中張牌のカンツは、
横くっつきで2メンツの種&2枚落としで雀頭候補になる形で柔軟性があるため、
慌ててアンカンしない方が牌効率的に有利であることが多い。
ポイントは雀頭候補が他にあるかどうかという部分で、
雀頭候補がある場合は、カンツにくっついたターツが生きやすいため、残しておく意味が強まるが、
雀頭候補がない場合はカンツを先に1枚切っておくことで攻守の面から安定しやすい。
なぜなら、くっついた場合にはそこが雀頭候補として最大限機能するため、
1枚切ったことが無駄にならないし、
中張牌のカンツはその性質上、相手の攻撃に対して危険度がかなり高いため、
切り遅れた場合に、カンもできないし切ることもできないという手詰まりに陥りやすいからである。
ポイントをまとめると以下の通りとなる。
@中張牌がカンツになったら、まずはアンカンせずに有効活用することを考える
A雀頭候補がある場合は、カンツ部分の横伸びがより期待しやすいため、カンツを引っ張る価値は高まる
B雀頭候補がない場合は、カンツを先に1枚ほぐしておくと攻守の面で安定しやすい
C中張牌のカンツは相手の攻撃に対してとにかく危険度が高いため、1巡通れば4巡通るという選択をしない方がいい
それでは、実戦例を見ていこう。

南3局、20600点持ち3着目の南家。
4mがカンツになったが、さてどうしよう?

とりあえず、カン保留の9p切りとした。
いまいち不安定な形だが、ツモによってはいかようにもなる。
下家の切った2mにラグがかかり、発をツモってきたところ。
さて、どうしよう?

ここでは4mを1枚はずした。
下家の2mラグはこちらの手に4mカンツという状況からポンラグの可能性がそれなりに高く、
雀頭がないことからもいまいちマンズの横伸びが嬉しくない。
後々必ず危険となる4mだけに、このへんで処理しておくのが得策と考えた。

少しずつ手がまとまってきた。3s切り。
注目してほしいのが、4mにくっついた5mが、裏目とはならずに十分に機能しているところだ。
雀頭のない手牌の場合は、カンツからの1枚はずしは周辺の牌を引いても雀頭候補として生きやすい。

ここしかないという6mを引き、五面張の最高形ができた。
文句なく即リーチ。
もちろん、4mを残しておいた方が牌効率的には有利ではあるが、
あれぐらい愚形含みなら受けも念頭に置きながらの構えを取りたい。

無事にツモって裏は乗らずの1300・2600。
2mラグはやはり親のポンラグだった。
このあがりで2着浮上し、ラスのリスクはかなり低くなったが、
結局3着で終了した。
このように、雀頭のない手からはカンツを先に1枚はずしておくことによって、特に守備面でのメリットがある。

別の半荘。
東2局、親連荘が終わり44500点持ち大トップ目で迎えた北家。
6pがカンツになり、雀頭がない手牌からはいまいちだが、
好調を意識しているので手広く構え、生牌の白切りとした。

タンヤオに手牌が伸び、急所の3mが入った。
さて、どうしよう?

自然なのは8m切りだろう。
ピンズが安く、マンズに雀頭候補があるため、
6pのくっつきによってかなりあがりが見込めそうだ。
7mツモだけはかなりの裏目となるが、
マンズのツモにも広く対応しやすい。

ところが、下家の親からリーチが入って安牌なし。
いやーな感じの9pを掴まされたが、これはさすがにツモ切るしかない。

引き続き、5sツモって完全手詰まり。
さて、どうしよう?

オリれるものならあがりなどいらないわけだが、ここでは2m切り。
ドラじゃない方のスジで打っても安い方を選んだ。
ソーズにくっつけば6pカンして勝負、ピンズにくっつけば5s勝負の算段だ。
ここでカンしたところで手詰まりには変わりないので、ここでのカンはない。
ソーズを食い延ばしたところでかわせる可能性は高くないので、
勝負するのはメンゼンテンパイした時、この意識が重要だと思っている。
ピンズが安くて6pのカンツ落としもチラとよぎったが、7枚見えの36pで打った時のダメージははかりしれない。
実利を取る6p切りの選択はないわけではないが、
できれば切らない方向で攻めきるかオリきるのが理想だ。

安牌がまるで増えずに、いかにもな9mツモで完全に困った。
さて、どうしよう?

苦渋の9mツモ切り。
端牌につき打点の面で打ってもマシという点からだ。
巡目的にはそろそろカンしてリンシャン牌に安全牌を求めるというのもなくはないが、
ドラを増やして結局オリ切れないというのが最悪すぎるので、
とにかくカンのタイミングだけは注意を払わなければならない。

最後のツモが安全牌でなんとか凌ぐことに成功した。
ホッとしていてはいけない、ここで最後の仕事がある。

そう、満を持しての6pカンで、親の海底ツモを消す作業だ。
親の待ちはカン5sで、
なんとこれは俺が次に切ろうと思っていた牌だ。
最後のツモが安全牌でなければ、どういう形にしても放銃していた可能性が高い。
とにかく最終形を見てホッとした記憶がある。

親の入り目は、8枚目の3pだった。
やっぱりか、と言いたくもなるが、
このように中張牌カンツの危険度の高さは相当なもので、
落とす際にはかなりの覚悟が必要だ。
中張牌をカンツで残しておくのは牌効率的には有利だが、
相手の攻撃を受けた際はめっぽう弱く、
切れない上、カンもしにくいため、手牌が圧迫されて手詰まりになるという現象が起きやすい。
ある程度仕方ないことではあるが、
そのようなリスクを認識しておく必要がある。

別の半荘。
南3局、40500点持ちトップ目の親番。
2着目の上家とは8400点差だ。
赤2枚の好手牌から、7mがカンツになった。
さて、どうしよう?

タンヤオとマンズの伸びを見て、ペンチャンを払う1s切りとした。
とりあえず、雀頭候補をどこかで作りたい。

上家が8mポンした直後に、9mをツモってきたところ。
さて、どうしよう?

ここで7mを1枚はずした。
マンズは上に伸びにくいので、7m周りの2メンツは少し厳しい。
ここまでで他の部分に雀頭ができないため、7mのカンツは機能しにくくなっている。
7mは後々危険度が高くなるのは明白であるため、
それならば先に処理しておいて、9mを安牌としても扱おうという狙いだ。

対面からリーチが入った一発目、
こちらもテンパイが入ったが、さてどうしよう?

テンパイに取らずに、現物の7s切りとした。
実は上家の6pに明確なラグがあったため、
自分のあがりはかなり厳しいというのもあったが、
ここでの順位戦略で何が最悪かと言ったら、対面のリーチに振りこむことだ。
なぜなら、ドラも赤もほぼ見えており、上家の仕掛けは安手が濃厚。
つまり、上家への放銃は怖くなく、対面に満貫級を打ってしまうのが最悪で、
ここではベタオリに徹して上家と対面を闘わせるのが上策と考えた。

しかし、その考えを嘲笑うかのように6pがすぐに切られる。
過去に幾度となく見てきた光景だ。
安牌に窮するかもしれないが、
ここから必死にオリることは順位戦略として正しいと俺は考える。

結局上家が4mツモで、300・500。
予想通りに上家は安手で、対面もオナテンの47mだった。
序盤にはずしたカンツの7mがわかりやすく全員の急所となっている。
中張牌のカンツはこのように、危険度が高い。
結局この半荘はそのままトップで終了した。

別の半荘。
南1局、21700点持ち3着目の北家。
ピンズのホンイツまっしぐらのところ、
ラス目上家のリーチを受けて、5pがカンツになった。
さて、どうしよう?

ここでは2pを勝負した。
8枚目の25pはワンチャンスとはいえかなり怖いが、
切りだす字牌も安全とは限らず、
自分のあがりも見るなら2p切りが最善と考えた。
ポイントは、ラス目のリーチだけに、
攻め返すにしてもできるだけカンをしない手順を探すことで、
天鳳では後手でのカンは特に繊細さが必要となる。

西もポンできて、テンパイ。
こうなったら、後は真っ向勝負だ。

しかし、対面が手詰まりからの放銃。裏1の8000となった。
このようにカンツスジであっても、
状況によっては切り出して勝負に行くケースもある。
混沌としたが、この半荘は2着で終了した。
次回は、カンツ含みのさらに複雑な形について考察する。