スジのどちらを切るか、というのは言い換えればスライドするかどうかを考える、ということだが、
このテーマは非常に遭遇する頻度が多く、しかも状況ごとに目的とする打牌が変わってくるので、判断が意外に難しい。
少し複雑な牌理よりも、スライドで少考するケースが私はけっこうある。
例えば、相手リーチに対してのスライドは単純に安全度の比較だが、
赤受けやドラ受けに備えた基本的なスライドから、
将来の安全度を考えたスライド、下家の仕掛けに絞るスライドなど、その性質は多岐に渡る。
守備を考えて外側ばかり残したら、全く使えない赤5を持ってきてしまった。
ドラ受けを考えて内側に寄せていったら相手リーチに手詰まりになってしまった。
スライドが難しいのは、現状の攻守判断が将来の有利に結びつくとは限らない点だ。
このへんの微妙な機微をその都度考える必要がある、というところに難しさがあり、
麻雀のセンスが求められる部分であるとも言えるだろう。
このトピックに関しては、状況ごとに場合分けして記事にしていきたいと思っている。
さて、今回は比較的わかりやすいドラそばのスライドについて。
相手もできるだけ使い切りたいと考えるドラだけに、
その近辺は入念なケアが必要となってくる。
スジのどちらを切るかの考え方の基本は、
危険だから先に切る、のではなく、
相手が利する牌は切らない、の心構えだ。
中盤以降の生牌にも同様のことが言える。
つまり、将来の安全を考えるスライドというのはどちらかというと例外的なケースといえる。
それでは、実戦例から見ていこう。
case1

南3局、微差の3着目でジリジリした状況。
下家の親が仕掛けている。
テンパイが入り、7m切りのダマテンに構えた。

2mをツモって、さてどうしよう?

ドラそばの2mをケアして5mを切るとこれがロン。1500。
結果的にはどちらを切っても当たりだったわけだが、
発が暗刻である以上親は1113mという形で待っていることだってある。
はたまた対面がカン2mのイーペーコーで張っていたかもしれない。
打点的にもそうだが、放銃回避できる可能性すらあるのだから、
こういう場面では丁寧にケアすべきだろう。

5mを切っておけば、最終盤ではドラツモ時にドラをケアして4m切りとする選択肢も残せる。
次の2mツモ時にスライドが効かないというデメリットはあるものの、
それを考慮するのは序盤のみで、
中盤以降は基本的にドラそばをケアする方向で考えていけばいいだろう。
case2

開局。自風の北ポンから7700のテンパイを入れる。

7sをツモったところ。
さて、どうしよう?

上家の仕掛けにカン7s待ちをケアして4sとスライドした。
47s待ちならどちらにせよ当たるのでドラそばをケアする。
赤5sを自分で持っているので赤絡みに当たることもない。
スライドでは赤が見えているかどうかというのは判断材料として結構あるだろう。

下家からすぐに出て7700となった。
上家の待ちにはかすりもしなかったが、麻雀はこういう細かい作業の積み重ねだ。
case3

開局の南家。
ペン3mをツモってテンパイを入れたところ。

最終盤。6pをツモって手広くなったが、さてどうしよう?

「最終盤は広さより安全度」だ。
ピンズはドラ周辺だけ場に見えていない。
対面や上家がカン3p待ちになっている可能性は十分にある。
下家の仕掛けどころでもあるだろう。
そもそも7p1枚のためだけに3pを切るのはリスクに見合わない。

あれま。ひょっこりツモって1000・2000。
上家は234566pから7pチー出しの6pだった。
24566からの7pチーはそれほどないかも。
通常の手出しの方が3pの危険度は高いだろう。
case4

オーラス、対面と1300点差のラス目。
トップ目の親が仕掛けているところ、6pツモ。
さて、何を切る?

こういう場面でうっかり3pを切らないようにしたい。
ペン6p残りでのタンヤオ仕掛けは考えにくい。
ドラ含み急所のカン3pをケアしたいところ。
6p切っておけば、後々ドラをツモっても赤との選択が可能となる。

上家から先制リーチが入るも、急所のカン4sをツモってテンパイ。
ラス回避をかけた追っかけに踏み切る。

固唾を呑んで見守っていたところ、上家が掴んでくれた。5200で3着捲り。
この至福の瞬間は、天鳳打ちならわかってくれるはず。

問題の場面。
3pを切っているとなんと親にチーテンが入っていた。
そうなると急所のカン4sも親に流れて展開ががらっと変わっていた。
4sはすでに山になく、ラス回避は茨の道だったことは間違いない。
結果はたまたまだが、ドラそばをケアするといいことがあるよという例。
case5

ラス前南3局大接戦の攻防。
23900点で現状私がラスだが、トップまで1300点差という熾烈な僅差。
端牌を丁寧に切っていって、ドラドラのチャンス手になっている。
5mをツモってきたが、さてどうしよう?

678三色だからとツモ切ったところ、ドラを捌かれるカンチャンチー。
ちょっと嫌な予感がする。

次巡、7mをツモ切るとこれをペンチャンでチーされた。
これは完全にヤバい。

そして流れるように2000・3900をツモられてしまった。
この微差からの親っ被りはあまりに痛く、なすすべなくラスで終わった。

ご覧のように、下家は二度受けカン5mからの食い延ばしだった。
この微差で本当に三色という手役は必要だったのか?
下家の染めっぽい捨て牌に対し、繊細に8mを選べていれば、ほどなく6pをツモってテンパイが入っていた(即リーチ)。
その後はどうなるかわからないが、8mを選びさえすれば下家にアガられることだけはなかったはずだ。
ドラそばの急所を一牌捌かれるだけでこのようなアガリが生まれることもあるという例。
case6

東1局3本場、連荘中の親番。
234の三色が見える手牌から、1mをツモって少し悩ましい。
さて、何を切る?

ドラそばの7mをケアして4m切りとした。
巡目的に7mは下家にチーされるかもしれないし、ダマテンでロンと言われてもおかしくない。
234の三色と発のポンテンを天秤にかけられない以上、
スピードと受け(守備)を重視した。

直後に発が出て、ポンテンに。

首尾よく1000オールのツモ。
7m切っても大勢に影響はなかった。
というか、スライドが影響を与えるケースの方が圧倒的に少なく、
case5のように致命傷を負うケースというのはごくごく稀だ。
それでも、麻雀は微差を積み重ねるゲームなので、
我々にできることはどちらがいいのかを淡々と、粛々と、考え続けることだけだ。
case5のような失敗例を体験しておくことで、
似たような状況での思考に厚みが増すというのはあるだろう。
同じ轍は踏まない。
この局のスマートなアガリが奏功してか、この半荘はトップだった。
もう少し早い巡目にどちらを切るかの分岐があったような場合、下家に5mを鳴かれるリスクと2mで放銃するリスクの天秤をどうとるか?のジャッジはなかなか難しいような気がしました。
もう少し巡目が早く、58mを鳴かれる可能性がそこそこ高い場合は、2m切りとすると思います。
あとはドラが見えている場合、例えば2枚ぐらい1mが場に見えている場合は25mのどちらを切っても大差ないでしょうね。
スライドはパターンが多く、他に考えることも多いため、事前の想定が難しいというのが難易度を高めている理由の一つでしょうね。
どっちの筋を切るか?
間違った方の筋を切って鳴かれたりすると一気に流れを持っていかれて勝てる気がしないですね。
実際に鳳凰卓で体験したやつだと
http://tenhou.net/0/?log=2018022116gm-00a9-0000-99c975c3&tw=0
東2局
3456m24456p56788s
下家の親の仕掛けを見て3mか6mどちらを切るか?で
親の捨て牌は7m→字牌の手出しで78mの可能性が薄く、6mの方が鳴かれにくいので打6mが正解だと思いますが、実践では打3mと打って下家に鳴かれて、あがりを持っていかれました。これを見てこの局は3位か4位で終わるだろうなと思っていました。
こういう筋切りで間違えると後々厄介なのでこれを糧にして同じミスをしないようにしたいですね。
なるほど。
下家は4m切ってるだけに3mのケアはなかなか難しいですね。
自身の河的には69mをケアさせる3m切りリーチの方が有利に見えるので、ある程度は仕方ないんじゃないですか?
これ、ダマだったら456の三色があるので確実に3m切りなんですが、リーチだと手変わりがないので選択の余地が生まれるんですよね。
宣言牌かそうでないかで打牌は変わってくることもあって、奥が深いです。
これはいずれ記事にしようと思っています。