今回は鳴き一通だ。
基本的にはメンゼンである程度までは形を整え、
相手の手の進み具合を見ながら仕掛けも考えるわけだが、
その仕掛けのタイミングは手の形や場況によって様々に変わってくる。
ポイントは、以下の通りとなる。
@安手一通はかわし手として使う
赤やドラのない一通の場合、メンゼンにこだわってもそれほど破壊力がないばかりか、あがりにくい。
なぜなら、一通は受け入れが狭くなりやすいというデメリットがあるからだ。
特に愚形含みの場合は、安穏としたスルーが一手遅れになりやすい。
安手の場合は、かわし手の意識を持って積極的に仕掛けることをおすすめする。
A一通の急所は456
456牌は他家も必要とするため、一通においては急所となりやすい。
特に、4と6は片あがりとなる部分であるため、最後に残ると何かと不都合が生じやすい。
他家視点からも456チーからの123789待ちは盲点になりやすいため、
一通の仕掛けは456牌から仕掛けるのが効果的だ。
B上家のいらない色(場に安い色)を利用する
一通はシュンツかつ一色で構成する手役であるため、
それが上家のいらない色であるかどうかというのは成就の上で重要なポイントとなる。
さらに、フィニッシュまで考えるなら全体的に場に安い色である方がいい。
このへんを機敏に読み取ることで仕掛けの精度を上げることができる。
C片あがりでも19待ちはあがりやすい
最後に19待ちが残る場合は必ず片あがり確定形となるが、
中盤以降の19は他家にとって不要牌であることが多いため、
場に2枚ぐらい見えていてもあっさりあがれることも多い。
46待ちのあがりにくさとは対照的であると考えていい。
それでは、具体的に実戦例から見ていこう。
@安手一通はかわし手として使う

2pをツモったが何を切るか?

迷ったら字牌切り、だ。
この形は58p引きでいずれもリャンカン形が残るので、
牌効率的には白切りがベストだ。

狙い通りの5p引き後、1pを引き戻してまさかの一通形に。
ここでは2m切りとし、タンピンの変化を見た。

愚形&愚形のイーシャンテンなので、8pはチー。
巡目的にも点棒状況的にもスルーするメリットがない。
かわし手と見てこのチーは迷わないところ。

あっさりツモって、300・500。
親の手も下家の手も煮詰まっていて、このあがりの価値を実感できる。
仕掛けというよりも、9pを残した手組みが本局の焦点だった。

5pをツモったところ。何を切る?

横伸び意識で様々な手役との天秤に、ということで5pツモ切り。
純チャン、789の三色、ソーズの一通の天秤だ。
いずれも仕掛けが効くので悠長な手組みというわけではない。

5sツモってやっと形が決まった。3p切り。

ラス目の親リーチ一発目に7sが出たが、これを鳴く?

一発を消しつつ、とりあえず出あがりの効くテンパイに取る。
ただし、次の危険牌ではオリるので当座のテンパイとなる可能性が高い。

ラッキーにもこれがあがれて1000点。
このように、安手の一通はかわし手としての価値が高い。
A一通の急所は456

オーラス1本場。28400点持ちトップ目の親番。
広いくっつきイーシャンテンのところ、上家から4sが出た。
さて、どうしよう?

ここだけは鳴くと決めていた。
幅広いくっつきなので、滅多なことでは仕掛けたくないが、
ピンズは場に高くて赤5pにくっついても意外と苦労しそう。
しかも、愚形になったらリーチが必要で、そのリスクを負わないための仕掛けでもある。
ソーズくっつきにしても47sツモ以外はそれほどあがりやすいとは言えない。
切られたばかりの9sだが、端牌だけに十分に拾える可能性はある。
ただし、ここで9sが出たとしても鳴かない。
急所の4sだからこそのチーだ。

上家リーチの宣言牌が6s…と思ったらこんな6sツモりやがった(ノω・、)
ショックは大きいが、何食わぬ顔で6sをツモ切る。

8sをツモったが、どうするか?

ここでは7s切りとした。
上家の7sはツモ切りだが、実質67s両面ターツ落としだ。
場況的にかなり良い58s受けを嫌うのは理由がある。
ダブルワンチャンスとはいえ、この8sは危険と見た。

ほら、やっぱり、ということで700・1300の親っかぶり。
9sは山に3枚ということで、判断は間違いではなかっただろう。
裏乗って2着終了でもいいのに、という点棒状況で、
ここから地獄の西入となったが、なんとか2着で終了した。
B上家のいらない色(場に安い色)を利用する

オーラス、41300点持ちトップ目の親番。
実質残り1局で引き気味に構えることも可能だ。
上家から4pが出たが、さてどうしよう?

これは機敏にチーとした。
見ておわかりのように、ソーズがバカ安の場況となっており、
上家も対面もソーズ要りません、と言っている。
こういう場況では、ドラ色は後々高くなりやすく、
ドラまたぎで表示牌の4pはもはや急所と言っても過言ではない。
下家には満貫ツモで捲られる状況なので、
攻撃を受ける前にかわす可能性を見たい。

狙い通りに7sチーしてテンパイ。
対面が明らかにピンズの仕掛けで、47p受けが残っていると厳しいことがわかる。
さらに、最終形がソーズ待ちなのも場況的にプラスで、
万が一あがれない方をツモっても、この場合、白の保険がある。
急所から仕掛けることによって、このような好循環は生まれやすい。
ペンチャンより両面が急所であることも往々にしてあるのだ。

まあ出るわなあ、という感じで2900終了。
下家の牌姿は逆転条件を十分に満たしている。
場況を加味した機敏な仕掛けが上手くいった例だ。
C片あがりでも19待ちはあがりやすい

急所の7mポンから入って、一通に寄せた高い手の成功例。
上記3例からも、19に寄せる仕掛けの一通は比較的あがりやすいことがわかるだろう。
端牌待ちは、あがれない方が出たとしても、そのスジは盲点となるため、
すんなり出てきやすいというのも理由のひとつだ。
一通は、赤が使える上に、ホンイツなどの手役とも複合しやすく、
仕掛けても十分に打点が見込める。
また、あがりトップやかわし手の手役としても、
仕掛けの機動性が生きやすく、非常に使い勝手がいい。
スピードが重視される現代麻雀では、
常に一通を視野に入れたメンゼンでの手組み、
そして的確にあがりに寄せる仕掛けのタイミング、
これらを意識することが必要不可欠であると言えよう。