ギター、ベース、ドラム、ピアノ、ヴァイオリン、トランペット、フルート、琴、三味線。
ソプラノリコーダーやカスタネットは誰でも一度は手にしたことがあるはずだ。
あなたの大好きな楽器を手に取って、さあどのように演奏しようか。
譜面通りに正確な音を奏でようか。
それとも感情を込めて抑揚をつけてみようか。
今日は気持ちが高ぶっているので情熱的に荒々しくいってみよう。
麻雀を打つということはこれとよく似ているとは思わないだろうか?
卓上に気持ちを乗せて打牌という音を奏でる。
自分の感情の赴くままに鍵盤を叩き、卓上で表現する。
時にはリーチという歌声がハモることもあるかもしれない。
四者四様のハーモニーが合わさって四重奏という作品が生まれる。
(たまに噛み合わないけれども)
あなたが大好きな楽器を手に取って、
それをどう演奏しようがあなたの自由である。
麻雀もこれと同じである。
だから、遠慮することはない。
あなたの感情の赴くままに好きなように旋律を奏でればいいのである。
音楽は自由だ。麻雀も自由。music is free.
ちなみに私は幼少時代からピアノを習っていたが、
弾けども弾けども上達せずに才能は今一つとわかった。
楽譜を見るのは苦なのに、麻雀の牌譜はいくら見ても飽きない。
このへんは好きこそものの上手なれ、なのだろう。
経験はないが、個人的に私が好きな楽器はドラムで、
テクニカルな部分を正確に叩く感じがたまらない。
天鳳を打つ前にはラルクやオーラルシガレッツ等の動画を見て、
ドラムのビートでテンションを上げつつ、
自分も正確に演奏するつもりで臨んでいる。
ちなみに、初代天鳳位のASAPINさんは、
ゲーセンの音ゲー、ビートマニアの神でもあったと著書にあった。
降りてくる音符を正確に叩く技術。
場の状況から打牌を正確に選ぶ技術。
間違いなくこの両者には共通項がある。
つまり、楽器を上手に演奏することができる人は、
麻雀を上手に打つことができる人でもあるということだ。
麻雀と音楽には自分のさじ加減で、ある程度やり方を調整できる、
その遊びの余地が大きいという点で共通点があり、
その自由度が両者の魅力となっているとも言えるだろう。
少し視点を変えて、自分の得意な楽器を演奏するつもりで、
麻雀を打ってみるとまた新たな境地に達することができるかもしれない。
それでは、実戦からどのような音色を奏でるのか、
印象的だった半荘から取り上げてみたい。
東1局

開局の西家。
雀頭が肝の手なのに、6mを裏目ってしまった(前巡が7mツモだった)。
こうなると少しトーンを落とさざるをえない。
3pが3枚見えたので、2p切りとした。

4枚目の3pを引いてさらに裏目った形。
さて、どうしよう?

pp ピアニッシモ(かなり弱く)だ。
裏目が連続して自分のあがり目はほぼない。
場況はかなり煮詰まっているのに具体的な待ちや手役が見えない不気味な状況。
こういう局面ではテンパイに固執せず、スパッと見切るのがいい。

親リーチが入るが、下家がツモってなんと四暗刻。
開局早々、大物手が炸裂してしまった。

うっかり2sを切っていると倍満で勝負が決まっていた。
弱く弾く場面では流れに逆らわずに、しっとりと演奏したい。
東2局

次局。5巡目にしてピンズが10枚。
ドラが浮いているのが難だが、はっきりとチンイツの型が見えている。

対面から9pが出たが、これを鳴く?

f フォルテ(強く)だ。
急所の1と9が暗刻の形、ここでチューレンを狙わずしていつ狙うのか?
9pポンした方が辛い打ち方だが、前局四暗刻の役満の流れを意識した。

下家が一発で親リーチに振り込み、7700となった。
役満あがってるから余裕だなあ。

下家の放銃がなければ、チューレンとまではいかなかったが、
メンチン四暗刻のテンパイとなっていた。
東3局3本場

3着目で迎えた親番。
こ、この配牌は?

早速西が出たが、これを鳴く?

ベストはダブ東からなんだが、これはポンだろう。
牌種の少ない大三元ならスルーもあるが、小四喜はテンパイまでの敷居が高いので、スルーは緩手になる恐れがある。

南も鳴けて、後は自力かと思っていたが、何とダブ東が出てきた。
これをポンして、北は2枚切れているが、さてどう受けるか?

ff フォルテッシモ(かなり強く)だ。
四の五の言わずに地獄の北単騎で勝負を決めに行く。
当然の一着。

3者連続のチーが入って、めちゃくちゃ何かが起こりそうな予感があった。
仕掛けがぬるければぬるいほどこういうのは紛れて役満が成就しやすくなりがちだ。

しかし、結果は2人テンパイで流局。
下家に北が流れた模様。
鳳凰卓はずうずうしいので、こういう北も出る時はあっさり出るんだがなあ…。

下家に流れた北。
誰の仕掛けが良くて誰の仕掛けが悪かったのかは定かではない。

この白ポンがなければ東は自力で暗刻にできていた。
東が暗刻ならラス牌の北も出ていたかなあ、と考える。
楽譜を見るのは好きじゃなかったのに、牌譜を見るのは楽しいんだな。
音楽家の中には楽譜をあれこれ検討していじったりするのが好きな人もいるんだろうか。
ともかく、フォルテッシモの配牌を生かしきれなかった私の勢いはデクレッシエンド(徐々に弱く)となり、この半荘はラスに沈んだ。