特にトップ目の南場では穏やかな局回しを意識するところだが、
天鳳の場合はラス回避という観点からも無駄なリーチはなるべく控えたい。
そこで、リーチをかけない手組みというのが重要となってくるわけだが、
この手組みにはそれなりに技術差が生まれやすく、
効率を損ねすぎてもあがりを逃すことになるし、
クイタンで2フーロ、3フーロと仕掛けていっても手狭になって相手リーチの餌食になりやすい。
かといって、棒テンでリーチを打ってもやはり反撃を食らうというように、バランスが難しい。
基本としては、占有率の高い(つまりできやすい)手役である、
ファン牌、ピンフ、タンヤオの3役を主眼に手組みを進めていくが、
手がバラバラならチートイツ、色が偏っているならホンイツという風に臨機応変さが求められる。
ちなみに、ホンイツは捨て牌が偏って待ちが読まれやすい上に、
仕掛けると過度に警戒を呼んでしまうため、局回しの手役としては適役ではない。
打点に意味のない局では不必要なホンイツはバッサリ見切ってしまった方がいいだろう。
さて、前回トピックに絡んで、今回はリーチをかけたくない局面におけるイーペーコーについてピックアップした。
ダマテンにおけるイーペーコーという手役は、実質待ちが3枚しかなく、
タンヤオやピンフに比べてあがりやすいわけではないが、
それでもファン牌が待ちになるよりは枚数としては多い(使いやすさの差はあるが)。
牌効率の観点からは、イーペーコーは意外と盲点になりやすいが、
イーペーコー作りのコツとしては端よりの複合形を大事にするのがポイントだ。
例えば、















この形では3pは残しやすいが、






























上記2例における役ありの受け入れは、イーペーコーの2種がある分、
実は発や中を残すよりも広い(あがりやすさは別として)。
見た目の形的には即座に切りたくなる2pや1pだが、
ピンフが見込めない手であるので、
リーチをかけない手組みを目指すのであれば、
これを大事にして1枚切れの発や中を見切っていくなどという工夫が可能だ。
このように、局面局面における最善手は変わってくるものであり、
手役の中でもイーペーコーは盲点になりやすい分、手作りに差が生まれやすくなる。
それでは、実戦例から見ていこう。
case1

南2局、49000点持ちダントツトップ目で迎えた南家。
西家が2700点と虫の息。
整った形から9pを引き込み、さて何を切る?

5s切りとした。
ドラはまだ切らないとして、好形の受け入れ自体は5s残しがやや優るが、
ピンズの下を残すとイーペーコーが見える。
5mがドラでなければ総合的にはドラ切りも十分にあるだろう。
下家が飛び寸ということもあり、
ここでの最大の愚策は何かと言ったら、リーチをかけて親に放銃することだ。
これだけは何としても避けなければならない。

狙い通りに1pを引き込んだ。
2pは残り2枚と薄いが、場況的には悪くない。
リーチをかけないという方針に沿っての役ありなので感触としては十分だ。

ラス目下家からリーチが入って、これは展開としては悪くない。
ダマのまま対応しつつ、ツモって500・1000。
上手くかわしきることに成功した。
追っかけという手もなくはないが、万が一の親の追っかけがあるため、
ここは親の様子を見ながらのダマテンがいいだろう。
case2

南4局1本場供託1本、37300点持ちトップ目の北家。
下家がラス目の親番で、南家にも西家にも満貫放銃でトップが変わってしまう点差。
ドラは使いどころの5pで私の手には1枚もない。
つまり、リーチだけはかけたくないという状況となっている。
2巡目にして、整った牌姿だが、さて何を切る?

内に寄せる9s切りとした。
789の三色も十分に現実的だが、端の愚形を残すよりもこちらの方がピンフになりやすいだろう。
北家ということもあり、親への対応も考えると仕掛け前提の手組みは避ける方針とした。

6pを引き込み、十分形に。
ここで自然に赤5sを放して完全イーシャンテンに取った。

4mが暗刻になってテンパイしたが、さてどうしよう?

ドラ受けもあるからとリーチに踏み切るのは愚策だ。
上家の仕掛けを降ろす必要はないし、手を固定しての満貫放銃は避けたい。
あがれないドラの方はどうせ場に出にくい。
そもそも、ピンフにならない4mをわざわざ引っ張った理由は、
縦引きでもイーペーコーの手役により、ダマが可能となるからだ。

結局、親からあがれる方が出て、1300でラスト。
上家は現状3900、親はバックの2900のみ。
伏せられた状態では過大に評価してしまうのがトップ目の立場というものだが、
慎重以上臆病未満で対処していくのがいいだろう。
case3

オーラス、39700点持ち2着目の親番。
トップ目下家とは600点差のあがりトップとなっている。
絶好の5pを引き込みテンパイ。
さて、どう受ける?

当たり前の4p切りと思ってはいけない。
下家に合わせ打ちの4pは自然だが、打点に意味のない状況につき、
受けを考えるなら、実は7p切りの方が柔軟だ。






この形のスライドは、
(1)








(2)








この2種のみ。
一方7pを切っておけば、






(1)








(2)








(3)








(4)








スライドの種類が2種増える。
気づきにくいが、イーペーコー形は受けに不向きな形で、
横伸びの牌形の方がスライドしやすく、守備に適しているということが言える。
なので、打点に意味のないこの状況においては47s受けにしても7pを切る手が十分に考えられるのだ。
それでは、なぜ4pを切ったのか?

これだ。こういう単騎変化があるからだ。
イーペーコーという手役が確定していれば、待ちはタンヤオじゃない単騎変化が効く。
タンヤオだからと7pを切ってしまった場合はこういう単騎への変化を見込めず、
かえって柔軟でない形になってしまうからだ。
そもそも守備をあまり考える必要がなく、
スライドが効果的になりやすい場況でもないというのもあるだろう。

結局、47sのままトップ目から打ち取って終了。
47sは下家の仕掛けに切りづらい河になっていたのでそのまま押し通した。
この4sはラス牌で、実は南単騎の方がいい待ちだった。
case4

オーラス1本場供託1本、34800点持ちトップ目の北家。
2着目が27500点持ちの親となっている。
3sツモってきたところ、さて何を切る?

北切りとした。
速度としてはドラの8m切りがベストである可能性もあるが、
北家ということもあり、仕掛けないという意思表示の北切り。
上家は満貫ツモでラス回避。
上家リーチで親も南家も止まるので、悠々と構えることでそれを期待してもいい。

狙いの1sツモでイーペーコーができた。
1s4枚見えにつき、2sは狙い目となっている。
形は決まったので、後はドラ切りのタイミングを計る。

テンパイが入り、このタイミングでドラリリース。
幸いにも声はかからず。

直後に対面から出て、1300でラストとなった。
愚形でもリーチをかけなくて済むというのはかなり大きい。
case5

オーラス、12500点持ちラス目の北家。
ダントツトップ目が親で実質1局勝負。
3着目の上家とは700点差、2着目の対面とは5100点差となっている。
好配牌をもらって、すでにイーシャンテン。
さて、何を切る?

7m切りとした。
ピンズの愚形部分を何とかしたいところなので、
ソーズの厚い形を残してその部分での好形変化を見込むという意図だ。

8sをツモってイーペーコーの形ができた。
さて、何を切る?

ドラ方面には寄せずに3p切りとした。
あがりラス回避につき、何はともあれイーペーコーの手役があるのはありがたい。

ここしかない7sを引き込み、テンパイ。
さて、リーチか、ダマか?

ダマとした。
仮にリーチツモでも裏なしなら3着終了。
それならば対応させずにラス回避に全力を注ぐべきと判断した。

結局3着目から出て、1300。
なんとかラス回避することに成功。

裏ドラは乗っておらず、いずれにせよ3着止まり。
配牌をもう一度見るとわかるが、コーツ系の手牌での両面固定は牌形に合っていない捌きで、
69mは山に薄く、あがりづらかった。
何より恐ろしいことに、次巡があったなら親がダマツモを炸裂させていた。
リーチでも結果は変わらなかったかもしれないが、
1巡の後先で結果は大きく変わるだけに、ここでのリーチは少々傲慢であるということだろう。
ツモで2着捲り確定なら、リーチもありというところか。
このように、イーペーコーは端含みを厚く持つことで、意外とできやすい手役であるため、
リーチをかけたくない局面では意識に入れておくといいだろう。