そのうちの一つが、配牌で3・7牌(尖張牌)が固まっているケースだ。
以下にシュンツのすべての組み合わせを挙げる。





















このうち、


そう、



つまり、




言い換えれば他家がシュンツを作りにくい場ということであり、
これによって全体的にトイツやコーツが機能しやすい場が生まれる。
トイツ場というと違和感を持つ方もいようが、
要は、「シュンツを構成しにくい場」というのがトイツ場の定義として適切ではないかと私は考えている。
「シュンツを構成しにくい場」でシュンツを作りにいってもあがりまで結びつかないことが多く、
いち早くその傾向をつかむことで、縦を重視した手組みへと意識を移すことが可能となる。
配牌を眺めてボーッと効率に寄せるのではなく、
配牌の牌形がトイツ手なのかシュンツ手なのか、
場況がトイツ場なのかシュンツ場なのか、これをいち早く見極めることで、
自分の手をあがりやすい手へと導くことができる。
これがいわゆる場況に合った捌きだ。
これはおそらく経験によって熟練度が上がってくるもので、
牌効率の本をかじったぐらいではあまり見えてこない部分だろう。
半端に理解してもメンツ手のあがりを逃すことも増えるが、
この部分を意識できるかどうかは一段上を見るために欠かせない要素となってくるだろう。
それでは、実戦例からその傾向を読み解いていただきたい。
case1

東2局1本場、同点2着目で迎えた南家。
配牌を見ると、尖張牌(3・7牌)のトイツが2組、暗刻が1組。
さらに心張牌(5牌)のトイツが1組。
牌形からトイツ場の兆候がはっきりと出ている。
これは手順で最低でもトイトイぐらいには仕上げたいところ。
なので、字牌は大事にして第一打は1s切り。

何を切るか?

私的には7sが切りたくて仕方なかったが、無難に4m切り。
ドラが8sだけに保険をかけたが、ぶっちゃけ7s切りでも問題ないと思う。

テンパイしたが、どうするか?

コーツ手の基本は即リーチ、ということでリーチ。
いかにも3pをツモれそうな雰囲気だ。

親満テンパイの親から出て、裏3pの倍満に仕上がった。
全体にコーツが目立つ、明らかなコーツ場だということがわかるだろう。
こういう場況ではシュンツができにくいので、
親はカン5sからシャンポン変化を積極的に見込むのがいい。
これがトイツ場の捌きだ。
case2

東4局、23000点持ち3着目の北家。
配牌に7mカンツ、3sトイツ。
牌形は明らかにコーツ手だ。

もう一組、尖張牌がトイツになって、はっきりとトイツ場傾向。
チートイも見つつ、7mを1枚はずす。

8p出たが、これを鳴くか?

トイツ場の兆候がはっきりしているので、これはポンするのがいい。
ドラもない単なるトイトイのみ、というところで判断するのではなく、
場況がコーツ場なので、場況に合った捌きというところで仕掛けの判断をする。
7mが暗刻でなければ8pは鳴かずにチートイツで仕上げる。
「スルースキル 暗刻がない手は基本チートイ」だ。

親がドラ切りリーチ、一発目に現物の西が出たが、さてどうしよう?

臆せずにポンする。
コーツ場におけるトイトイはあがりやすい。
場況に合った捌きをしているのであれば、まっすぐにあがりに向かうのがいい。
親がシュンツ手であるなら想像以上にゼンツでも放銃しないし、
自分のあがりも見込みやすい。

これをツモって、700・1300。
ご覧のように、全員の必要牌のみで構成されたトイトイだ。
尖張牌を固めているので他家はシュンツができにくい。
場況に合った捌きはこのように攻守に渡って強い。
case3

東4局1本場、2着目で迎えた親番。
ダブ東がトイツであるが、
これは先の2例と比較すると判断が難しいケース。
7pが重なってトイツ場疑惑が出ている。中には手をかけずに9m切り。

7m出たが、チーするか?

「スルースキル 縦の場はチーしない」だ。
ポイントは5mにポンが入っている点で、
よりトイツ場が濃厚な場況となっている。
5mがないので一見急所の7mに見えるが、
目先の進行に惑わされずに、場況で判断する。
7mをチーした瞬間に、チートイツという場況に見合った手役が失われてしまうからだ。

7pが暗刻になり、これでトイツ場からコーツ場に昇格。
7mスルーが正解となりそうな雰囲気だ。

さらにダブ東も暗刻になった。
これで一気に打点も見えるイーシャンテンとなった。

1sポンしてテンパイに取った。
ドラは3sで7mは場に2枚見えているが、コーツ場の捌きとしてはこうするところ。
ここからトイトイへ移行していく予定。

上家のツモ切りリーチに下家が放銃し、裏は乗らずの3200となった。
7pは上家の当たり、7sは下家の当たり。
例によって要牌を固めている私に放銃する未来はない。

ツモ牌を追っていくと、8mツモでトイトイに変わり、
流局間際に7sツモでの6000オールがあった。
このように、些細な兆候から7mをスルーすることによって、
より良い結果を模索していくことが可能となる。
case4

東4局、30200点持ちトップ目の親番。
一見シュンツ手だが、7のトイツが3組ある。
こういう場合は安易にトイツに手をかけない。2p切り。
シュンツ場かトイツ場かはこの後のツモや河から判断していく。

次のツモは8s重なりで縦。何を切るか?

ツモの寄り方を尊重し、ターツの方を切る。
どちらかというとトイツ場傾向と読んでいる。

4sが重なって何を切るか?

こうなればシュンツに固執する必要はない。
一応メンツ手も見ながらチートイイーシャンテンに構える。

結局、縦横混合のメンツ手でテンパイしたが、2件リーチが入っている。
さて、どうしよう?

さすがに7pを一発で勝負するほどの手ではない。
ここは8sを切って回る。このへんは基本通り。

対面が競り勝ち、上家から5200となった。
場況的にはトイツ場寄りという感じで混合場。
発が待ちになっている上家の方がシュンツ待ちの対面より圧倒的に強かったが、このへんは牌運だ。
case5

南2局2本場、トップ目の親番。
四暗刻イーシャンテンだが、何を切るか?

一応8sから切ったが、8m切りでも問題ないだろう。
イーペーコー形をぶち壊す尖張牌の暗刻はコーツ場の可能性が非常に高いので、
イーペーコーよりも三暗刻などのコーツ手を主眼に考えていくのがいい。
下手に効率を重視したりするとあがりを逃すことになる。

東が暗刻になって、即リーチ。

これをツモって16000オール。
以前に紹介した鳳凰卓初役満だ。

58mはこの時点で山に残り1枚。
コーツ場の傾向が顕著に現れた局となった。
ちなみに、case1〜case5までの5例ともすべてトップ終了だった(たまたまだが)。
「トイツ場を制する者は麻雀を制す」を体現する結果となっている。
【関連する記事】
私はトイツ手のさばきがめちゃくちゃ下手くそなんで参考にさせて頂きます。
前からちょいちょい観戦させて頂いてますが、はぐりんさんチートイ好きですよねw
「あーそれ鳴かないでチートイ行くんだー」っていうシーンをよく見る気がします。
ありがとうございます。
あ、気づいていただけました?
私はぶっちゃけ麻雀は一切鳴く必要がないとすら思っているんですが、それはチートイツという役があるからでしょうね。
チートイツは麻雀というゲームを深くしている気がします。
あと、久々に対戦ありがとうございました。
ちょっとあの捲られ方はトラウマですねw
それとこちらこそ対戦ありがとうございました。
あの半荘は役満、親跳満、満貫と大物テンパイが全部不発で切れそうだったんですが、
オーラスではぐりんさんから直撃取れてちょっとだけスッキリしましたw
また対戦があればよろしくお願いします。
法廷さんとは打ち方が真逆だな、ってちょっと思いました。
大三元もひょっとしたら私が打ってたかもですもんね。
オーラスまで粛々と条件作ってきっちりダマ満仕上げるあたり見事でしたね。
ってか5s間に合わせたのに〜w
またよろしくお願いします。
デジタル主流の現代麻雀ではアナログ的見解を声高に主張しても煙たがられる傾向にあるのが個人的には残念な気もしますが、例えば天鳳で好成績を出している人の中にも類似の思考を取り入れている人もいるのではないかと私は考えています。
そういう人と意見を交わすことでまた麻雀の楽しさや奥深さは増すのではないかなあと思います。
統計に見る「差がない部分」というのは、その状況ごとに個別具体的には確実に若干の差異があるはずで、その正解を導くために用いるのがアナログ判断であり、こういうトイツ場の理論を用いることも有効ではないかと考えています。
麻雀AIが人間を越える時というのは、こういう部分を網羅した時に初めて成立するもので、このアナログ感を網羅できないからこそ麻雀AIは人間を越えられないのではないかと私は考えています。
最高到達点にタッチすればいい天鳳では、一定の実力に到達すれば後は打数が重要ですから、それが強みとばかりにAI天鳳位の誕生は遠くないのかもしれませんね。
しかし、爆打が九段になるとは驚きました。
段位制だとAIの進化も最高到達段位で見れるのでわかりやすいですね。