概要については前回記事にこと細かく書いているのでそちらを見ていただくとして、少し補足をしたい。
鳳凰卓の流局率を.162とすると、
一人当たりの平均和了率は約.210となる。
つまり、流し満貫狙いは配牌時、自身が2割強のアガリを勝ち取る自信がなく、かつヤオチュー牌がたくさんある時に有効になりやすいと言える。
自身の手が相当にバラバラの際は、1割6分の流局に逃げ込む方が局収支は高くなりやすいわけで、その際はアガリを諦めて形式テンパイを狙いに行くか、それとも流し満貫を狙いに行くかの勘案となる。
ヤオチュー牌が最後まで足りている場合は問題ないが、大抵の場合はツモに賭けるということが多く、その場合はメンツから老頭牌を拝借するといったことも多いため、通常流し満貫狙いと形式テンパイ狙いは両立しない。
このへんにバランス感覚が問われてくる。
私見としては、配牌からは明確に狙うというよりは芽を摘まない、といった程度にぼんやり狙い、中盤を過ぎたあたりから自身の手と相談していよいよ本格的に狙うというのがいいと思われる。
2牌、3牌という好ヅモによって手は見違えるので、大したことのない配牌がチャンス手に化けるということもよくあるからだ。
逆に言うと、ツモが全く効かなかったり、ヤオチュー牌のトイツ落としをしたら3枚目を持ってきてしまったなど手牌が裏目っている時が流し満貫狙いのチャンスと言える。
そういう意味では、序盤は内に寄せて手の伸びを最大限見つつ、ツモが効かなかったり裏目った時は流し満貫狙いにシフトするという感じで、「保険的に」活用するのが流し満貫においては有効だろう。
ちなみに、私の鳳凰卓の流し満貫は9例、全アガリに占める割合は0.054%ほどだった。
私の役統計においては、三色同刻(9例)と同程度の難しさで、四暗刻(7例)よりは簡単で小三元(15例)よりは難しいといった感じになっている。
これを見る限りは難易度的には相当に難しいので、過度の狙いは禁物であることがわかる。
やはりぼんやり狙うぐらいがちょうどいいだろう。
さて、いよいよ実戦例だ。
今週と次週は流し満貫狙いの実戦例をシンプルに10個ずつ。
再来週は他家の流し満貫成立や、流し満貫にまつわるエトセトラを。
豪華3週に渡ってお届けするので、流し満貫のエッセンスが少しでも伝われば幸いだ。
case1

東4局、13000点持ち3着目の親番。
配牌は7種でバラバラの類。第一打は無難に西から。

ツモが悪く、手がまとまらない。
が、ヤオチュー牌は豊富にあるので、ここから流し満貫狙いに切り替える。
この場合、今ツモってきた完全安牌の西は大事な牌なので、温存する。

ここで重要なのが、危険な老頭牌(1・9牌)から先に処理する、ということだ。
字牌より数牌の方が危険度が高く、かつ仕掛けを入れられやすい。
序盤の終わりあたりに方針を決めたら、自身の手を放棄してでも、真っ先に老頭牌の処理に勤しみたい。

ほら来た。
リーチが入る前に、危険な1p、9p、9sあたりを処理できている。
手牌との天秤にかけていると、そのへんが残ってリーチに切りきれなくなってしまう。
中途半端にやめたり、押して放銃するのが一番馬鹿馬鹿しいので、やると決めたら思い切って切り飛ばす。

むむっ、ここにきて足りなくなってきた…ぞ。
最後のツモにすべてを託すしかない。

ざんね〜〜〜ん!(みのもんた風)
約38%を引ければ4000オールという期待値マニア垂涎の状態がこれだ。
手を尽くしても残り1枚に泣くということもかなり多い印象。
あれだけバラ切りしたのに手牌はタンヤオチートイツのイーシャンテンになっているのもまた不思議。
端だけ切ってると、案外手はまとまってきて、なんだかんだイーシャンテンくらいにはなる。
case2

東1局2本場の北家。親が連荘中。
6巡目にして親がリーチと、さらに畳み掛けてきた。
赤赤あるものの、ここからは丁寧に対応するしかない。

終盤に差し掛かったところ。
ここから何を切るか?

1mを切って流し満貫に望みをつないだ。
現物の5mや4pを抜くのが普通だが、1mの安全度は高めにつき。
ほんの遊び心だったが、意に反して3連続でヤオチュー牌を引いてくる。
残りツモは後1回、ということは…

ていっ、とドラ勝負。
ロンはともかく、ポンされるのは覚悟だったが。

これが通って無事成立。

1m切りの工夫が生きた流し満貫。
case1は最後の1枚が引けなかったのに、ここでは終盤の3枚条件を楽々クリアした。
ツモ依存の要素が強い面はあるが、それだけに最終盤はスリリングだ。

ちなみに次局の様子がこれ。
流し満貫をアガったのに、まだ東1局。
天鳳では流局扱いなので、親がテンパイなら親番は続行する。
積み棒が増え、3本場に。かつ親が出したリーチ棒は供託される。
通常ならそのリーチ棒はアガった私の物になるはずなので、親はリーチ棒を取り返すチャンスが継続している。
親の点棒が減っているのに親番が続く、という奇妙な現象が起こっていることがわかるだろう。
case3

開局の親番。
ダブ東が重なって大チャンスのイーシャンテン。
ここでは1mのトイツ落としとした。

あれから一向に東が鳴けず、無駄ヅモばかり。
その上対面からのリーチが入ってしまった。
さて、何を切る?

さすがにチャンス手につき、絞っていた白を勝負した。
しかし、次巡に危険な7mを持ってくる。
さて、何を切る?

西のトイツ落としとした。
西は決して安全ではないが、粘り込むという意味も込めて。
あとは、あれが見えるでしょ、あれが。

むむっ、これで流し満貫の種がそろった。
これは意外といけそうじゃね?

しかし、上家が暴れて(加カンして)放銃に回ってしまった。裏なしで5200。
アガリ辛そうなノベタンだっただけに、チャンスだったがこればっかりはしょうがない。
ちなみにこれは特上卓だが、特上卓の方が横移動で流し満貫を阻止される可能性は高いだろう。
上家の2p加カンは、実は私のツモを一つ減らすカンでもある。このへんの兼ね合いも考慮する必要が生まれる。

浮いている6s、7mどちらも当たり。
この当たり牌を吸収してかつ加点するチャンスが生まれるというのだから、いかに流し満貫がお得な役かわかるだろう。
case4

東2局、32700点持ちトップ目の親番。
配牌にドラトイツ。これはいい部類の配牌だろう。

ドラを生かすべく丁寧に打ちまわしていると、上家から早いリーチが入る。

終盤に突入したが、ここから何を切るか?

白勝負とした。
流し満貫の積極策で、残り2枚が必要な上、9mもドラも通っていない。
やや無理スジでトップ目なら自重するというのが一般的か。

ここで持ってきたのは、望外のドラだった。
当然切るのは…

これだわさ。
流し満貫の種を補充しつつ、安全度が劇的に高まり、なおかつポンされる危険性がなくなるというトリプルスリー。
思わず口元が緩む瞬間。

oh!9mが通ったぞ。これで成立は固い。
さて、何を切る?

絶対に油断してはいけないのがここだ。
ここで9mを合わせると、下家にチーされる可能性が高い。
9mはギリギリまで引っ張って処理する。仮に海底で切ることができれば、鳴かれない。
白を重ねられることを嫌って、ここで白だったかも。

海底でさらに白を持ってきて2枚余りの成立。
ここで9mを切っても下家に鳴かれることはない。
なので、最終盤の老頭牌はできるだけ引っ張ることが肝要となる。(下家がリーチならその逆で、ケースバイケース)

手牌を開けてみると、下家はなんと69mで張っていた。つまり、最後に白を持ってこなければ9mが7700の放銃となっていたわけだ。
9mを合わせていると下家に鳴かれていたわけだが、その方がマシだった可能性さえあった。
振り返って背筋が凍った瞬間だった。何が最善となるのかわからない難しさがある。

親番につき4000オールだが、手牌はノーテン。
ということは?

なんと親が流れてしまった。
下家に親が移り、1本場積まれて、供託リーチ棒はそのまま。
リードしながら振り切ってしかも親流れ。これは野球でいうところのいわゆる振り逃げですね(笑)

ちなみに本局、下家はこの2mでオリたために、私の流し満貫成立となった。
押していれば上家から3900のアガリとなっていたはず。
しかし回ったおかげで私が7700放銃となる可能性もあったのだから、いやはやわからないものである。
case5

開局の南家。
8種だが、ツモ次第で何とかなりそう。

親のドラ切りリーチに、下家がポンで応戦。

こちらは流し満貫の種が揃った上に、放銃リスクがゼロ。
流し満貫狙いの理想というか、夢のような展開ではないだろうか。

しかしそうは問屋が卸さずとばかりに、下家が親に放銃。2000。
ドラポンテンパイならそりゃそうか。
このように、種が揃っていても、他家のアガリで蹴られることも多い。

ちなみに、下家が3mを止めて4p単騎に受けても、対面が6pをツモアガる。
他家にまっすぐ来られるとなかなか成就しないのが流し満貫の難だ。
case6

東3局、13300点持ちラス目の北家。
7種8牌でこれはバラバラと言えそう。
第一打は北から。

種がやや多いので…

1mを先処理して、字牌を温存。
字牌をツモり続けて数が減らない。

それでも終盤は足りなくなる。
ここでの1mツモは大きい。あと1枚だがツモれるか。

残り1巡というところで、親リーチが入る。
私は種切れ、最後のツモに全力を注ぐ。

やってやったぜ!

これにて2000・4000ゲット。

ちなみに、王牌を覗くと、中張牌だらけだった。
13分の3(23%)と通常より低かったが、よく引いた!
あのぐらいの配牌からもリスクなく得られるので、7種8種ぐらいからの流し満貫の保険は重要かもしれない。
case7

東4局、19700点持ちラス目の親番。
配牌は7種8牌とバラバラ。

ん?老頭牌だらけだけど流し満貫が狙えそうな…
ここは最も危険そうなマンズから処理していく。

何を切るか?

9sを合わせ打つ絶好のチャンスだが、前回2枚の9sにラグあったので都合6枚目を切ってしまうと鳴かれてしまうかもしれない。
ということで9pを切った。9sはギリギリまで引っ張るつもり。
ここで対面にリーチが入る。
ここでも9sを合わせるチャンスだったが…

やはりチーされることを嫌って発切りとした。
そして最悪なことに、下家からリーチが!

種は足りているが、最後まで残ったのが下家に絞ったはずの9s。
さて、どうするか?

当然勝負するも、これが当たりで痛恨の7700放銃となってしまった。

9s2発のラグを見て、鳴かれるかもしれない危惧が発生した。
下家はタンヤオ移行を目論んでのチーラグだった。

少なくともここか、この一個手前で9sを処理するチャンスはあった。
できるかどうかもわからない流し満貫を自分の勝手な妄想で、チーで消されると勘違いした結果だ。
下家は仕掛けたらチャンス手が潰れる可能性があるのだから、ここは自分の都合で処理するべきだった。
1・9牌の処理を誤ると、こういうリスクが生まれてしまうため、鳴かれることよりも先に処理することの方が重要だ。
何が重要かの判断を見誤った失敗例。この半荘は幸いにも3着だった。
case8

東3局、24700点持ち僅差2着目の北家。
いらん9sを残してしまったので、9sを連打していると…

ツモってきたのも9sで…

ありゃりゃ、切ってしまった。
集中力が足りなかったり、イライラしている時にやりがちな天鳳あるあるではないだろうか。

しゃあないので、落とします。
親の危険牌先処理と考えれば、まあいいか。

その後、南家のリーチを受けてベタオリ。

ん?長嶋さん、いけるか?

1mはやや勝負だったが、1枚余りで成立。

あの9s連打のミスがなかったら、ここ近辺での9s切りに確実にチーを入れられているはず。
怪我の功名で流し満貫成立。こんなこともあるんだなあと不思議な気分になった。
case9

東3局、23700点持ち3着目の親番。
8種10牌とかなりバラバラ。
これぐらいになると配牌から流し満貫を現実的に見てもよさそうだ。

東と白を温存しながら、慎重に老頭牌を先処理していく。
8s4枚見えの9sが暗刻になり、完全に道筋は見えた。

上家リーチに対して、こちらもテンパイしたが、さてどうしよう?

4p勝負?ノンノン、そんなリスクは損なリスク、なんちゃって。
こちらは後1枚ヤオチュー牌を引くだけ。

しかし、無情にも下家にツモられ300・500。
下家さん、そんなあ〜(>_<)

中ツモで流し満貫成立。
上家にもアガリは発生せず、これは惜しかった。
case10

南1局、23800点持ち3着目の南家。
ラス目が3700点と離れている。
配牌は上の三色が見え、まずまず悪い。

手牌はそれなりに整ってきたところ。
ここで対面が回線落ち。これなら普通にアガリにいってもよさそう。

下家にリーチが入って対応を余儀なくされる。
流しがいけそうになってきた。

ワンチャンスの1s連打で、安全に流し成立することが確定!よしっ。

はい、成立。

この1sをツモらなかったら、最後に9p勝負する羽目になっただろう。
それだとハネ満で一気にラス転落が見えていた。非常に怖い。
対面の回線落ちを見て下家はリーチに踏み切ったと思うが、対面も掴まず。
待ちの69pは山に3枚も眠っていた。
危険牌を押せば流し満貫が成立する、という状況では大抵の場合それが見合う押しになるため、それが逆にピンチを招いてしまうということもある。
流し満貫はリスクの低いラッキー役的な存在だが、使い方を誤ると諸刃の剣にもなりかねない、ということがわかるだろう。
次週も引き続きこんな感じで展開する。