2015年04月26日

スルースキル 頭のない手は鳴かない

前回までスルーの前提について述べてきた。
それでは、実戦例から具体的に見ていこう。


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東2局、北家の自分。前局リーチ棒つき7700点を放銃している。
打点的には悪くない手をもらって、たった今下家から中が出たところ。

さて、どうしよう?





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これは鳴き無しでスルーした。

この形から鳴いたところで、何を切るかに選択があって難しい。
鳴いてもあがりに近づいているかと言ったらそれほどでもなく、
中をスルーしてどこかのターツが頭につぶれてから2鳴きをしても遅くはないという判断だ。


スルーした結果、ピンズに両面ができ、形が整ってきた。


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あっという間にメンツが完成してテンパイ。

カン7sはドラ表示牌で少し苦しそうだが、どうしよう?





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スルーして入ったテンパイ即リーチ。
ここはラス目だし、仕掛けが2者いるので当然のリーチだ。


自分の手は仕掛けるかどうかの選択を経た上でのメンゼン先制テンパイだ。
これは期待値的にもスルーの判断が正解であったことを示唆している。
他家に仕掛けがいる場合は、なおさらそれを咎めるリーチにいきやすい。


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7sが後スジになり、安牌に窮した対面から討ち取る。
裏が1枚で8000。


この半荘の結果から言うと、俺がトップ、オリ打ちをした対面がラスまで転げ落ちた。
メンゼンのメリットと仕掛けのデメリットが如実に表れたこの局の結果が、半荘の行方を大きく左右したことは間違いない。

何気なく鳴いていって咎められた場合の代償というのは、想像以上に大きい。

この辺に鳴きの怖さが潜んでいる。


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別の半荘。
東2局、西家、27700点持ちトップ目。

上家から東が出たが、どうしよう?





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これもスルーした。

この形からポンしても、ターツ選択に迷いが残るし、
頭がない形から鳴いていっても両面ターツが積極的に仕掛けられない。
頭になりやすい複合形があるわけでもなく、
最終的に単騎待ちまで見えるのでは、速さという仕掛けのメリットを十分に享受できない。

この場合、愚形のいずれかが頭になっていたら間違いなくポンしている。


仕掛けの場合、雀頭があるかどうかというのは安定感だ。

頭がなければどこを仕掛けるにしても頭のできやすさや、最終単騎を想定しなければならない。
仕掛ければ仕掛けるほど、頭につぶれる牌種が減り、重なりにくくなる。

両面ターツを仕掛けるのにも神経を使うということは、
鳴きの最大の長所であるスピードを生かしきれない。

つまり、この手のように雀頭がなく、複合しない単純ターツばかりの手なら、
鳴かずに受け入れを広くし、どこかが頭につぶれるなりメンツが完成したりするのを待っても、
スピード的に鳴いた場合と遜色ない可能性がある。


スピードで遜色がないならとりあえずスルーして、
メンゼンの可能性も見ることで、打点上昇の期待もアップする。
これが「頭のない手は鳴かない」のロジックだ。


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中盤の出口で、両面のテンパイとなった。

ノミ手、しかも待ちの6sはポンされているが、どうしよう?





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スルーして入ったテンパイ即リーチ。

ここでは、ドラの北が見えているのも大きいが、
仕掛けが2人いるので、リーチで叩き返される心配が少ない。
こういう場合、上から目線で仕掛けを咎めにいっていい


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2巡後にツモって、まさかの裏裏。

これがメンゼンの最大のメリットであることは言うまでもないが、
仕掛けとの選択を経て得られた結果であること、これが大きい。


どうでもいい手を化かすのも一つの腕であり、
こういうあがりを拾えれば完全にメンゼン派のペースだ。

これはチップ麻雀にも有効な戦略であると言える。


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別の半荘。
東4局、南家、34000点持ちトップ目。

ドラ暗刻のチャンス手をもらっている。
下家から東が出たが、さてどうしよう?





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これは、鳴き無しでスルーした。

場況から3pはかなりいいが、1pは固めて持たれているかもと思っている。
東を鳴いたところでピンズが頭につぶれないので、
結局ドラを手放す可能性が高いと踏んでいる。

シャンテン数の変わらない仕掛けでこの手を3900にしてしまうのでは東ポンのメリットがない。
それなら終盤だろうがリーチを念頭にメンゼンでいってもいいと考えての鳴き無しだ。


スルーしたところ、キラキラ輝く赤5mゲット。
これはスルーの判断が正しかったご褒美ツモだ。
これで東を2鳴きする体勢が完全に整った。


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対面から少し遅れて東が出てきて、これをありがたくポン。

構想通り、絶好の3p待ちができた。


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テンパイの入っていた下家から召し取り、8000。

非常に感触のあるあがりだったが、
この局の結果を生んだのは、何といっても鳴き無しだ。

生牌の東にラグがかかっていたら、
やはり1枚抱えていた対面が確実に東を合わせるからだ。


そうなると、慌てて鳴いても同巡2鳴きでノーテンが丸わかりとなり、
微妙な形のまま、あがりまで結びついたかどうかはわからない。


このように、鳴き無しを上手く使うことは天鳳であがり率を高める有効な手段だ。

中盤だろうが終盤だろうが、鳴き無しのメリハリをつけることでぐっと手牌は読まれにくくなる。

例えば、上家のリーチ宣言牌に対応できなくなるなどのデメリットは確かにあるが、
それ以上のメリットがあると俺自身は考えている。


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別の半荘。
東3局、西家、32500点持ち2着目。

赤とドラが組み込まれたチャンス手をもらっている。
下家から発が出たが、さてどうしよう?





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これは鳴き無しでスルーした。

58sの亜両面形が雀頭候補としてはあるが、
ドラまたぎの急所で明確ではなく、仕掛けても不安定感が拭えない。

これは仕掛けずに、ツモでソーズの伸びを見たい。


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ズバッと3sが埋まった。
スルーして、好牌引いたら攻め意識、だ。

ここでは一通の伸びと即リーチを見て、8sを切った。


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ほどなくして2枚目の発が下家から出た。

さて、どうしよう?





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これも鳴き無しでスルーした。

これは、14sのノベタンが現実的な雀頭候補としてあるので、
鳴いた方が実戦的だ。

鳴き無しにするほどではないので、実戦でも少し迷いながらだったが、
ソーズの一通の変化もあるし、発ポンは形を決めすぎるきらいがある。

そして何より3s引きで攻めを強く意識している。
鳴かなくても同じイーシャンテンだし、ツモの感触に従ってリーチ前提でも問題なかろうと考えた。


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これが上手くはまって、最高のペン7pツモ。

文句なく、即リーチに踏み切った。


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追っかけをくらって、なかなかの危険牌が続いたが、首尾よくツモ。

そうだろうそうだろう、という感触で2000・3900をあがりきった。



このように、2鳴きが当たり前のようなケースでも、メンゼンで十分な結果が出ることもそれなりにあり
スルーがはまれば、流れのまま一気にあがりまで結びつくことが多い。


ひとつ鳴いてしまえば、スピードと引き換えに打点の低下と失敗時のリスクを背負う。
一方でスルーは、鳴かないことでスピード自体低下しないこともままあり、
メンゼンの大きなメリットを残したまま戦える。


おそらく現代麻雀は、フーロのメリットが過剰に見積もられている
何をスルーするかを的確に見極めることができれば、
フーロ率が劇的に低下してもあがり率はほとんど低下しないはずだ


麻雀必勝の鍵はこのへんを紐解くことで見えてくると、現在の俺は考えている。


長くなってしまったので、続きは次回に。



ラベル:天鳳 不鳴
posted by はぐりん@ at 17:28 | Comment(0) | スルースキル | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年04月19日

鳴きのデメリットとスルーの極意

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これが現在の俺の天鳳の成績である(特上東南戦赤あり8500戦ジャスト)。

放銃率097に俺の守備的な雀風が表れているが、
フーロ率269に注目してほしい。
これは全体的に見てもかなり低い数値なのではないだろうか?

打ち方は、必ずしも一定というわけではなく、
守備的なのを基本ベースにして、
牌効率に積極的だった時期もあれば、
仕掛けに積極的だった時期もある。

様々な打ち方の変遷を辿ってトータルでこのフーロ率ということは、
どちらかというと俺は元々鳴きの少ないタイプの雀風なのだろう。

今現在の俺は、
フーロ率の高さは必ずしも成績に直結しないと考えている。

ネット麻雀はチップがない分鳴きの有効性はフリーよりも高まるが、
天鳳においてフーロ率が低いまま好結果を出すことは十分可能であると考えている。

また、フリー雀荘の半荘戦や、競技麻雀のタイトル戦では、
フーロ率は高すぎるとむしろ勝てなくなる可能性が高いと考えている。


麻雀と名のつくすべての土俵で、
できるだけ打ち方を変えずに安定した成績を残すこと、これが今の俺の目標である。
そのためには、フーロ率をどの程度の水準に安定化させるか、というのが非常に大きなウエイトを占めてくる。


★鳴きのデメリット

鳴きのメリットと言えば、何といってもスピードに尽きる。
その他様々な鳴きのメリットについては他に譲るとして、
今回は鳴きのデメリットについて考察していく。
具体的には以下のとおりである。


@自分の手の内を晒す

手牌を晒すということは、自分の作戦を相手に晒すということである。
打点、手役、待ちが読まれやすくなり、
対応されると出あがり率は激減する。


A手狭になる

晒した牌は二度と戻すことができない。
自分の手を短くすることは、選択できる牌の種類が減るということ。
必然的に相手の攻撃に対して受ける牌も減る。
つまり、守備力が低下する。


B打点が下がる

鳴いた瞬間、メンゼンを放棄し、リーチする権利と裏ドラを見る権利をなくす。
これによって、打点上昇幅がかなり限定され、
平均あがり点が下がる。


C他家のツモを増やす

一局単位で見た場合、鳴きによって他家のツモは確実に増える。
あがりで早期に決着がついた場合は、このデメリットは露呈しないが、
長引いて終盤までもつれるとこのデメリットが顕在化する。

仕掛けの待ちがある程度読まれている終盤では、
勝負手の入った他家に叩き返されると、直接対決の様相になる。
これがリーチである場合は、打点的にも待ち的にもすでに仕掛け者不利になっているケースの方が多い。

終盤までもつれるとメンゼンが圧倒的有利であるのはこのためだ。


D紛れを起こす

誤解を恐れずに言えば、鳴きというのは流れを変える行為である。
ひとつの鳴きによって、局面自体ががらりと変わり、
好調者のツモ筋がずれたり、本来あがりのなかった者にあがりが生まれたりする。

テレビ対局などを見ても、役満が出たり、劇的な大逆転が生まれたりする実例には、
必ず何か鳴きが絡んでいるケースが多い。
これはおそらくデータ的にも実証できるのではないだろうか。

基本的にはくだらない鳴きで紛れを起こしても長い目で見れば本人に不利に働くが、
第三者視点から、わざと紛れを起こすような戦略も確かに存在する。


★デメリットは鳴いた瞬間に発生する

以上が鳴きによるデメリットの主だが、
これらのデメリットは鳴いた瞬間に無条件で発生する

つまり、ひとつ鳴くことが有効となるためには、
そのデメリットを補えるほどのメリットがなくてはならないと考えるべきである。

具体的には、鳴きのメリットが最も生きるのは、
相手の攻撃が顕在化する前に、自分があがってしまうこと
である。


★鳴きの絶対法則

ここから確実に言えることは、
微妙な鳴きというのは、デメリットを補えるだけのメリットがないケースが多く、
長い目で見たら損をする可能性が高いということである。

特に、くだらない鳴き、必然性のない鳴きは自分以外の他家に必ず利する

これは理論的支柱が曖昧で、科学的麻雀誌には載っていないが、
数少ない麻雀の絶対法則だと俺は考えている。

くだらない鳴き、必然性のない鳴きとはどういう鳴きなのか?
例えば、自分の手牌が進まない一発消しなどは基本的にくだらない鳴きの類であると俺は考えている。
これについては後の日記で個別具体的に検討していく。


★あがりとはピントを合わせる行為

麻雀であがることは、ピントを合わせる行為に似ている。
ピンボケしたままシャッターを切って行っても(仕掛けていっても)、
いい作品はできない(フィニッシュにはつながらない)。

全体のバランスを見ながら、シャッターを切っていくこと。
急所が最後に残っても、それはもつれやすくなるだけで、
仕掛けのメリットを十分に享受できるとは言いがたい。

仕掛けにおいて重要なのは、急所がどこかを的確に見極め、
その急所から捌いていくことであり、これがピントを合わせるということである。

逆に言うと、急所でない部分は鳴かなくても大勢に影響はない。
自分のあがり率がたいして高まらず、鳴きによりデメリットが大きくなると考えられる場合は、
スルーしても構わない、むしろスルーした方が得なのだ

これがスルーをする理由である。


★スルースキルとは

麻雀には状況に応じて様々な戦略があるように、
スルーのタイミングにも明確なシステムが存在する。

スルーした方が得、あるいはスルーしても悪くなさそうという状況には、
確かな理由が存在しており、
それを体系化したのが「スルースキル」である。

今後のブログではそれを個別具体的に検討していく。


★敵を知り己を知れば百戦危うからず

鳴くという行為は隙である。
相手が鳴いたらそれを常に咎める意識を持つこと、
そして自分が鳴くときは隙のない構えであることが、基本であり理想である。

相手の仕掛けというのは、敵を知ること。
自分の仕掛けというのは、己を晒すこと、という前提を弁えておくべきだ。

個人的見解としては、
何をスルーすればいいのかを的確に見極めることができれば麻雀は必勝に近くなる

これが百戦危うからずということである。


★スルースキルの心得

スルースキルを使用するにあたって、以下に心得を示す。
これはスルーの心構えであって、考え方の根本となる部分である。


@スルーして好牌引いたら攻め意識

スルーして好牌を引いたらそれはスルーしたことが正着であることを暗に示している。
いわゆる、ご褒美ツモである。
メンゼンである場合は、リーチを念頭に高く仕上げることを意識する。


Aスルーして入ったテンパイ即リーチ

スルーして入ったメンゼンテンパイというのは、
仕掛けとの利益衡量を乗り越えて得た正着の証だ。
状況にもよるが、これによって入ったメンゼンテンパイは即リーチと行くのが基本である。
相手の仕掛けによって入ったテンパイならなおさらだ。


B迷ったら鳴かない

迷って鳴くというのは、自分でも有利不利の判断が難しいということである。
こういう鳴きは、総合的には不利に働くことが多いのは経験からも明らかだ。
「迷う」という感情を相手に見せることも隙につながり、咎められる可能性が高い。
何もなかったそぶりでツモ山に手を伸ばすのが正解だ。


Cできるだけ鳴き無しにすると効果大

ネット麻雀限定の戦略。
スルーを有効に生かすためには、それを読まれないための準備が必要不可欠だ。
自分の手が鳴くべき状況にない場合は速やかに鳴き無しに設定することが手を読まれにくくするコツだ。
特にファン牌のポンラグは相手に合わせ打ちさせる機会を与えないためにも、繊細な鳴き無しが必要となってくる。


Dスルーは日和るためではなく、鋭い反撃をするためと心得るべし

スルーすることによって、守備力が高まるのは確かだが、
スルーの目的は放銃しないことではなく、鋭い反撃をすることにある。
これをはき違えてしまうと、ただただ地蔵になってしまうことを肝に銘じるべきである。


Eしかし、鳴くべき手は鳴く

鳴くべき手でない手を鳴くのは蛮勇だが、
鳴くべき手を鳴かないのは単なる臆病だ。

鳴くべき手を鳴かないのはむしろ勝てなくなる、これを認識してこそのスルーである。


★スルースキルの効果、効能

それでは、スルースキルを活用することでどのようなメリットがあるのだろうか?

@守備力

スルーすることによって、手狭にならないため、相手の攻撃に対する守備力が高まる。
これはかなり明快なスルーによるメリットだ。
特に字牌の場合は、2枚落とせることで守備力が高まるとともに、落としていくことで自分の手牌がグレードアップすることも少なくない。


A柔軟性

スルーをすることで、様々なツモに対応できるのと同時に、
状況の変化にも柔軟に対応しやすくなる。
例えば、放銃というのは、自分がテンパイに近ければ近いほど起こりやすい現象だ
なまじテンパイしているから放銃するというケースは麻雀には往々にしてある。

急所でなければスルーしてテンパイを遅らせることで、一手の余裕が生まれ、
それによって放銃を回避することができる場合もある。
速いことが最善であるという先入観を取り除くことが、麻雀の大局観においては重要だ


B安定感

@守備力とA柔軟性を伴うことによって、不運かつ致命的な放銃が減る。
これによって、ラス率が下がり、成績の上下のブレ幅が小さくなる

個人的見解としては、
好調時の最高到達点は、鳴き麻雀の方が高く、
不調時の最低到達点は、スルー麻雀の方が高い。


ラス率を低く抑えることが可能になるスルースキルの活用は、
ラスが圧倒的敗者である天鳳においても有効な戦術であり、
順位の分散を大きくしないという意味で、
順位の安定を確保できると同時に、精神的な安定感をもたらす

これは前回日記に書いた、「デジタルのジレンマ」に陥らないための一つの方法であり、
自分の鳴きによって相手のみならず自分自身までも翻弄されてしまうという、
鳴き麻雀最大のデメリットを解消する手段でもある。


さらに、このスルー麻雀がフリーやタイトル戦など、
あまねく麻雀の土俵において成立する可能性が高いこと。

これは、土俵の違いごとに自分のスタイルの根本を変えずに、
わずかに修正するだけですむため、
ブレ幅が小さく、精神的負担が少ないという意味でも合理的であり、
安定した麻雀を打つことにつながる。


以上が、スルースキルを活用することのメリットであり、
フーロ率を抑えた麻雀がスタンダードな戦術となる可能性を示すものである。

次回以降、その具体例を挙げていきたいと思う。



ラベル:天鳳 鳴き 戦術 不鳴
posted by はぐりん@ at 22:29 | Comment(5) | 思想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年04月12日

鳴き総論 デジタルのジレンマ

ひとつ晒せば自分を晒す
ふたつ晒せばすべてを晒す
みっつ晒せば地獄が見える
――見える見える、落ちるさま

『哭きの竜』より、竜のライバル雨宮賢の言葉である。


デジタル麻雀全盛の昨今、
仕掛けの重要性が謳われるようになり、
鳴きの技術というのは近年、飛躍的に進歩した。

バックに形テン、後々づけ、一発消しにツモ飛ばし。

自分のあがり率を最大限に高めつつ、相手の期待値を低くする戦術。
これらは確かに仕掛けの技術を高め、現代麻雀に大きな革命を起こした。


しかし、冒頭の雨宮のセリフはこの麻雀に大きな警鐘を鳴らしている
鳴き全盛の時代にあって、鳴きのメリットは語られるがデメリットはあまり語られることがない。

ファン牌を一鳴きすることは当然だが、スルーするとあたかもあがり放棄のような感覚になる。
愚形でも仕掛けていくのが正義だし、称賛されやすい。
これは、『科学する麻雀』が出版されてからの顕著な傾向だ。

現代麻雀は仕掛けないことに抵抗がある。
ファン牌をポンすることよりスルーすることの方がよっぽど勇気がいる行為なのである。



特上で十段を2回達成した自分の経験から確実に言えることがある。
積極的に仕掛けていく麻雀は、好調時はかなり結果につながるが、
不調時は真逆で、どこまでも墜ちていく。


勢いだけで鯉のように登っていくうちは全て鳴いていっても好結果が出るが、
その仕掛けに逆の目が出始めるとどんどん崩れていって止まらない。
そのうちに自分のスタイルに自信がなくなり、
フォームを崩してガタガタになっていく。


デジタル麻雀を標榜する人は必ず一度はこのスパイラルを体感しているはずだ。
鳴き麻雀は好調時は問題ないが、
一旦不調に陥ると、その体勢を立て直すのが非常に難しいというデメリットがあるのだ。


なぜかというと、鳴きというのは本来メンゼンに比べて不利な行為だからだ。
手狭になる上、打点も安くなりやすく、不調時はそのデメリットをもろに享受しやすくなる


そして、さらに問題なのはデジタルであるその信念だ。
デジタルなら自分に有利な行為と思ったら常に打ち方を変えないのが正しい戦法だ。
それは好調時も不調時も関係がない。


結果が出ないからといって、仕掛けをしないのではそれはデジタルではないし、
不調時でも打ち方を変えないのがベストな選択となるはずだ。
こういう信念が打ち手の感性や危険信号を排除し、フォームを修正できずに大崩れしてしまう。
これがデジタルであるがゆえの悪循環だ。

俺はこれを「デジタルのジレンマ」と名付けた。


★鳴きというのは戦場に自分を晒す行為

鳴くという行為には多大なメリットがあり、
現代麻雀を勝ち抜くうえでその技術を身につけることは必要不可欠だ。

しかし、現代において忘れられている感覚がある。
それは、覚悟である。
敵を斬るのは、斬られる覚悟のある者だけだ、という姿勢だ。


戦場において、自分が有利な時だけ攻撃に参加し、
相手に攻撃された瞬間背中を見せて逃げる。
この戦い方で、勝利を得ることができるだろうか?

その場凌ぎの戦いでは、いざという時に腹が括れないし、
何より敵になめられる。
覚悟が足りないことは隙を見せること、
これは戦場の士気を左右するものであり、麻雀で言えば大局観の部分だ。

肉体的にも精神的にもダメージを最小限にしようとすればするほど、
実はそれに反比例して自分のダメージは増えていく。
なぜなら、敵に与える両者のダメージがまやかし程度のものでしかないからだ。


麻雀において、ひとつ晒すことは、
戦場で待機するか、最前線に飛び込むかぐらいの違いがある


何フーロでも関係ない。
重要なのは、ひとつ、1フーロ目の仕掛けにどれだけ覚悟を持って臨むかだ。


仕掛けの入り方に覚悟が伴っていれば、
リーチに対しておろおろしたり、相手の仕掛けにひよったりすることは格段に減る。
自分の覚悟が相手に伝われば、自ずと相手の反撃をとどまらせることにもつながる。

そして、覚悟が伴っていれば斬られても痛くない。
放銃が痛くない。これは麻雀の大局観において非常に重要なものだと俺は考えている。



麻雀というのは道だ。
そして道というのは全て麻雀に通じている。
武士道と云ふは、死ぬ事と見付けたり。
アカギも似たようなことを言っている。

相手を尊重し、規範に従う。
そして、覚悟を持って鳴く。
これを意識すれば、確実に麻雀のレベルは一段上がることを保証する。


次回以降、「スルースキル」と称して、鳴かない具体例を挙げていく。
そして鳴きが及ぼす作用について詳しく掘り下げていきたいと思う。

最後に、どういう鳴きが良くない鳴きなのか、
そして覚悟がないとどういう結果が待っているのか、
4枚の画像を挙げるのでみなさん自身で考えてみていただきたい。
最終的にラスになった半荘の一場面である。


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ラベル:天鳳 精神 鳴き 思想
posted by はぐりん@ at 20:10 | Comment(9) | 思想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする