。
西はというと、2枚もワン牌に死んでいた。
ただでさえ枚数の少ない単騎待ちなのだから、そこんとこ頼むよ〜と言いたい。

2件リーチに対して、下家にポツンと浮いた西、よく止まったな。
case4 あがり牌が山に深い2

開局の南家。
北家リーチ一発目にこちらもテンパイが入った。
さて、どうしよう?

このタイミングでズバッと入ったテンパイなら当然の追っかけだろう。
手詰まりなら発は拾える可能性もある。

しかし、先に掴んで裏なしの7700。
高目一通の本手リーチだった。

シャンポン対リャンメンなので順当な結果にも見えるが、
山には3枚ずつで、めくり合いは実は互角だった。
ただし、私の待ちはワン牌に2枚&山に深め、
対面の待ちはすべてアクティブに生きていた。
枚数的には不利に見える勝負も、実際はこのように大差ないケースも多い。
ワン牌に沈んでいる枚数が結果を左右するだけに、
できればアクティブにいてほしいものである。
case5 あがり牌が山に深い3

11000点持ちラス目で迎えた南3局1本場。
上家との差は6400点。
対面から出た7p、これを鳴く?

かなり苦しい仕掛けだが、ラス目につき前進するしかないだろう。
この手を5200クラスに仕上げて、オーラスあがり勝負に持ち込みたい。

白もポンでき、やっとイーシャンテン。
はあはあぜえぜえ、私必死です。

そして待っていたのは、3着目の倍満ツモという結末だった。
当然のことながら、この半荘ラス。

ドラ表示牌周辺のワン牌を見ていただきたい。
まるで私を嘲笑うかのように発と北が固まっていた。
ご丁寧に、リンシャン牌の次の牌から。
「お前には絶対にあがらせん!」と言われてしまった。

上家はというと、配牌ドラカンツから余裕の1枚はずし。
劣勢の者を容赦なく地獄につき落とす、これが麻雀の不条理だ。
case6 あがり牌が山に深い4

東1局1本場。
4pカンツから絶好の5pを引き込み、即リーチ。
これ2p、誰も使えないよな?

リーチ後に持ってきたダブ東を親にポンされた。
ぐぐっ、これは危険だがさすがにこの待ちならなんとかなるよな?

うっかり掴んだ4sを親は見逃さず、11600の放銃。
たまには見逃して〜な。

ってか残り山には258pしかいないぜ…
アクティブには147sは残り1枚、258pはワン牌に1枚もいないのに…
得点が得られないというより、失点がでかすぎる。
自分の不運を呪うのでこの牌山は見ない方が良かった。
case7 あがり牌が山に深い5

東4局1本場、23100点持ち3着目の南家。
感触のいい3pを引き込み、即リーチ。
下家は赤5mを切ってることより少なくとも5mは持っていない。

一発で入り目を打たれた。わかりやすい感じのダブルターツなのに…。
経験上こういうのはピンチだ。

上家のトイツ落としが間に合い、下家の3900となった。
何気ないがこういう針に糸を通すようなあがりこそいいあがりなのだろう。

25mはどこだ?と追っていくと、何と最後のワンブロック丸々25mだった。
終盤までもつれ込めば100%あがれるというのは熱い。
こういう特殊な牌山の時は、何か演出があれば盛り上がるね。
妖精が出るとか。
case8 あがり牌が山に深い6

南1局、21000点持ち3着目の親番。
対面からリーチが入るも、こちらもカン3sでテンパイ。
ドラ表示牌で苦しいが、リーチの河が強いのでここはある程度押す。

実はこの3sは誰も持っていない、山に3枚いるのだ。
対面の待ちの方が圧倒的に強いが…

しかし、開けてみると3sは山に深すぎる。
ただでさえ苦しい待ちが山に深いとなると当然…

こうなる。2000・3900の親っかぶり。
まあこれは順当なので掴まなかったことを良しとするところか。
case9 あがり牌が山に深い7

南3局、4600点持ちラス目の北家。
絶好のカン8mが埋まって、即リーチ。
3sポンで2sは狙い目だし、タンヤオ風味の仕掛けより、ドラも山にいそうだ。
これはかなりあがりが見込めると踏んでいる。

実際、リーチ時は全山だ。

直後になんと3着目の上家から追っかけが入る。
これは直撃の大チャンスでもある。
乾坤一擲、ラスをかけた大勝負。

ここで勝っていたら辛酸なめ夫にはなっていない。
高目を掴んで8000で飛びラス。

開けてみると私の待ちはワン牌に3枚も死んでいた。
上家の7mは2枚死んでいて、不調者同士の対決という感じ。
鳳凰卓参戦直後はとにかくこういう勝負所で苦い結果が続いた。
case10 あがり牌が山に深い8

南2局、44900点持ちトップ目の西家。
2着目の親とは5000点差となっている。
現状3着目の上家からリーチが入り、この2mをチーテンに取った。
上下からあがりを拾えば飛ばして終了という点棒状況。
仮にリーチに放銃しても親が流れるので良しだ。

しかし恐れていた親リーチが入って一発目。
かなり危険な6pだが、ここは勢いで押した。

4pがカンツになったが、さてどうしよう?

親の捨て牌からはかなり危険だが、押した。
ソーズで回るのは、4sが上家に、5sが親に通っていない。
というよりも、36s山にいるだろ!という自分のあがり目が押しの根底にある。

なんと全員テンパイで流局。
あれ?3sが見当たらないが…

何とワン牌に4枚もの3sがいらっしゃった。
山死にしている待ちは私のみ。
他家は待ちを潰し合っているのであがり目がない。
こういう牌運の時は大体トップを捲られるものだが、この時は辛くもトップを逃げ切った。不幸中の幸いだった。
case11 あがり牌が山に深い9

南1局、21000点持ち2着目の南家。
赤5s引きで一通のテンパイとなったところ。
5200ならダマで十分だし、ピンズの場況がかなり良い。
さらっとあがって大トップ目の親番を流したいところ。

5pツモって選択の場面だが、ここはツモ切りとした。
対面の両面ターツ落としは、ほぼ8pを持っていない。
ますます8pに期待できる状況となってきた。

あちゃ〜裏目った。
さすがにここまで8pが出ないということはどこかに固まっているのだろう。

3人テンパイで流局。
あれ?8pはどこ?

ワン牌に毛虫が4匹。
いかに山読み、手牌読みをしてもワン牌が仕事をすれば意味を為さないという例。
放銃率0%のワン牌死にだけはご免こうむりたいところだ。