フーロ率が低い私の雀風としては、スルーの技術というのは一つの強みでもあるので、
今後も様々なスルースキルを紹介していきたいと思う。
ただし、フーロ率を下げることによって、
アガリ率とアガリまでの速度を犠牲にしているため、
天鳳のようなラス回避麻雀においては致命的な一手遅れが発生する可能性があり、
このへんのバランスは今後の検討課題となるだろう。
特上卓に比べて鳳凰卓の方が圧倒的に「鳴き無し」の発生頻度は増えるため、
対局時間的にもスピーディな展開が期待できる。
天鳳位のすずめクレイジーさんのように、テンパイ後も鳴き無しを設定しないという打ち手もいるが、
私としては特段鳴く必要のない状況では鳴き無しが有利であると考えている。
その理由としては、ラグによって手牌構成を推測することが可能になるため、
ターツ選択やチートイツの待ち選びなどで有利な方向へと手牌進行することができるからだ。
また、ラグから相手の手牌構成をある程度把握することで、
通りやすいスジを導き出すといった作業も可能となるからである。
突然鳴き無しになったことでテンパイ気配がばれる、
一定の条件下でラグをかけた方が待ちが出やすくなる、
(例えば2345pのノベタン待ちでピンズのラグをかけることで待ちを出やすくする)
などのデメリットはあるものの、
手牌推測できるという要素は大きく、鳴き無しが有利ではないかと私は考える。
少なくとも、ラグをかけてもらえる方が私はありがたい。
ラグによって盲点になる待ちや、
ラグから手牌構成をどのように推測するかなどは、
そのうち記事にして紹介しようと思う。
さて今回は、鳴き無し派の真骨頂と言ってもいい、ファン牌ラグなしからの狙い撃ちだ。
私ぐらいファン牌にラグをかけない打ち手は鳳凰卓でも珍しいのではないかと思う。
鳴き無しの切り替えには、ファン牌を鳴くかどうか明確な基準を自分の中で確立している必要があって、
比較的経験が必要な分野だと個人的には思っている。
読みがしっかりしている鳳凰卓では安易な仕掛けは自身のピンチを招きやすい。
麻雀の「必然性」に鑑みると、ファン牌は一鳴きより二鳴きの方が必然の要素が強い、と最近は考えるようになった。
十年前の私はファン牌一鳴きしないことなどあり得ない、と考えていたのだから変わったもんだなあと思う。
今回の実戦例では、鳴くかどうかのみならず、鳴き無しを設定しているか、という部分も含めて、
あなたならどうするか、を考えていただきたい。
case1

東1局、開局の西家。
下家から白が出たところ。
ドラ9m含みのノベタンのポンテンに取れるが、さてどうしよう?

スルーした(鳴き無し)。
この手はくっつきの受け入れが広く、好形リーチが十分に期待できるため、
わざわざアガリにくいドラ受けにする必要はないと考えた。
同様の理由でスルーする人も多いのではないだろうか。
仮にこのような縦引きでテンパイになったとしても…

鳴き無しなら白が盲点となっているため、喜んでリーチに踏み切れる。
これ、白にラグをかけているかどうかでリーチへの踏み切りやすさが全然違うのではないだろうか。
白ラグを見ていると鳳凰卓レベルではどうしても警戒度が上がってしまう。

不運にも一発で掴んだ上家がそのまま放出。
中盤では手牌がブクブクとなっていやすく、タイミングによっては簡単に出てくる。
白ラグがあったならあるいは止まっていたかもしれない。

重なった5pが裏ドラになって僥倖のハネ満。
白ポンから2000に仕上げるのとでは大差となった。

白ポンでもおそらく6mツモでアガれている。
白スルーはテンパイスピードを犠牲にしているため、上手く行ったのは結果に過ぎない。
ただ、開局でこの手、この巡目なら高打点を見据えて白スルーの方が優っているように思う。
case2

東3局、23400点持ち3着目の西家。
好形含みリャンシャンテンから東が出たが、さてこれを鳴く?

スルーした(鳴き無し)。
この東にラグすらかけないのが私の特徴だ。
ここから東をポンしたとして、アガりやすいと言えるか?私の感覚では決してアガりやすくなっていない。
仕掛けてトップ目の親リーチに被せられたら安牌に窮してアップアップするのが目に見えている。
せめて両面ひとつ埋めてイーシャンテンにしてからポンテンに取りたいというのが感覚だ。
狙い通りにメンツが完成し、ここからならポンテンに取る構え。

間髪入れずにテンパイが入って、これなら即リーチに行ける。
ちょっと前に切られた東にラグをかけていない。
これが盲点になって絶好の待ちになっている。

ほどなく親から出てきて5200。
注目すべきは親の手牌。終盤に現物の9pがトイツであるにも関わらず、東が躊躇なく出てきたというところである。
九段クラスでもノーテンから切ってくる東ということで、盲点となりやすい待ちであることがわかるだろう。
仮にラグがあったなら敏感な打ち手は止めてしまうことも考えられる。

東ポンなら直後に上家からリーチが入り、私の浮いている1pがまんまと当たりになる。
これはたまたまだが、私の感覚は間違っていなかったということだろう。
case3

東2局、原点の南家。
かなりの好配牌をもらったが、何を切るか?

くっつきの広さなら3s切りだが、6p切りとした。
これはコーツ系に寄せる一手でしょう。
目標は三色同刻四暗刻。

南が出たが鳴くか?

スルーした(鳴き無し)。
オーラスなら鉄ポンだが、東場なら鉄スルーというのが感覚。
スルーした結果、テンパイが入ったがさてどうするか?
ドラ切りリーチとした。
ドラを切ってしまうと出アガリでやや打点的に物足りなく、特段アガリやすいというわけでもないが、
ドラくっつきがタンヤオ確定というわけでもないため、妥協気味にリーチ。
このドラに親のポンが入る。長引くとやばいが…

ほどなくツモって、2000・4000。ツモアガリなら三暗刻で十分。
河の情報が少ないので、南を掴んでも止まらないだろう。
親のポンはとりあえずという感じだったが、これでも長引くとどうなるかわからないので一安心。
case4

南2局、14300点持ちラス目の親番。
3着目下家との差は3800点につき、ここで巻き返したいところ。
配牌イーシャンテンから、ポンテンに取れる東が出た。さて、これを鳴く?

スルーした(鳴き無し)。
789の三色やマンズの好形変化が見えるので、ポンして形を決めないの意。
スルーするかどうかはともかく、これを鳴き無しにする人はあまりいないのではないだろうか。
このへんが私のメンゼン派たる所以だ。

東鳴き無しがめちゃくちゃ生きるのがこの即テンパイだ。
当然の即リーチに踏み切る。
他家が東を持っている可能性は高くないものの、山に浅ければ出アガリもかなり期待できる。

東は山に深めだったが、終盤に仕掛けの対面から出て裏なしの3900。
河に中張牌が溢れ、待ちが絞りやすい状況につき微妙だったが、テンパイからはなかなか止まりにくい牌だということがわかる。

ポンテンに取ること自体、別段普通の選択だと私は思う。
7sでさらっとアガリを拾うということも重要だろう。
この場合は7sも山に深く、スルーが結果的には正解だった。
巡目的な猶予があるので、東ポンしてペン7sを払うというのも有力かもしれない。
case5

南3局、32900点持ち3着目の西家。
下2者がやや離れたポジションで、トップとの差は5100点だ。
ポンテンに取るには絶好の西が出たが、さてどうしよう?

スルーした(鳴き無し)。
これは点差戦略だが、ここで1000点をアガっても親が喜ぶだけだ。
せめてテンパイノーテンで捲るレベルの点差までは詰めたい。
巡目的にはリーチをかけるだけの手牌変化も十分に期待できる。
直後にテンパイが入ったが待ち選択となった。
さて何を切ってリーチするか?

今スルーした西を待ちにしてエントツ形に取った。
鳴き無しの西が圧倒的に盲点なのでトップ目からの出アガリも十分に期待できる。

しかし、裏目の方をツモってしまった。
この受けだと赤5mツモを逃す可能性があるのがリスクと言えばリスクか。
とはいえ、赤5mは出ることはないが、西は出るかもしれない。

結果は親と2人テンパイで流局。
親との点差を縮めることができなかった。

25mは山4、47m西も山4と同等だったが、件の西は王牌に沈んでいた。
スルーしたファン牌は残り最大1枚しか残っていないため、山に浅いかどうかというのも重要となる。
盲点となっても残り1枚が王牌に沈んでしまってはどうしようもない。
このへんがこの戦術の弱点であり、1枚目ポンの確実性が優る部分だ。
case6

東3局、20900点持ち3着目の北家。
1枚目の発が出たが、これを鳴くか?

スルーした(鳴き無し)。
北家ということで、トップ目の親に対応する立場。
ドラも見えていないので守備に重きをおいてスルーするのが良さそうだ。

望外にもツモが効き、テンパイが入る。
さて、リーチする?

リーチした。
入り目が1pならシャンポンのダマを選んだが、マンズが先に埋まれば宣言牌がキズにならず、
先切り迷彩の1pもやや出やすい。
このへんは入り目によっても繊細に変わるが、打点が打点なので慎重さを要する。

好手牌の親から飛び出て裏は乗らずの2600。
裏が乗らないと成果はイマイチだが、アガれただけでも十分。
親は浮いている1pと発の2種のうち、発の方を選んでいることからも、鳴き無しが盲点となっていることがわかる。

親は一発で掴んでいたが、安全牌を持っていたことからきわどく止まっていた。
仮に対面が一発で掴んでいたらこれは止まらなかっただろう。
他家にまだやる気のある中盤のうちに当たり牌を掴ませることができれば、結構な確率でアガリを拾うことができる。
仮にラグをかけていればこれの半分もアガれていないかもしれない。
そして、一度これを食らってしまうと、私のリーチに対して1枚切れの字牌が切りにくくなるだろう。
ラグの有無に関わらず、字牌を切らせなくする効果、同じ相手と長く打つ際にはこういう印象を持たせることが後から効いてくるかもしれない。
鳴き無し字牌の狙い撃ち、ぜひお試しあれ。