そんな場面は天鳳においても頻繁に訪れる。
今回はリーチの判断基準におけるプラスアルファについて書きたい。
以前、『鳴きのデメリットとスルーの極意』という記事において、
「スルーして入ったテンパイ即リーチ」という戦略を紹介した。
その記事からその部分を丸ごと抜粋する。
Aスルーして入ったテンパイ即リーチ
スルーして入ったメンゼンテンパイというのは、
仕掛けとの利益衡量を乗り越えて得た正着の証だ。
状況にもよるが、これによって入ったメンゼンテンパイは即リーチと行くのが基本である。
相手の仕掛けによって入ったテンパイならなおさらだ。
上記にはリーチに踏み切る判断基準のヒントが書いてある。
前提としてあるのが、仕掛けよりもメンゼンリーチの方が強い、という点だ。
仕掛けというのはリーチの権利とツモ番を放棄をして打点を下げ、
手狭にして守備力を下げる代わりにスピードを上げているのだから、
仕掛けがリーチに対して不利なのは当然であるが、
他家の仕掛けによって好ツモが流れたメンゼン者は、
その時点でツモ番とメンゼンを放棄した仕掛け者より有利であると考えられる。
それによって入ったテンパイならばなおさらであり、
その有利さを直接リーチでフーロ者にぶつけるというのが、
「鳴きで入ったテンパイ即リーチ」である。
鳴いたことによって、一定のデメリットを背負った仕掛け者に対し、
その仕掛けによってテンパイが入ったメンゼン者にはデメリットは一切ないわけで、
ここに力関係の強弱が成り立つ。
返す刀で即リーチと行くのが仕掛けを咎めるリーチとして得だという考え方だ。
この考え方によると、
最初のフーロ者は、自分の鳴きによってリーチを誘発する可能性のあるメンゼン者が3人もいるので、
ある程度勝算を持った仕掛けでないと、リーチの標的になりやすい。
2人目のフーロ者の場合は、被せてくるリーチ者が減るので、
スピードを合わせる仕掛けに踏み切りやすい。
3人目がフーロすると、仕掛けのスピードが圧倒的に生きやすい場となるため、
メンゼンの手組みが間に合いにくい。
「3人フーロはメンゼン不利」と言われる所以だ。
一方、自分が鳴くか否かの選択でスルーを選んだ結果、
メンゼンでテンパイした場合というのは、
鳴きによるデメリットを避けられたばかりか、
それ以上に強いメンゼンテンパイというメリットを得られているのであり、
テンパイに至る過程が正着であった可能性が高い。
これによってリーチの権利を得られているのだから、
その有利さをそのまま行使しようというのが、
「スルーして入ったテンパイ即リーチ」である。
以上をまとめると、フーロ関連におけるリーチの判断は、
・自分がスルーして入ったテンパイであるか
・他家の鳴きによって入ったテンパイであるか
という基準を用いることによって、より精度が高まるということだ。
これは、理屈ではなく、感覚で理解している人も多いと思う。
少なくとも、私の天鳳の実戦においてもメインに近いリーチの判断基準として用いており、
それに当てはまるケースでは悪い結果になることが少ないという印象が強い。
手軽かつ実戦的で効果も高い判断基準であるので、ぜひ使ってみることをおすすめする。
今回は、他家の鳴きで入ったテンパイのリーチ判断について、
実戦例をご覧いただきたい。
@好形テンパイ case1

東2局、原点の北家。
前局、下家が上家に7700を放銃し、現在ラス目が親番となっている。
たった今、上家から対面が南をポンしたところ。
直後にテンパイが入ったが、さてどうしよう?

即リーチに踏み切った。
こちらの手はイーペーコー、タンヤオ、赤など手変わり豊富で、現状ピンフのみ。
ラス目の親が唯一のメンゼン者ともなると、ダマでさらっとかわす手はある。
リーチ判断は割合難しいのではないだろうか。
ここでは、仕掛けで入ったテンパイということと、
2p手出しがキズにならない入り目1pであるということを判断材料に即リーチとした。

ほどなくしてツモ。
裏は乗らずに700・1300。
赤5sの変化はあったものの、あっさりツモれたので不満はない。
仕掛けによってサクッと入ったテンパイは、そのリズムで攻めていくのがいい。
case2

東4局、22500点持ちラス目の北家。
5巡目でこの手恰好ではかなり厳しい。
ここでは、2p切りとして一応567三色の可能性を残した。

カン6pが埋まったはいいが、あまりあがれる気はしない。
さて、何を切る?

7sを引っ張りたくないというのが本音だが、
ここは頑張って発切りとした。
7sを引っ張ることによる危険度を2枚切れの中残しで補おうというもの。
このへんは私なりの攻守バランスだ。
マンズの形も不安定で、リーチと来られると困ってしまう。
苦虫を噛み潰したような顔をしながら発を切った。

7sを残した甲斐あって、ドラを引き込む。
ただ、このカン8sが2枚切れとやはりネックなのである。
この時点でもあがりが現実的であるとは思っていない。2m切り。

次巡、中が重なり、マンズのリャンメンを固定したところ、5mに上家のポンの声。
このポンによってド急所のカン8sが埋まった。
この一牌で俄然手牌は見違えた。手順で中のトイツ落とし。

次巡、4mツモってテンパイ。
25sは4枚見えていてあまり強く見えないが、さてどうしよう?
ここまで見て、何かに気づいただろうか?
気づいた人はこのブログの相当のマニアだ。
そう、これは前回記事で紹介した降段戦でのリーチ判断と同じ場面なのである。

上家の鳴きで急所が埋まってのテンパイという1枚絵ではわからない判断基準がここにはあった。
25sは決して強くは見えないが、鳴きで入った反動を利用して勢いでリーチといったわけだ。

結果は僥倖の3000・6000ツモとなったわけだが、
手作りの過程で仕掛けが大きく左右した結果であり、
降段戦でも日和らずに手を広げたことが生きたという意味で印象に残っている。
case3

同半荘。南3局、32400点持ちトップ目の親番。
全体として比較的僅差で、まだまだどうなるかわからない。
やっかいなドラの発をポツンと持っている。
テンパイなら発は切り出すが、鳴かれて満貫ツモられても非常に混沌としてしまう。
この局はつつがなく、ノーテン流局も辞さずの構え。

次巡、ツモ切った3sを下家がチー。

これによって、カン6pが埋まった。
さて、どうしよう?

このタイミングなら迷わずに即リーチと行ける。
仕掛け者が出たことによってリーチに叩き返されるリスクが低くなったからだ。
仕掛けのデメリットと急所が埋まってのテンパイが重なったことで、
一気にローリスクとなり勝負に行きやすくなった。
仮にドラをポンされてもこの待ちであれば十分に勝負になるだろう。

これがまさかの一発ツモ。
裏は乗らずに2600オールとなり、この半荘トップを取ることに成功した。
case4

東3局、27600点持ち2着目の南家。
親が2枚目の西を少考の末ポンした直後、絶好のカン5sが埋まった。
親の仕掛けには脅威がないので、ここで白を切り飛ばし、基本的には引かない所存。

この流れで、カン7pが埋まったら当然…

即リーチだ。
予想に違わず、親の手は勝負になっていない。
完全に親の仕掛けを咎めるリーチで、大体ツモあがるだろうと思っていた。

しかしこれは予想と違って、一人テンパイ流局。
リーチ時6山が空振りに終わった。
実は、この局の結果というのは、未来を占っている。
というのは、咎められるべき親がノーテン罰符の1000点で済んでいるところで、
親としては相当展開に恵まれていると考えるべきなのだ。
こういう何気ない一局の結果で展開予想は可能で、
上家はそのままトップ終了、私は苦戦の3着で終わった。
A愚形テンパイ case5

東3局1本場、供託1本、21900点持ち微差の2着目の西家。
南家が自風をポンした直後、ツモったのは2s。
ここでは234の三色があるため、3p切りとした。

次巡、間髪入れずにテンパイが入る。
ドラそばのペン7pは苦しい受けにも見えるが、さてどうしよう?

ノータイムで即リーチとした。
トップ目の仕掛けで入ったテンパイ、親のツモを飛ばしている、さらに三色にならない5pツモ。
これぐらい条件が揃えば、むしろリーチに行かない理由がない。

二発目ツモ!裏なしの1000・2000!かー、ついてね〜!
感触のままにあっさりツモった。

南家の鳴きでツモった2sと5pはともに親の有効牌で、
鳴きがなければ親の先制リーチが入っていた。
これはたまたまだが、親のツモを少なくする鳴きは戦術として有効だ。
case6

東3局、30200点持ちトップ目の西家。
配牌は愚形だらけでお世辞にも良いとは言えない。

私以外の三者が三様に仕掛けて、5巡目でこうなった。
あの配牌からどうしてこうなった?という感じだが、さてどうしよう?

音速でリーチした。感覚としてはツモる前にリーチしている感じ。
三者の鳴きによって完全にツモが噛み合っている。
メンゼンの私のみが好ツモのメリットを得られているわけで、
仕掛けを咎めるリーチは迷わないところ。
元々成就しにくい配牌だっただけに、リーチが空ぶっても痛くない。
7s待ちになっても当然リーチに踏み切るが、埋まったのはベストの7s。
この6pはかなりあがれると思った。
ピンズの切れ具合からもそうだし、リズムから言ってもだ。

対面からあっさり出た。

まあ乗るわなあ、の5200。
このメンツは全員打てるメンツで、かなり締まった対局だった。
皆がビシっと押してきたのが強く印象に残っている。
case7

東1局1本場、供託1本、23500点持ち同点ラス目の北家。
上家のチーによって、カン7mが埋まりテンパイ。
さて、どうしよう?

手変わりの少ない愚形は即リーチ、かつ鳴きで入ったテンパイ即リーチ。
システムに従えば即リーチの一手。
東1なので行きやすいだろう。
ダマよりもリーチが得という判断だ。

直後に、親から追っかけが入る。
こ、こりゃやべえ。

赤5sを掴んで上家に8000の放銃となった。
仕掛けの上家もゼンツだと、さすがに分が悪かった模様。
このように、システムに従っても悪い結果になることはもちろんあるが、
トータルで見ればこのリーチ判断は間違いではないということだ。
この半荘は粘ってトップで終了した。
B応用 case8

東4局2本場、7900点持ちラス目の西家。
大トップ目上家がリャンメンでチー、そのまま急所のカン8sが流れてきた。
このように、鳴いた牌と同じ有効牌が食い下がるケースは、仕掛けを咎める大チャンスだと考えていい。

さらに次巡、急所のカン4sまで埋まる。
この局は絶対に引かないと決意する。

先にリャンメンが埋まってテンパイ。
さて、どうしよう?

即リーチも考えたが、ここはさすがに手変わり待ちとした。
仕掛けで入ったテンパイで、上家は無防備なのでリーチが悪いというわけではない。
ただ、打点のほしい点棒状況である上、
ピンフの変化が最も広い中張牌2種であるため、ここは基本に忠実にダマとした。
好形変化によって、あがり率は劇的に上昇すると考えられるからだ。

なんと上家が4フーロ。
素っ裸になった瞬間に、6mツモったが、さてどうしよう?

この局面は、すべての手変わりの瞬間に手出しでリーチをするのが正解だ。
つまり、ここでは4m切りリーチ。
これを6m切りダマでは変化枚数が減っているので損だ。
また、仮にこれが無駄ヅモだった場合のツモ切りリーチも、
待ちが悪い上、愚形待ちが明白になるので隙となってしまう。
ここでは仕掛けで入った6mの意味に重きを置いて、カン5mでリーチにいく。
手出しリーチによって、愚形リーチが悟られない。
裸単騎だからといって焦らず、きちんと手変わりを待ってリーチするのが重要だ。

対面の仕掛けで一発は消えたが、すぐに出た。裏なしの2600。
上家は子のリーチになら別段放銃しても痛くないのでこれは読み通り。
それよりも、対面は一発消しをしなければカン5mのツモあがりで1000オールとなっていた。
これは私の与り知る領域ではないが、最善の手順を踏んだからこそのあがりであったと言える。
この半荘はなんとか3着で終了した。