というわけで、今回はダブリーにおけるびっくり手役について特集してみた。
一昔前は、配牌でテンパイしていたらどんなに待ちが悪くてもリーチをかけるべきという風潮があった。
確かに、愚形待ちでも40符2ハン以上が確定するので、期待値的には最善の選択となりやすい。
ところが、最近の鳳凰卓の傾向として、以前よりもダブリーの愚形頻度が下がったという実感がある。
ベタオリ、回し打ち、攻め返しといった技術が全体的に向上した結果、ダブリーでも愚形待ちの出アガリはあまり期待できないという認識が広まったためだと思われる。
愚形でも17〜18巡あればツモアガリ率はそれなりに高い数値になるため、ダブリーが良くないということはありえないが、攻め返された時のリスクも高まるため、なるべく待ちを広くして攻め返しにも備えたいという意識がそこにはある。
鳳凰卓クラスのレベルになると、誰かしら丁寧に攻め返しの手順を踏んで、追っかけが入るということも非常に多いので、そういう経験の蓄積が愚形待ちのダブリーをためらわせる要因になるのだろう。
仮に十分な打点のあるダブリーであっても、愚形待ちなら好形へと組み替える十分な猶予がある。
それが得になるかどうかは手牌の形や点棒状況にもよるが、打ち手は以前より柔軟な視野で見ているということを踏まえると、最近のダブリーはあまり舐められないと考えた方が無難だろう。
ダブリーの好形率についてはデータ的な証明があるわけではないが、以前と比較して多少なりとも上がっているのではないかと私自身は感じている。
さて、ダブリーのびっくり手役。
ダマ十分の打点であっても、ダブリーなら勢いでかけてくることも多く、上記の傾向も踏まえると、放銃が致命傷になる割合は増えていると考えられる。
そういう意味でも、ダブリー並びに早い巡目のリーチは警戒度をそれなりに高く見積もる必要があるだろう。
それでは、実戦例から見ていこう。
case1

東3局、ラス目の南家。
トップ目の下家がおもむろにダブリーと来た。
第一打に北を消費してしまったことに、悔恨の念を禁じえない。

ギリギリ粘ってみるものの、ソーズが切れない。
安牌は6pだけだが、7pが通っているわけではないので、ここで白のトイツ落としとした。
仮に単騎待ちだとしたら、白よりも北を選ぶはず。

親が仕掛けて敢然と押し返し、4枚目のドラで11600をダブリー者から討ち取る。
これがあるから、安易なダブリーがためらわれるわけだ。
しかし、この放銃はたまったもんじゃないだろう。

下家はなんと、純チャンイーペーコーだった。
出アガリでもハネ満からという恐ろしい手。
ダブリーの純チャンなんて聞いたことがない。
が、懸念は待ちが悪いことで、1枚使いの8pでは一抹の不安もよぎる。
下家がダマでもアガれていない可能性は高いが、放銃まではあったかどうかは微妙。
ともかく、ダブリーならば打点よりも待ちの良さが重要ということだろう。
case2

南3局1本場、私がダントツの親番。
ラス争いの下家が唐突にダブリーと来た。
私の立場としてはオリていればいいから、楽だ。

赤5mを切っても後が続かないので、ここは勢いで押し返す。
赤赤でこの巡目だが、このへんの判断は頭を悩ませるところ。

ほどなく、ラス目で後のない上家が、2sで放銃。
これは何やら高そうだが…?

なんと123の三色しかもドラドラつきで12000。
さすがのzeRoさんもぶっ飛んで終了となってしまった。
私にとっては良い展開だが、やるせないのはハネ満でぴったり捲られた対面だろう。何も悪いことしてないのに、と。
ちなみに、先ほどの選択で2巡凌げる2sを選ぶということも十分に考えられただけに、わりと危なかった。
ハネ直ともなると、最終的にどうなるかわからないため、ホッと胸をなでおろすこととなった。
case3

南1局、ラス目北家の私。
トップ目の親から突然のダブリーが入る。
わりとまとまっている配牌だが、さすがに親に対しては攻め返しづらい。

4巡目にあっさりとツモ。

チャンタイーペーコーにドラが絡んでの6000オール。
ええっ?配牌だけじゃん…って思うよね。こんなに苦労のない6000オールはうらやましいの一言。
私はそのまま浮上できずにラスで終わった。
case4

オーラス、30800点持ちトップ目の北家。
下家とは700点差の僅差だが、3着目の対面からいきなりのダブリーが入る。
こちらの手もかなりいいので攻め返したいが、放銃すると3着転落が濃厚なだけに、ここは慎重さが求められるところ。

というわけで、全力では行かずにドラ切りで回る。

2着目の親から追っかけが入った直後に、ラス目の上家から3件目が入る。
おっと、これはラス目のアガリに期待するしかない。

も、ラス目が掴んでダブリーのアガリ。
リーチ棒付きだし、さすがにこれは捲られた。

これが倍満で仰け反る。
これ、ダマでも余裕でトップ捲り。
対面はなぜリーチしたんだろう?
16000放銃だと私も下家も急転直下のラス転落で喜ぶのはラス目。
これは追っかけた親が肝を冷やしたはず。
上位が僅差だけに、リーチで抑え込もうとしたのだろうか。

ちなみに対面がダマなら、私の6pはいつ出ていてもおかしくなかった。
結果的には1順位助けられた可能性があるということで、良しとしよう。
しかし、こんなきれいな確定三色が配牌で入ることもあるんだな。
case5

東4局、微差ラス目の西家。
親からリーチの声は1巡目。
配牌はまあまあ良いのに…

終盤の入り口あたりで親がツモ。
私は途中で手詰まって、1sトイツ落としと4mトイツ落としで凌いでいる。
ダブルワンチャンスの8pは下手すると切っちゃうような場況。

またもやきれいな三色で、しかも赤赤つき。
ダマでも高目18000あるのでダマも全然ありだが、高目が外側の4枚待ちだから、私もリーチと行っちゃいそう。
こういうのが空振ってくれれば対面は俄然苦しくなるんだけどなあ。
決まってしまうとこちらが苦しく、結局私のラス終了となった。
case6

南3局1本場、私が抜けたトップの西家。
も、親の第一打が横に曲がる。
やっかいなこってす。

わずか3巡目にツモの声。
はいはい、親満から親満から。

えっ?(゚Д゚)!? ていう8000オール。
何が起こったのかを理解するのに少し時間が必要。
きょとんとしているうちに点棒だけが失われている感じか。

絵面がきれいすぎる上に、あまりダブリーである必要性を感じない。
ここまでくると脱帽というか、むしろ賞賛したくなるレベルかもしれない。
これによりダントツから8000点のビハインドとなったが、執念でトップを捲り返すことに成功した。
配牌だけでは決して勝負は決まらない、という私の意地を垣間見せることができた。