この場合、その牌をまたぐ両面に当たることはほぼない。
これは牌理を少し考えれば容易にわかる。















ここから3pを切る人はいないだろう。
トイツ落とし手出しでまたぎ待ちを作るためには、
テンパイ形からわざわざ崩していき、かつ次巡に別の入り目を引く必要がある。
リーチしていれば一発ツモであり、速度重視の現代麻雀ではピンフに拘る価値は低い。
つまり、打点の必要な特殊な状況を除いて、
トイツ落とし手出しリーチにまたぎ待ちはほぼないということである。
例えば、















オーラス3着目と11600点差のラス目南家。
こういった点差に条件のつくオーラスやラス前においては、
必要に迫られてそういう状況になることはあるが、
東場では基本的には好形テンパイなら即リーチが普通だろう。
さらに、トイツ落とし手出しが宣言牌となる場合、
間髪入れずに69sを引いてテンパイを入れる必要があり、
条件を満たすハードルがかなり高いと言える。
つまり、トイツ落としが宣言牌で出てくるケースの大半は、
それをまたぐ待ちはほぼないという認識でいいだろう。
安牌が足りない状況で、恩恵に預かるケースもわりと多く、
この読みがはっきり使える要因に、リーチ宣言牌につき手出しの割合が高く、
かつ手出しツモ切りが通常より認識しやすい、というのがある。
トイツ落としではなく、2枚連続ツモ切り、あるいは1枚目のみ手出しの場合は読みの材料とはならないからだ。
些細な差だが、これを見落とさないことが重要となる。
それでは、実戦例から見ていこう。
case1

東2局、34800点持ちトップ目で迎えた北家。
南家の先制リーチに対し、西家が追っかけを入れたところ。
さて、何を切る?

1pを暗刻落としすれば3巡凌げる。
宣言牌が手出しでさえあれば、この1pはほぼ完全安牌に昇格する。
この場合、ノーチャンスの1sよりも安全度が高いため、
悠々と安全を確保できる。

結局、西家が南家に2000の放銃。
横移動で決着となった。
case2

東4局、29300点持ちトップ目の西家。
親リーチが入って、一発目。
こちらもドラドラでチャンスと言えばチャンスだが、
イーシャンテンとはいえ形が少し厳しい。
さて、何を切る?

8m切りとした。
この場合のまたぎは58m69mとなるが、
5mは25mの両面があり、
9mはシャンポンがあるため、5m9mは危険となるが、
3mが通っていて36mがないため、一件隣の6mはかなり安全となり、
6m8mの2種は安全度が高いと読める。
こういう局面で、8mがほぼ安全と認識することができれば、
自身の手を崩さずに粘ることが可能となる。
基本となる読みの一つ一つは単純で取るに足らないものでも、
それをいかに組み合わせて、攻守判断に生かすかというのが大事だ。
基礎を丁寧に網羅することで、より実戦で応用しやすくなる。

上家の宣言牌が捕まり、親の12000となった。
case3

南3局、24600点持ち2着目の親番。
14100点持ちラス目の西家からリーチが入って予断を許さない。
安牌が1枚もないが、さてどうしよう?

8m切りとした。
対面は2枚目の7mのみ手出しだが、これは実質トイツ落としと考えていい。
この場合、5m6mは下のスジがあるが、
9mシャンポンは、9mが2枚切れにつき、警戒不要となる。
実質8m9mが安全と読める。

対面はリャンカンからのカン4m待ちリーチだった。
離れトイツ落としの項目でも紹介したように、
トイツ落とし手出しは引っかけリーチに要注意となる。
対面の手は、無駄ヅモの7mツモ切りさえなければ、
手出し7m切りリーチにつき8mはかなりの危険牌となるはずだったのに、
1巡の無駄ヅモによって8mがほぼ安全牌に成り下がっている。
たった1巡の河の作用によって、
これほどまでに安全度が変わる場合があるという例であり、
麻雀の攻防は、たかが1巡、されど1巡であるということを思い知らされる。
非常に面白い麻雀の性質だ。

この局、ベタオリを続けていた私に悪夢が。
場況からほぼ安全な6sをトイツ落とししたところ、
上家に狙われ、6400の放銃となってしまった。
ラグ無しの6sは連打してもほぼ単騎にしか当たらない。
東手出しは見ていたものの、最後に東を温存しようと思ったのが甘かったようだ。
この放銃によってラス目対面と僅差になったオーラス、
まんまと捲られ、文字通り痛恨の半荘となってしまった。
トイツ落としから手を読んだつもりが、
トイツ落としを狙われてラスになる。
いやはや麻雀には思いもよらない展開が待っているものである。
case4

東4局、17300点持ちラス目の西家。
上家の3pトイツ落としリーチが入る。
とりあえず、現物の3p切りとしたが、オリきれるかどうか微妙なところ。
このリーチには何が安全か、もうおわかりだろう。

しかし、下家が一発で切った1pにロンの声。
ん? これは…シャンポン待ち?

まさかの3pまたぎ、14p待ちだった。
一発裏なしだが7700。
私が掴んでも止まらなかっただろう。

どういうことかというと、まずこのダブルターツから2p切り。
これは普通の手順だ。

8pが入ってテンパイも、ソバテンが嫌だったのかダマ。
そして次巡に3pを持ってきての空切りリーチだった。
これぐらい手の込んだ仕掛けをやられると、
1pが出てしまうのもやむを得ないと言える。
この空切りは離れトイツ落としによく見られる手筋で、
両面固定の引き戻しを空切りすることで、またぎを引き出す狙いがある。
どちらかというと読みに長けた上級者の方がはまりやすいだろう。
テンパイ取らずのトイツ落としよりも空切りの方が頻度は多く、
パターンに当てはまっていても絶対はないという例だ。
ただ、トイツが河に離れていない、単純トイツ落としのリーチとなると、
このケースのように3pをもう1枚引くタイミングがたった1巡と限定されるため、
空切りにしてもかなりのレアケースであることは確かだ。
以上を総合して、単純トイツ落としの手出しリーチにまたぎスジはかなり安全と考えていいだろう。
【追記】
もう一つ例外となるケースを思いついたので書きたい。







親が上記の捨て牌でリーチ。
自分の手が以下だとする。















赤5pはかなり危険な上、切ってしまうと打点的につまらない。
こういうケースではトイツ落としがまたぎ待ちになることもありうる。
つまり、相手リーチに対応する手順として、こういうケースになりやすく、
さらに赤を含んだまたぎ、つまり3647はトイツ落としでも危険度は高くなりやすいと言える。
しかし、通常現物の4pは先に切られることが大半だろうし、
リーチ宣言牌がトイツ落としとなるためには、次巡に47sを引かなくてはならない。
やはりかなりのレアケースであるということは言えそうだ。