
八段降段した。
どれだけ適当に打ってもこれより悪い成績を出すのは難しいのではなかろうか。
今月の打荘数が少ないのは、先月末に風邪を引いてしまい、その治療に専念していたからだ。
体調不良でドツボにはまったらあっという間にポイントなど溶ける。
「不調ウイルスは治療するより予防する」の観点から自制したつもりだった。
2週間ほどでほぼ完治を見て、リフレッシュして臨んだわけだが、なぜこのようなことに?
風邪だと思っていた細菌は実は不調ウイルスだったのか。
リアルの不調連動ウイルスに同時感染していたのか。
ひとつ言えることは、不調というのはある日突然音もなく訪れ、誰にも予測することはできないということである。
しかし、九段配分でこの程度の不調でもあっという間に降段するというのは我ながら驚いた。
メンタルは充足しているのでさほどのショックはなかったが、きれいに溶けたなあという感じ。
逆に言うと、長期で十段をキープしている方などは、腕前はもちろんだとしても、ある程度の運気が持続していないと無理なのでは?と思ってしまった。
さて、私はどのようにしてこのようなひどい成績を叩き出したのだろうか。
今回は仕掛けが色々と結果に作用することが多かった。
そのへんも含めて、半荘のターニングポイントとなった局を見ていきたいと思う。
case1

不調のきっかけと言われると、なんとなく思い当たる節があるものだ。
この半荘がまさにそれ。
南3局、36100点持ちトップ目で迎えた北家。
ラス目の親に手役不明のカン2sチーが入る。
私の手は、いただきましたといわんばかりの好形イーシャンテン。

対面に仕掛けが入り、親に目立った動きはない。
上家から8pが出たが、さてこれを鳴く?

スルーした(ラグあり)。
これは仕掛ける手も十分にあるというか、仕掛ける方が普通だろう。
かわしを見るならたった今通った36pは狙い目だし、3枚目の8pはやや急所でもある。
ただ、私の持論として、トップ目だからこそ安易な仕掛けは控える、というものがある。
目先のテンパイに捉われた仕掛けによって今までどれだけの後悔を重ねてきたことか。
これぐらいの好形が入っているならば、焦らなくともアガリに寄ったツモが来るはずだ。

ほどなく、マンズの方にくっついてカン4mのテンパイに。
自然に7pを切り出す。

親が発を暗カンし、正体を現してきた。
直後に8mをツモって、さてどうしよう?

これをツモ切ると、赤ドラ含みにアウト。暗カン効果で12000。
親はホンイツも匂う河で、36s47sのケアは考えていた。
36mのスジも自然にケアできるが、この8mは自身がテンパイだけになかなか止まりづらい。
親の河的にはテンパイかどうかも微妙なところ。
発カンで姿を見せたので慎重に対処するというのは確かにありそうだが、ケアする手順も難しい。

上家の8pを食っていると、この時点で5mが当たりだった。
この段階では5800止まりだったが。

親の2sチーはこの形から。
かなり整った配牌からの仕掛けで、河の強さがアガリを後押しした。

安易な仕掛けをせずに、5mを使い切ったことは自分の中では収穫だったが、
さらなる8mツモという難題が待っていた。
私はこの放銃が間違いだとは思わないが、
8pチーしての5m放銃なら5800で済んだということもあり、
そちらが正解という考え方もあるだろう。
case2

case1の次局。
トップ目から親満放銃で3着転落。見事に平たい点棒状況となった。
マンズのホンイツなども視野に、7pを切ると上家がポン。
仕掛けが入ったのを見てか、親がツモ切りリーチを敢行してきた。

こちらもイーシャンテンとなったところ、発を持ってきた。
さて、どうしよう?

ツモ切ると、これがアウト。チートイドラドラで12000。
親はツモ切りリーチなので、通常発待ちなら即リーチしている可能性が高い。
仕掛けが入っての足止めリーチ、赤1クラスの愚形の線が濃いと思っていた。
ダマでも高打点だが、仕掛けが入ったのでリーチで被せる、というパターンだった。
現物は1m1枚のみなので、攻め返しも視野にイーシャンテンをキープした。
上家の仕掛けで入ったテンパイなので、通常私は無理をする必要はないのだが、安全牌に事欠いた。
私はツモ切りリーチの待ち読みはまずまず得意な方なのだが、こういうこともある。
ともかく、ラス目の親に2局連続親満放銃したらそりゃラスにもなるわな。
南3トップ目からまさかのラス転落、凋落のきっかけとしては十分すぎるだろう。
case3

東4局、29900点持ち2着目の北家。
親がダブ東をポンしていて、たった今対面が3mをチーして手出し3pとしたところ。

親に9mをケアしていると、それにくっついた。
一応テンパイだが、さてどうしよう?

テンパイに取ると、対面がロン。345の三色で7700。
7pが出なきゃ、4pなど切らないわけだが、決定的な違和感がひとつある。
なぜ対面は6pを切っているのか?
この6p手出しがやや近いので、4pは通ると思った。

答えはこう。
牌効率で6pを切った直後に、5pを引いたというわけだ。
3pを引っ張っているので3pは関連牌だが、23pと切っているので4pシャンポンや単騎は考えにくい。
仮に対面がタンヤオではなく、ヤオチュー牌が絡んだ345の三色の場合は、3pなど引っ張らずにさっさと形を決めているはずなので、3pを引っ張っている以上、対面はタンヤオが濃厚。
しかし、それだと6p切りに矛盾が残るということで、読み間違えた。
ただ、最終手出しの近牌は危険度が高いということを示す好例でもある。
この半荘はここから崩れラスに。
case4

東4局、3着目の親番。
ダブ東と中が鳴け、絶好の7700テンパイが入る。
この巡目ならいただきか。

出ず、ツモれないまま、ラス目の下家からリーチが入る。
宣言牌の3sを対面がチー。

対面の手出しを注視していたところ、発が続けて出てきた。
上家が合わせた発にラグがあったことから、暗刻落としだということがわかった。
つまり、対面は手を組んでいない。一発消しの可能性が高い。これがどう出るか。

この仕掛けにより、なんと4pが食い流れ、下家の1300・2600ツモ。
2600オールツモだったはずが、親っかぶりでラス落ち。
そのまま浮上の目なく、私はラスで終わった。

宣言牌のソバを使い切りつつ、一発放銃を避けるためのチー。
私の最終手出しが7sで、ソバの8s9sはリーチの現物だが切らない構え。
なるほど理に適っている一発消しではある。
が、これによって何が起こったかというと私がラスなのはともかく、最終的にこれをアガった下家がトップ終了となった。
case5

東3局、19300点持ち3着目の西家。
上家のチーにより、絶好の7sが入ってテンパイ。
ダマでも7pは拾えそうだが、さてどうしよう?

これはリーチでしょう。
7pのみならず、4pも山にいそう。
何より、上家の河が私ピンズ要りません、と言っているので。

しかし、無念にも流局。一人テンパイ。

リーチ時47pは何と山7だった。
河の印象と山にいる枚数が概ね一致している。
47pは山に深く、終盤に辿りつけそうだったが、上家の西ポンで対面に高目が流れてしまった。
これだけの大チャンスはそうそうないと思うが、こういうのを逃してしまうとジリ貧になりやすく、例に漏れずラスだった。
case6

南3局、24700点持ち僅差2着目の親番。
終盤、上家から都合4枚目の47pが切られる。
さて、これを鳴くか?

これは反射的にチーした。
続けて切られた47pはさすがに急所だろう。
一人ノーテンでラスになる点差だけに、テンパイは目指したい。

次巡、3sをツモって、何を切るか?

ツモ切ると、下家の8000に刺さる。
局面の急所は47sだと思い、全員に危険な6mはテンパイで勝負するつもりだった。

下家はブクブクに構えずに、スリムにしてのテンパイ。
それゆえに3sがやや盲点になった。

それにしても、一つの軽いチーによって、上家の8000放銃を食い取っている。
安易な仕掛けの怖さがこういうところに現れている。
本局は決して攻める手ではなかったはずなのに、終盤の好ツモで方針がブレだして、ちぐはぐな感じになってしまった。
case7

南1局、17200点持ち3着目の北家。
7mを引き入れ、感触の良いテンパイ。
当然の即リーチだ。

宣言牌6pに親の一発消しが入る。
さて、これがどう出るか。

と思っていると、間髪入れずにラス目上家の追っかけが入る。
こ、これは…

一発で掴んだ8sが当たりで8000。
一発消されてラス目に追っかけが入った時点でこれは勝てる気がしない。

親の仕掛けはリーチがなくても鳴くでしょうという感じ。
この仕掛けによって上家にはこれしかないという赤5sがインした。
ちなみに、親が鳴いていなければ2巡後に私が8pをツモって裏3のハネ満。
たらればを言っていたらキリがないが、それにしても落差がでかすぎる。
case8

西1局、26300点持ち2着目の西家。
3900で終了なので、この手で決めたい。
3着目の親が手役不明のカン2sをチーしたところ。

1mをツモってどうするか?

ツモ切ると、親の三色ドラドラに刺さって5800。
こんなもん止まらん!当たってもいいからせめて2900にしてほしかった。
親はフリテンリスクの片アガリチーテンだが、カン2sなら取りやすかったか。
トップ狙いから一転、僅差のラス落ちとなり、そのままラスだった。

親が鳴いていないと、この1mが上家に入ってテンパイ。
次ツモ私の6pはおそらく止まらないだろう。
上家に3900放銃でも私のラス終了は変わらない。
つまり、バッドエンド「シナリオ・ラス」が選ばれていたということだ。
case9

南2局、3着目の北家。
僅差の2着目対面から先制リーチが入ったところ。

7pの暗カンが入り、終盤に突入したところ、上家から6sが出る。
さて、これを鳴くか?

チーテンに取った。
上家の1sが強く警戒していたが、やや迷っての現物6sにつき、このタイミングで2sは切れる。
このチー自体に逡巡はなかったが、カンにより海底が親になったのに、わざわざ南家のツモを増やして海底を回す仕掛けだ。
あんまりいいことは起こらなそう、という一抹の不安を抱きながらのチー。

直後にツモられ、2000・4000。
やはりというか嫌な予感は当たるものだ。
私の仕掛けで親にテンパイを入れさせてもいた。
僅差につきテンパイ料は大きく、急所の6sにつきチーテンに取る方が普通だとは思うが、
損得としてはどうなのか、感覚的なものも含めて自分の中でシステム化する必要がある。

カン6sを仕掛けて、仮に対面のツモが3pではなかったとしたら。
面白いもので、上家に3mが入ってテンパイし、上家が一発で5sを引きアガる。
よく見ると、その前に親のツモアガリが発生している。
一つの仕掛けによって、なかったはずのアガリが連鎖的に生まれる。
覚悟のない仕掛けがこういう結果を誘発することのなんと多いことか。
このへんに仕掛けの難しさがある。この半荘はラスで終わった。
case10

成績が悪いながらも、ラスに甘んじるばかりではなく、劇的なラス回避をしている半荘も実はそこそこある。
そういったケースも少し紹介したいと思う。
南3局、11400点持ちラス目の西家。
赤赤ドラ1の満貫テンパイ即リーチを入れたところ。

流局まであとわずかというところ、下家から唐突に2sが出てきた。8000。
下家は九段で2着目、こんなぬるい牌が出てくるのは明らかにおかしい。
役満テンパイでもオリる状況である気がする。

牌譜を確認すると、下家は安全牌の南を持っていた。
これは、南と切り間違えた?
いや、よく見てほしい。下家は4pがカンツで現状完全安牌が1枚しかない。
これはつまり、自身の海底放銃リスクをなくすために4pをカンしようとして、手元が狂い、間違えて2sをツモ切った可能性が高いとみる。
そして親は五面張(笑)
この直撃により、私はギリギリ3着浮上、オーラスは三者三つ巴の大接戦となったが、親がツモアガって私は3着で終えた。
納得いかないのはラスで終わった対面だろうが、鳳凰卓でもこういう不思議なことは稀に起こる、ということだ。
case11

オーラス親番、5200点持ちダンラス目。
イーシャンテンだが、何を切るか?

この巡目でこの手なら、とことんまで伸ばさないとラス回避は夢のまた夢。
わずかに678三色の可能性も見て、カン2mターツを払った。

ズバリのカン8mGET!
これでグッとアガリに近づいた。

イマイチの1pツモでテンパイしたが、どうするか?

即リーチとした。
1pの出方から、2pは悪くない。このへんで妥協した。

これがなんと一発ツモ、お祈り裏ドラが1枚乗って、3900オールに化けた。
シャンテン数にこだわっていたらこのアガリはなく、オリジナリティーのある手順なだけに会心だ。
これをアガっても依然ラスのままだったが、連荘を重ねて一時2着まで浮上、最終的には3着で終了した。
このように、不調時でも劇的なラス回避は意外と多い。
にもかかわらず、この成績である。
今の気持ちを一言でいうと…
僕は嫌だ!(欅坂風)
case2は6400とはかなり違って9600ダマはよく選択されるので、東の出方でやはり發の警戒をすべきではないでしょうか。
case3は河に7mを並べている分あがれるとは思えないし、まだ東場なので、気持ち悪い河に対して読みどうこうを入れるより安全策でとりあえず7pを打って形式聴牌狙いがベストだった気がします。
case4の対面の一発消しにそこまで価値があると思えません。もちろんはぐりんさんに怖いですが、89sを打つ気がないのなら下手にツモを増やさずに發を並べる方がよさそうに思えます。
case9のチーでは、發をポンして5mを打つのかが焦点になると思います。その覚悟がない形テン狙いはいわゆる麻雀の本道からずれた小手先のテクニックであって、1、2巡後ならまだしも感覚的に少し早いタイミングで気持ちの悪さが残ります。
不調時に一番重くのしかかるのは、case4の対面の動きのような自分ではどうしようもない他家の動きで+から−へずれるケースであって、ずるずる続けてしまいがちになる
のが怖いところです。
逆に自分の動きで変わる場合は納得ができる分まだ精神的ダメージが少なく、スパッと切り上げることもできそうです。
case2は、1mで1巡凌いだとしても、その後結局発を切る可能性が高いような気がします。ツモ切りリーチのタイミング的に経験上かなり当たりにくい発という認識でした。
case9は、鳳凰卓の打ち手なら大多数がチーテンに取りそうな感じです。結果についてどう思うかは人それぞれでしょうね。
それ以外については、各々の考え方があってしかるべきだと思います。
他人の動きで結果が変わることも麻雀なら良くありますよね。おっしゃるように、このへんをどう割り切るかというのもメンタル的に重要だと思います。
case4の対面さんは残りツモ回数的に、2人攻めに対して手詰まりにならないんでしょうか?。私ならツモって安全牌の抽選を受けてしまいそうです。
case7の下家の牌姿はリーチがなくても鳴くものなんでしょうか?。初歩的かもしれませんが解説お願いします。
case9は下家の親の2m切りが強そうにみえますがどうなんでしょうか?。僅差ではありますが、まだ南2なので平場判断で怪我をしない打ち方が良いような気もしました。
下り最速でぴったりわざ降段みたいな感じになったので、下手に粘るより良かったかもしれないと思ってます。
case4の対面さんは、他の局でも仕掛けての字牌暗刻落としがあったので、急所を仕掛けておいてあわよくば安全に形式テンパイを取りたいという考えだと思います。
case4の局面では手を壊してますから、一発消しの意味合いが強いでしょうね。
case7は、4mのくっつきで5800テンパイですから、鳴きたい6pではないでしょうか。特に6pが合わせ打たれた局面ならなおさら仕掛けたくなります。もちろん、トップ目なので重く行ってもいいと思います。
case9は、親の2mが1枚だけなら警戒ですけど、トイツ落としなので警戒はやや緩みます。さらに、その後安全な9sが出てきたので、この時点では大丈夫だと思いました。あとは、上家の6sもそうですけど、9s手出しに少し間があったので、そういう部分でも判断しています。
なるほど、そうですか。
これでも控えめにしてる方なんですけどね。
文章にコクを持たせようと思ったらオカルトは適してるんですよね。デジタルだと淡白で無機質なので。
感覚的なものをどう表現するかということなので、デジタルとオカルトは紙一重だと思っています。
それはすごく理解できます。麻雀放浪記とか天牌とか、面白いですもんね。