他家の手役の中でも少し特殊なのが端で構成される全体手役、チャンタだ。
通常、赤入り麻雀では内へ寄せて赤を使い切れる手組みを目指すのが普通だが、
チャンタ系は赤を一切組み込むことができない。
それだけに時代に逆行する手役と言え、手なり以外ではあまり狙いたくない手役ではあるが、
赤の恩恵が少ない天鳳では、意外にもそこそこの出現頻度があり、
仕掛けの上家は繊細なケアが求められることがある。
天鳳では形式テンパイ狙いのようなアガリに向かわない鳴きも多く、
仕掛けに端牌が晒されているからと言って、それが直ちに手役に絡むわけではないことが多いため、
きちんと相手の手牌構成を見極める必要がある。
内切りには常に赤絡みの放銃の可能性があり、
チャンタをケアしたつもりがうっかりダマの高打点に刺さる、なんてことも起こりうるので、
一つの仕掛けに惑わされないように、バランスのいい打牌選択を心掛けたい。
それでは、実戦例から見ていこう。
case1

東4局、2着目の親番。
三者に仕掛けが入り乱れている。
こちらも絶好のカン6mを引いてテンパイ。さて、何を切るか?

5p切りとした。
ドラそばの7mは全員に危険なため、この巡目では切りづらい。
58pのどちらを切るかということになるが、下家がチャンタ系の河であるため、8pの方をケアしたい。
こういう場面で重要となってくるのが、5pでうっかり放銃しないかを吟味することだ。
最もケアすべきは25pとなるが、対面が2pを切ったばかりで現状安全、
さらに6pも4枚見えているため、カン5pに当たることもない。
これぐらいであれば下家のチャンタをケアするに値する場況であると言えるだろう。

あっさりとツモって1300オール。
7mを切っていると下家の純チャンに刺さっていた。

下家の入り目は8pズバリだった。
入り目と当たり牌を止めつつ、ツモアガリに持ち込んでいるわけで、
これこそがスジ切るの醍醐味であると言えるだろう。
case2

南2局、2着目の北家。
手順でドラの9sを切ると、親にポンされてしまった。
私の手はそこそこ整っているが、ここから何を切るか?

6m切りとした。
下家の手役はファン牌バックの線が濃いが、染めではないのでチャンタ系も考えられる。
9mチーと言われると加速度的に手が進む可能性もあると考え、6mの方を切った。
6mチーなら、手役はファン牌などに限定しやすく、こちらも対応しやすい。
一方で、自身のタンヤオ変化の可能性を排除してしまうため、
それによる影響がどのくらいかを考える必要がある。
ここではピンフ主眼の手組みなら、それほど影響はないと考えた。

ピンズが思いのほか伸びて、イーペーコーのテンパイに。
リーチをかけない手組みを目指してソーズは内に伸ばしているので、
これならばOKだ。

上家から出て、1300でかわすことに成功した。

実際はこうだった。
トイトイ含みでアガリまではかなり遠い仕掛け。
牌を開けてしまえば私の6mは過剰ケアだったことがわかるが、
端牌ドラポンにはチャンタ系がつきものであるのも確か。
ドラポンの一声で対面の手が完全に殺されているのも面白い。
case3

南1局、ラス目の南家。
7mを切ると下家がペンチャンでチーして打9p。
3mをツモってきてどうするか?

6mとスライドした。
ラス争いの下家だけに、ここは繊細にケアしたい。
下家の河は序盤から456牌が切られ、はっきりとチャンタの捨て牌相となっている。
やはり重要なのは、下家以外に対し、6mが69mやカン6mに刺さらないかを吟味することだ。
対面上家には9mが通っているし、手出し8mや7mがあり、カン6mに当たる可能性も低そうだ。

5pツモってどうするか?

これも同様。
最終手出しが9pだけに、ピンズの上はケアしたいところ。
上家が2pを切っているのでわかりやすいが、4pが4枚見えにつき、カン5pに当たることもない。

結局、下家から7sが出てきて3900。
この直撃が効いて、最終的には3着に浮上できた。
ケアせずとも結果は変わらなかっただろうが、
似たような場面で3mや8pが当たりとなることもあるだろう。
case4

南3局1本場、供託リーチ棒1本。
2着目上家とは2800点差の3着目。
3sを切るとダントツトップ目の親がペンチャンでチー。

ターツ選択も上手くいき、絶好の三面張でテンパイ。
流れでリーチでもいいが、ラス目がダブ南仕掛け、オリない親の仕掛けも不気味ということで、
確実に着順UPを見込むダマテンとした。
このへんは天鳳的順位戦略だ。

なかなか出てこないまま、6pツモ。
さて、どうしよう?

9pをケアしてツモ切りとした。
親の仕掛けはドラの東が絡んでいる可能性が高いと踏んでいる。
チャンタ絡みで仕掛けられると自身のアガリどころか高打点の放銃まであると考えた。
この6pはラス目の対面に対し危険だが、対面はまだテンパイではないと見ている。

次巡、1mをツモって1300・2600。
最も6p切りの影響のない牌をツモってホッとしている。
この半荘は2着で終えた。

親の手は単なる東バックだった。
親の切り出しからは、チャンタ系が濃いわけではなく、
さらに対面の9pにも反応がない。
7mのアガリでタンヤオがつくことも踏まえると、これは少々過剰なケアだったと考えられる。
ケアしすぎて打点を下げても、次局の上家の逆転条件が楽になってしまう。
リーチでも何ら不思議はない、元々アガリが十分に見込める手だけに、
せめて打点を落とさない打牌選択をしても良さそうだ。
例えば、親がはっきりとチャンタの捨て牌相であったり、9pが生牌だったりした場合は、9pケアの比重が高まる。
このへんは場況からバランスを考えたいところ。
case5

オーラスラス目の南家。3着目の親とは5400点差。
オリ打ちやらいろいろやらかして不本意なラスを引きそうになっていたところ、
ドラの発がトイツになり、逆転条件を満たす手に。
親のリーチ宣言牌でポンテンとなるドラが打ち出され、これをポン。

69mの選択となったが、どちらを切るか?

6m切りとした。
下家が明らかにチャンタの河なので、この9mがチーならともかくロンと言われることもありそう。
親について6mはカンチャンもシャンポンもなさそうで、逆にシャンポンなら9mは当たりうる。

次巡にあっさりツモって、2000・3900のラス回避に成功。
下家にはチャンタのテンパイが入っていた。

選択の場面では下家はイーシャンテンだったが、
9mは十分に危険な牌だったことがわかる。
仮に9mがチーでも、3pを食い取られて止められるため、
ケアに価値のある局面だった。
このように、明らかなチャンタの捨て牌相である下家に対しては、
端よりの牌をケアして内側の牌を切るのが効果的となる。
一方その際は、内側の牌がそれ以外の他家に放銃しないかどうかを、吟味する必要がある。
このバランスを上手く取れるかどうかが、スジ切るにおける成績を分けるポイントであると言えるだろう。