この記事で言う1メンツというのは、456mなどの完成シュンツのことである。
フラットな局面において、手牌で完成しているメンツを丸ごと落としていくケースはそれほど多くはない。
アガリの大半は4メンツ1雀頭を基本としているためである。
それだけに、相手がメンツ落としを見せてきた際は、手牌を読む上での大きなヒントとなる。
それでは、どのような手牌でメンツ落としが見られるのだろうか?
以下で解説していきたい。
メンゼンの場合
@メンゼンならチートイツが大半














上の手牌から何を切るだろうか?
発を切ってメンツ手との天秤に取るという手もあるが、例えばトイツの中で1種でも2枚切れがあるという場合は、マンズを切ってチートイツに決めるという人が多いはずだ。
イーシャンテンなら待ち頃の牌を1枚持っておいて、即リーチできる体勢にしておくというのが経験上期待値が高い選択だろう。
真ん中付近の牌はチートイツの待ちとしては適切ではない上、相手に対する危険度も高いため、この後マンズの1メンツはすべて払っていくことになる。
このように、自然にメンツ落としをしていく手役がチートイツであり、イーシャンテンからの選択として最も多くみられる。
つまり、1メンツ落としから間をおかずにリーチが入った場合は、チートイツが読みの本線となる。
ホンイツを天秤にしていることもあるので、高い色と字牌は特に警戒すべきところとなる。
A稀に手役絡みも














上の手牌から何を切るか?
素直にテンパイに取るにはちょっと惜しい手ではないだろうか。私はこの手ならピンズのメンツ落としから考えたい。
2sチーしても純チャンにつき、打点的な見返りがあるからだ。
三色、チャンタ、純チャンなどの仕掛けが効く手役では機動性の面からも1メンツ落としを考慮されることが稀にある。
この場合は愚形が残っていることも多く、相手の点棒状況から打点狙いなのか機動力重視なのか、その意図を読む必要がある。
仕掛けが絡む場合
@トイトイ















シュンツ落としにつき、常にトイツ系手役は考慮する必要があり、仕掛けでの本命のひとつ。
ファン牌がある場合は、1メンツ落としにまで踏み込まないことが多いので、ドラはあるけど役がないとか、仕掛けやすいトイツが多い、などのケースで見られやすい。
あとは、チートイツとの天秤の際に、打点との兼ね合いで仕掛けていくことが多い。
ポンという声が入ったら、自然に警戒できる手役だろう。
Aホンイツ














ホンイツの場合は、ポン材に優位性があると判断した場合や、チートイツの可能性など、わりと早い段階の構想においてメンツ落としがみられることがある。
仕掛け時はホンイツとトイトイの天秤になっていることが少なくなく、仕掛けた色のホンイツは警戒の対象となる。
メンツ落としが見られる仕掛けについては、ホンイツとトイトイを警戒の対象としておけば、大半はカバーできる。
B超大物手














役満などの大物手でもメンツ落としは見られやすい。
さすがに河が目立っていることが多いため、これは警戒しやすいだろう。
仕掛けまで加味すると、警戒する対象は多岐に渡るため、対処は難しくなりやすいが、メンツ落としからの仕掛けは速度的に不十分であることも多く、それを念頭に置いておけばいい。
今回はメンゼンにおける1メンツ落としに絞って、それが実戦でどのように現れるか、どのように対処したらいいか、そのへんをピックアップしてみた。
河の見え方からトイツ系手役を絞ることにより、オリの手順も大きく変わってくるため、そのへんも参考になるのではないかと思う。
それではどうぞ。
case1

東3局、ラス目の西家。
孤立9sが重なったところ。
ここから何を切るか?

メンツ落としの典型となる手牌がこれだ。
メンツ手ではアガリが見込みづらく、トイトイにするメリットもあまりないため、チートイ決め打ちに優位性を見込みやすい。
中は自身で第一打に切っているものの、ノーテンから残すことのデメリットはそれほどないため、山によりいそうな牌を残すのがチートイツ狙いの基本だ。

3sをツモってきたが、何を切るか?

5m切りとした。
赤5mは魅力的だが、単純に6mの方が山にいそうという判断だ。
3sは危険度も高いため、ここでの選択は微妙なところだが、チートイツ決め打ちの場合は他家に使われていそうな中張牌は手順上、どうしても河に放出されてしまう。
アガリやすい単騎へと変えていく過程で、厭わずにメンツ落としが見せられやすい、というのがポイントだ。

フリテンの中を引き戻して上手くテンパイが入った。
さて、どうしよう?

6m切ってリーチとした。
ラス目につき、ここは躊躇わずにどちらかでリーチしたいところ。
36sは全体に危険度が高い上、チートイツに決め打つ過程で持ってきた牌につき、そのツモの流れを重視して3s待ちとした。

長引いたが、最終盤に親から出て、3200となった。
このスジが出てきたのは意外だったが、テンパイならということでワンチャンスから押したようだ。
1メンツ落としをはっきり見せたため、手役は絞られやすかったわけだが、それだけに3s待ちはやや盲点になったかもしれない。
通常チートイツなら待ち頃の牌という想定が成り立つためだ。
1メンツ落としする過程を見ることで、どのような牌姿になっているかをなんとなく頭に入れることができるだろう。
case2

南3局、3着目の親番。
ラス目の上家がはっきりとメンツ落としを見せてきた。

そして、次巡リーチと来た。
こちらの手は勝負にならないので、基本オリだろう。
上家はチートイツの可能性も十分だが、切り順で不可思議な点があるとすれば、5pよりも1枚切れの6pが引っ張られた点だろうか。
上家は打点的な面からも、赤5p引きを考慮するのが普通だからだ。

ところが、ここで事件が。下家の切った4枚目の東にロンの声でこれがなんと国士!
唐突に下家が飛んで終了してしまった。
私はタナボタの2着となったわけだが、そんなことより東を掴まなくてよかったという安堵感の方が強かった。
下家はチートイツはケアしたかもしれないが、さすがに4枚目の字牌はケアしようがない。
とんだ伏兵がいたものである。

上家の5p切りは赤との振り替えだった。
5pが先に出てきた不思議はこれで明らかに。
上家も目立たない捨て牌にしたかっただろうに、ツモの巡り合わせによってはこうなってしまうこともある。
いずれにせよチートイツであったという事実に変わりなかった、この点が重要だ。
case3

東2局、ラス目の親番。
ドラドラのチャンス手だが、ここから何を切るか?

5s切ってメンホンチートイのシャンテンとした。
どうせチートイに決めるならメンホンもつけたいので、自然な手順ではないだろうか。
さすがにマンズは分断しすぎてメンツ手が現実的ではない。
全体の危険度で見て258sのスジを先に処理することを優先した。

んで、こういう河になる。
なぜなら、仕掛けに対して極めて危険なソーズを先に処理したいからだ。
上家の2フーロにもう間に合っていないという可能性もあったが、きわどく通すことに成功した。
このように、実戦的にもメンツ落としは危険度との兼ね合いで、堂々と見せられることが少なくないとわかるだろう。
だからこそ、これが手出しであるかどうかをしっかりと見ておくことが肝要となる。

東を重ねて待望のテンパイが入る。
2m1m西と立て続けに切られてスルーが裏目かと考えていただけに、このテンパイは嬉しい。
さて、どちらで待つか?

確実に拾えそうな9pで待つことも考えたが、ここは決定打を見てメンホンに取った。
ここはかなり難しいが、メンホンに取る方が自然な着手という気がする。

下家からリーチが入るも、ありがたいことにツモアガることができた。
このゲームのトップを決定づける8000オール。
6mは山1に対し、9pは山に2枚につき難しい選択だったが、4000オールではトップは取れなかったかもしれない。
ともかく、このぐらい派手なメンツ落としが入った場合、ホンイツが絡んでいることがあるため、河に高い色には注意を払う必要がある。
case4

東2局、ラス目の南家。
親からメンツ落としとなる、赤5sが出てくる。
67s両面ターツ落としの裏目として赤5sを持ってきた可能性もあるものの、いずれにせよ大警戒の河だ。

5m手出しをはさんで、ドラ切りリーチが入った。
こちらもテンパイが入っているが、一発で持ってきたのは西。
さて、どうしよう?

ドラを抜いてヤメた。
1枚切れの字牌は待ち頃すぎてどうしても切れない。
こちらのアガリ目は薄いし、当たり牌の5mを親に切られているというのもある。
ドラを引っ張っているのはわかるが、黒5mより先に赤5sが出てきた理由が気になるところ。

対面が地獄の東で刺さって、9600。
安牌があっただけに、この東はやや軽率だったかもしれない。

上家のソーズ落としはこのイーシャンテンから。

そして、赤5s切りはテンパイからドラ待ちに振り替えた結果だった。
やはりここの赤5s切りの異様さを見逃してはいけない、ということ。

ここでの5m切りは空切りだった。
ここでの空切りは赤5sがボケるため、効果的な空切りと言える。
手順前後の疑問点があっても、手役がチートイツであるという事実、これだけは一貫して変わらないことがわかる。
枝葉末節にとらわれず、1メンツ落としからチートイツを本線に読んでいくことは正しいとわかるだろう。
case5

南1局、2着目の南家。
ラス目の対面から怪しい河のリーチが入る。
6sはツモ切りだが、次巡が7s切りにつき、両面ターツを嫌っていることは確定だ。
こちらも両面ターツ落としからピンズのホンイツに寄せているが、安全牌が1枚もない。
さて、何を切る?

2m切りとした。
これは北の暗刻落としと迷うところかもしれない。北なら3巡凌げるのに対し、2m切っても後が続かないからだ。
しかし、メンツ手ならソーズの上を外すことに違和感があり、これはチートイツ本線と読んだ。
仮に単騎待ちなら、2mで待っている可能性はかなり低そうだ。

1sをツモって、依然安牌なし。
ここで何を切るか?

3p切りとした。
チートイツ本線で読んでいく際に、警戒すべきはこういうスジになっている端牌だ。
対面が待ちとして優秀だと考えるところはどこかを考え、そこは切らないように努める。
仮にチートイツだった場合、対面は3pで待つだろうか?
ここは第二打7pの裏スジとなっている部分であり、最も警戒されるところ。こんなところでわざわざ待たないだろう。
メンツ手なら切れない3pでも、トイツ手と読めば割合切りやすい3pとなる。
同じ理由で4pでもいいが、4pは万が一のメンツ手に備えて。

2人テンパイで流局。対面はドラ単騎のチートイツだった。
オリに苦労した割には、わかりやすい待ちだった。

対面の6sツモ切りはここから。
結果的には1メンツ落としだった。
メンツ手なら悪くない58sだけに、そういう点から読みを入れていくのも有効だ。
case6

東3局、3着目の親番。
対面が露骨にメンツ落としでリーチ。

ここから何を切るか?
ここでは、親番で打点も伴っているということで、南を勝負した。
2pで回るということもあるが、2pが安全なわけではないので。

下家との2件リーチになるも、上家が放銃し、裏1の3900。
対面はメンツ落としにもかかわらず、きれいなピンフだった。

対面は三色含みになり、マンズの両面ターツ落としから…

ちょうど2m切りの時に持ってきたのが1mだったということ。
両面ターツ落としを見せるかどうかというところだが、1mの方が安全度が高いため、普通といえば普通だ。
このように、両面ターツ落としの最中に裏目を持ってきたということも当然あるため、1メンツが元々あったかどうかは確実とは言いきれない。
通常は両面ターツ落としをなるべく見せない切り順を模索するものだが、他家への危険度も考慮されるため、一概に言えなくなる。
そこで、ターツ落としかメンツ落としかを見極めるために、河や点棒状況などの背景を見る必要がある。
例えば、case5のように他の河が派手ならばよりメンツ落としの可能性は高まるし、打点の必要な人ほどメンツ落としの傾向は強くなるなど。
ターツ落としにしても、赤受けを嫌っていたり、明らかに強そうな部分を嫌っている場合はメンツ落としの可能性が高まる。
case6のような例外があることも踏まえつつ、メンツ落としを的確に見極めることで、より精度の高い攻守判断が可能になるだろう。