よく、「三倍満は役満より難しい」と言われるが、実際のところはどうなのだろうか?
私自身の和了集計を参照してみると…

役満が14例に対し、三倍満はなんと3例しかアガっていなかった(鳳凰卓5343試合)。
試合数に換算すると、役満は382試合に1回、三倍満は1781試合に1回ということで、噂通り三倍満の方が遥かに難しいということがわかった。
考えてみると、大三元みたいに9枚でできるような部分的な役が三倍満にはない。
役満に大三元があるかどうかだけで、三倍満との出現頻度に大きな差が生まれるのははある意味当然と言えるだろう。
天鳳は赤があるので、タンピン形でも一発や裏ドラ次第で三倍満は現実的に狙いうるが、
鳳凰卓では相手の守備力が高いため、ダマっパネ、ダマ倍の手をわざわざリーチするという選択になることは少ない。
完全順位戦の天鳳では必然的に三倍満の出現率は下がることが想定できる。
逆に、一発や赤にご祝儀があるリアルでは高打点でも相手を抑え込んでツモアガリを狙うという戦略があるため、ネット麻雀より三倍満の出現頻度は上がるもの思われる。
事実、去年私はリアルで三倍満をツモアガった。
リアルでは、赤が2枚ぐらい噛んでいると積極的にリーチに踏み切りやすく、この時も例に漏れない。
三倍満というと一昔前はメンチンやドラ絡みコーツ系ぐらいでしかお目にかかれない印象だったが、
赤の台頭によってタンピン形でも現実的になっているというのは、時代の流れを色濃く反映していると言えるだろう。
出現頻度が0.02%という数値からもわかるように、三倍満は裏ドラ次第で何とかなるというものではないので、
いかにラス回避が上手い私でも、オーラスの三倍満ツモ条件はほぼ不可能なレベルであることがわかる。
逆に言うと、オーラス時点で子相手に対し、20100点以上の差があれば、放銃しない限り捲られることはない、と言える。
倍満が約1%の出現率であるため、倍満と三倍満の壁はあまりに大きい、というのは感覚的に理解できるのではないだろうか。
ちなみに、アイスドール和泉由希子プロは、テレビ対局で頻繁に三倍満をアガるため、一時期「トリプルクイーン」と呼ばれていたことがあった。
トリプルクイーンがキャッチフレーズだと、三倍満をアガらなきゃいけないプレッシャーで麻雀がボロボロになってしまいそうだと思うのは私だけだろうか。
思うに、最近のプロは勝ちに拘る打ち手が多すぎて、破天荒に三倍満や役満を狙うキャラがいないなあ、と。
両立しえないのは百も承知だが、見る者を圧倒する「個性」というのも今後のプロに求められるものではないだろうか。
雑談はこれぐらいにして、私はどのような三倍満をアガったのか、ご覧いただきたい。
case1

南3局3本場、27400点持ち微差2着目の南家。
下家が天鳳位のウルトラ立直さんだ。
トップ目の対面が先制リーチ、その宣言牌を親が仕掛けたところ。

直後に持ってきたのはテンパイとなる2p。
役なしテンパイだが、さて、どうしよう?

東切りで回った。
東1局なら追っかけでも問題ないところだが、さすがに南3局の僅差。
この状況でトップ目がリーチをかけてくるというのは十中八九好形テンパイで、ドラが見えていないことから高打点も十分に考えられる。
この局面で満貫を放銃してしまうと一気にラス落ちとなってしまうため、リーチのリターンよりリスクの方が遥かに大きい状況と言える。

4sがカンツとなり、カンを保留していると、次巡持ってきたのは絶好の7p。
これなら…

カンからの追っかけだ。
危険牌をすべて使い切った上、この三面張なら十分な勝算がある。
カンドラにペロリとめくれたのは皆がギョッとする3sで、俄然ボルテージは高まる。

御無礼!一発ツモです。

無礼に裏が4枚乗って、なんだかわからんが6000・12000。
これだけ偶然役のみで構成された三倍満というのも逆に珍しいのではないだろうか。

王牌にはあらかじめ3sをたくさん仕込んでおいたのさ、ニヤリ。
対面は中堅手だったが、愚形で曲げてきたというのがやや意外だった。

たまったもんじゃないのは親っ被りでラス争いに巻き込まれた上家。
そして突然訪れた天鳳位のロンの声。
この喧騒にもまったく動じず、冷静に2着捲りを成し遂げるあたり、天鳳位の格を感じることができた。
case2

東4局1本場、29700点持ち2着目の親番。
むむっ。配牌からソーズに寄っている。これは高打点も狙えそうだ。
さて、第一打は何を切る?

私の好みは1p切りだ。
ホンイツをはっきり視野に入れながら、好形ターツや赤を逃さない手組み。

さらにソーズが伸びてイーシャンテンに。
ここから何を切る?

ここで6m切りとした。
ここまでソーズが伸びている以上、6mにくっつけてリーチと行く手ではないと判断した。
これが出アガリの効くピンフなら、6mを残して字牌を切るのがいいと思う。

順調にソーズを引き込む。
こうなってくると何を鳴くかが悩ましい。
47s、58sはチーだが、236sはスルーか。

あっさりドラを引き込んでテンパイ。悩むまでもなかった。
47sでイーペーコー確定形だが、これは結構高いんじゃ?
この巡目ならすんなり出る可能性があるぞ、とドキドキしていると…

上家からあっさり出た。

無情なEND。
日常が非日常になる瞬間ではないだろうか。

対面は私の河から何かを嗅ぎとったか、7sを止めて打3m。
紙一重の回避に成功していた。こういう第六感みたいなのが麻雀においては意外と大事だったりするものだ。
やるな、こうへい!
case3

東1局1本場の北家。前局は親の一人テンパイで流局している。
決していいとは言えないまとめるのが難しそうな配牌。
第一打は南から。

6mが暗刻になり、これで俄然やる気が出てきた。

さらに4mも暗刻になってテンパイ。
さて何を切ってリーチする?

8p切ってリーチとした。
9pが3枚切れということもあって、この三暗刻には受けやすいだろう。

南家が果敢に追っかけてきたが、こちらも果敢に暗カンだ!

リンシャン牌から掘り当てたのは高目という名のお宝だった。

じゅげむじゅげむごこうのすりきれ、で6000・12000になります。
うっかり6mをツモ切ると一発放銃につき、危ないところだった。
鳳凰卓でのアガリは以上の3例だが、少し物足りないのでおまけを用意した。
caseおまけ

南3局、12000点持ち3着目の親番。
チートイツのイーシャンテンだが、2着目の下家からリーチが入っている。
うっかり満貫でも打とうものなら、ラス転落してオーラスに突入という繊細な状況。
受けゴマがなく、オリ切るのも難しい牌姿だが、とりあえず安全度の高そうな2mを選ぶと…

2mに上家のポンが入って、絶妙すぎる5mツモでのテンパイ。
さて、どうしよう?

勢いリーチと行きたくなったが、慎重にダマに構えた。
8mの危険度はかなり高いが、こうなった以上はテンパイに取る。
アガリ目の薄いドラ単騎で待ちを変える可能性もそれほど高くないが、放銃するにしてもリーチ棒1本がラスに影響する点差だと考えた。
放銃が満貫に満たない場合でも、1000点出すことは対面の逆転条件を楽にするので、案外馬鹿にならないものだ。

海底にひょっこりドラがいて、1本余りの8000オール。対面の飛び終了となった。
アガれただけでも十分すぎるが、8000オールでは上家をわずかに捲れず、2着捲りまでだった。

勢いでリーチしていると、裏裏が追加され、三倍満でトップ捲りだった。
仮に海底ツモを狙ってここでリーチなら数え役満まであった。
ラス目との点差を見てリーチ棒を温存するのは天鳳的には常識的な判断だが、「上家の仕掛けで入ったテンパイ即リーチ」のシステムに従っても良好な結果が待っていた。
何より、伝説の「チートイツで数え役満」のチャンスが眠っていただけに、やや惜しい実戦譜だったかもしれない。