目的の曖昧なフワッとした打牌はそれ自体が敗着になることが多い。
天鳳においてはラスにならないようにする、という最大のテーマを持ちながら、
各々の状況に合った最適な戦略を模索していくわけだが、
刻々と変化する場況に応じて、その都度柔軟な対応を考えていかなければならない。
そして初心者に限らず、上級者でも最も判断が難しいのが、
自分の手にテンパイが入っている時、
またはかなり勝負手のイーシャンテンの時、のように、
自分の手があがりまたは流局テンパイに近づいている時の攻守判断だ。
自分の手がバラバラであるなら引き気味の選択を取らざるを得ないわけで、
自分に手が入っているからこそ放銃に結びつくケースというのが大半だ。
局収支をプラスにしたいと思うがゆえに、
テンパイからは押したくなる。
しかし、麻雀においてはここが最大の隙となりやすい。
自分のテンパイに気をとられているこのときが、
最も局のテーマを見失いがちな瞬間だからだ。
自分の手に気を取られてしまうことで、
自分がこの局すべきことは何か、
自分がこの局にやってはいけないことは何か、という局の方針が曖昧になってしまいがちだ。
例えば、私の場合でいうと、
鳳凰卓ではテンパイ料が重要であると認識し、テンパイを取りにいくことが多くなったのだが、
テンパイ料に意識が行きすぎることで、
親に対するケアが甘くなってしまうなどといった、
自分のすべき局のテーマが頭から抜けてしまうことがあった。
このように、自分の手の方向性や局収支の意識は、
時として局のテーマにそぐわない打牌を導いてしまうことがあるため、
自分の手牌を抜きにして、
まずはその局の方針・テーマを自分自身でしっかりと認識し、
これだけはしてはいけないという部分を根幹として据えることが重要だ。
視野が一方向に向いてしまう時に、そのような浮わついた打牌が起こりやすいので、
放銃の直後などは特に意識して局のテーマを再確認する必要がある。
常にフラットな気持ちで一局に臨むことが重要であり、
前局のミスや打牌の是非は引きずらないことが望ましい。
これは私自身なかなか難しいことではあるが。
また、迷いが打牌に表れると、強者には咎められることが多いため、
そのあたりも意識してスムースな打牌をこころがけたいところである。
さて、今回は浮わついた打牌がどのような結果を生むのか、
私自身の失敗例から見ていただきたいと思う。
case1

東3局、27000点持ち2着目の西家。
上家がドラの1sをポンしているが、何を切るか?

東を切った。
見えてないファン牌は東と白。
これは認識した上で、234の三色が見えるまずまずの手牌につき、
自分の手の都合で東切りとした。
しかし、これを鳴かれてしまう。

上家の6m手出しが入り、自分の手もイーシャンテンとなった。
さて、何を切る?

まっすぐ7sを切ると、これがロン。
ホンイツつきのハネ満を献上してしまった。
東をプレゼントした上に放銃まで請け負うとはなんとも気前のいい話だが、
この放銃が響き、この半荘はラスで終了した。
本局のミスは何だったのだろうか?
少し考えてみてほしい。
まず、ドラポンに対して役牌を安易に切った東切り。
これは間違いではない。
東は暗刻かもしれないし、鳴かれるかどうかは分からない。
自分の手を東1枚で殺してしまう必要はない。
ギリギリまで絞るとかラス目につき切らないという選択肢はもちろんある。
そして、手詰まりになっての7s切り。
これも間違いではない。
あの状態になってからオリを考えるのは手遅れだ。
パンパンに構えている以上、まっすぐにあがりを見る打ち方で問題ない。

つまり、東を鳴かれてからの手構えに大いに問題があった。
ここでの中切り、あるいは前巡の西切りは少しつっぱりすぎだ。
東を鳴かれてしまった以上、上家の手は危険が切迫しているため、
自分自身の方針を180度転換し、受け気味の構えにしなければならなかった。
方針が浮わついていると、なんとなく手を進めてしまいがちだが、
上家がテンパイになる前に7mなり7pという危険牌は先に処理しておけなければならなかった。
なんとかなるさ、というのは希望的観測であり、
放銃という結果を生んでしまった以上、これは言い逃れができない。
鳳凰では手組みに隙がないため、
特上よりも受けの構想をしっかりと持たないとダメだという実感を持っている。
case2

南3局、19800点持ち3着目で迎えた北家。
下家の親が9400点持ちのラス目となっている。
点棒状況からも受け気味に構える局面。
幸い字牌も多く、自分のあがりはあまり見込めそうもない。

終盤になり、あの手が伸びてイーシャンテンとなった。
さて、何を切る?

鳳凰卓はぐりん最大の失着はこの一打だと思っている。
親は両面ターツ落としを見せていて、テンパイを渇望している。
その親に対して2sから切って鳴かせているようではヌルい。
そもそも、親に対して2sは通るかどうかすら分からない。
ここは親に対してアシストする牌は一切切らず、
当然中から切って、テンパイしたら2s勝負するかどうかを決めればいい。
2s切りは、楽をしたいという逃げの一手だ。
形式テンパイを意識するあまりに、
本局自分のなすべきテーマを一瞬見失ってしまった。
手が進んできたときに、このような誘惑が発生しがちであり、
自分の手に捉われず何が大事かを考えていく必要がある。

これが親のテンパイのみならず、あがりにまで結びついてしまった。
4000オール。
これで一気に捲られ、最終的にはラスに沈んだ。

ただ丁寧に、親に対して絞っていれば親はノーテンだった。

先に中を切っていれば、親に流れたこの1mで私が先にテンパイ。
テンパイの時点で2sを切るかどうかというのは難しいが、
メンゼンでの自然なテンパイなら取っていいようにも思う。
ちなみに、1mツモで2s切りテンパイならやはり親に鳴かれるが、
私が先に8pでのツモあがりとなっていただろう。
1牌の切り巡で麻雀とは結果がこうも違うものである。
case3

オーラス1本場。23600点持ち3着目の南家。
点棒状況は自分から順に、23600、30700、32700、13000で、
現状親がラス目となっている。
対面から3sが出たところだが、さてこれを鳴く?

スルーした(ラグあり)。
これはラス回避の天鳳ならポンする方が普通だろうか。
マンズは安く、ラス回避だけならたやすくできそうだ。
しかし、満貫ツモでトップ捲りが見える点棒状況でもある。
私自身、この半荘はミスもなく、出来が良かったため、
必ず何かトップ捲りの方策が潜んでいると思った。
狙い通りに赤5pを引き込み、これでいよいよトップ捲りが現実的なものとなってきた。

手が進まずに2pをツモ切ると親がポン。
河に赤5sがあるのが不気味だ。

そして4mをツモ切られる。
メンゼンテンパイを食い取られた形だが、これを鳴く?

これはさすがにポンとした。
メンゼンでは間に合う巡目じゃないので、ここで逆転の方針からラス回避へと転換した。

直後に8pをツモったが、さてどうしよう?

ここで私の選択は赤5p切り。
7pワンチャンスの8p生牌で、8pの危険度はかなり高いと認識した。
さらに、前回切ってる5pにポンが入っていないことも加味した。
ポンテンを取った直後ということもあり、
自分が最もしてはならないことは何か、というテーマが一瞬頭から離れていた。
親は明らかにピンズの河で、
終盤の連続手出しが入っているのだ。
ここは、親の河とテンパイ気配だけ見ていればよかった。

これがよもやのカン5pに刺さる。痛恨のド高め7700デバサイ。
2pポンに逡巡がなかったので、25pには当たりにくい気がしたが、
2pは親が切っているわけではなく、25pも十分にあるしカン5pもある。
やはり3sを切って回るのが最善だった。

4mポンによって4枚目の7pを親に流し、
さらに山にはない4枚目のキラキラ光った5pを献上してしまった。
当然、この半荘はラスを甘んじる。

例によって牌山を覗いてみると、
私が放銃を避けられれば、この後どういう展開になっても対面が4pツモという結果となっていた。
数ある分岐の中から唯一のバッドエンドを選んでしまったわけだ。
私の感覚では、3sスルーも間違いではないし、
4mポンも間違いではない。
ただし、最後の最後でピンズの勝負をした判断が甘かった。
このように、自分の取ったテンパイに対する思い入れが強いと、
局のテーマを見失ってしまいがちなので、
勝負を焦らない姿勢というのが大事だと反省した。
鳳凰ではミスを咎めてくれるので、むしろ身になっていい。
ガンガンミスを咎めてもらって成長していきたいと思っている。