2019年10月13日

ツモを放棄する鳴き【他家への影響を考える】

引き続き、ツモ放棄の鳴きについて。


前回見てきたように、海底間際のツモ放棄は自身の放銃リスクを回避しながら確実にテンパイを取る手法で、上手く使えば効果は覿面であると言える。

しかし、この手法にもデメリットが存在し、「確実に他家のツモを一牌増やす」というのがそれに当たる。

鳴かなければなんら影響がなかったのに、ふっと鳴いたことにより、リーチに海底を回してツモられるとか、親のツモを増やしてテンパイを入れさせる、などといった自身にとって不都合な二次的影響を与えてしまうことがある。


「鳴き」というのは局面に変化を与えるものであり、その鳴きが不必要であればあるほど、本来なかったはずのアガリが発生するなど、局面に紛れが生じやすくなるというのはみなさんよくご存知だろう。

今回は、他家に与える影響を考慮しながら、そのツモ放棄が本当に有効であるかどうかを考察していきたいと思う。


それでは、ツモ放棄に際して以下に考慮するポイントを挙げたい。

@自身のアガリ目がどのくらいあるか

自身がツモることによりアガリ目がどのくらいあるかを考える。
好形でアガリ目が十分にある場合は、自身のアガリで局を決めるという方が有利だろう。

愚形待ちでもツモでアガれるというのであれば、ツモ放棄をしないことが間違いということはない。

ただし、愚形安手の場合は局収支的にツモ放棄の価値が高まる。

また、愚形高打点でも山に自分の待ち牌がないと推測できる場合はツモ放棄することもある。

要は、打点よりもアガリ確率が重要であり、ツモ放棄の基準はアガリ枚数の多寡で判断していいと言える。


自身が形式テンパイである場合、アガリ目がないのでツモ放棄は必然となる。(ただし、形式テンパイに向かう過程の良し悪しが問われる)

自身がフリテンである場合、出アガリが見込めないのでツモ放棄の比重は高まる。

仕掛けても出アガリが効く手であれば、アガリを消す鳴きよりはツモ放棄の価値は高まる。

結論としては、自身のアガリ目が低ければ低いほど、ツモ放棄の意味は大きいと言えるだろう。


A鳴きによって誰のツモを増やしてしまうか

ツモが増える対象が誰になるかを考える。

リーチ者のツモを増やす場合は、大きな損失を被ると同時に同卓者から顰蹙を買うことにもなりかねない。

鳴きで親のツモが増えると、テンパイを入れさせて、なかったはずの連荘に突入するということもある。

鳴きでラス目のツモが増えると、ツモアガリがラス転落の可能性を高める。

解りやすい基準としては、リーチ者と高い仕掛けにだけはツモを増やさないように工夫する。この点を重視するのが明快だろう。


@の自身のアガリ目とツモを増やす影響を勘案して状況ごとにツモ放棄するかどうかを決める。

例えば、出アガリ含めて役ありの場合はリーチにツモを回す仕掛けは自重し、自身のアガリ目を見る。

自身が形式テンパイの場合はごめんなさいと言いながらツモを放棄する。

リーチが下家の場合は役ありならツモ放棄してもアガリ逃しが発生しづらい。

東場ならツモ放棄しないが、南場なら巻き返しにくくなるので安定性を考えてツモ放棄する、など。



私の経験上、感覚的にはツモ放棄が損になる局面というのは少ない。

特にラス回避の重要な天鳳では無駄な放銃が回避できるという面から効果は大きいと見ている。

海底間際のツモ放棄はできる時にやっておくというのでもそれほど間違いはないかもしれない。

ただし、自分中心が過ぎるといずれ大きなしっぺ返しが来るというのが鳴きの怖さでもある。

麻雀は4人でやるということを弁え、結果に大きな影響を与えるような鳴きは慎むことを考慮に入れたい


それでは、以上の基準を踏まえつつ、実戦例から見ていこう。



case1
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オーラス、23200点持ち3着目の南家。

三者が仕掛けているが、注目はラス目の親の仕掛けか。3m加カンで不退転の構え。

こちらもテンパイが入るが、69m6枚見えにつきダマに。

親の待ちは何だ?


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残り3枚というところ、親から6mが出たが当たれない。

さて、どうしよう?





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チーして安全な西を切った。

これによって、@ラス目の親に海底ツモを回してしまうが、

A69mが残り1枚と自身のツモアガリの可能性が低く、

Bオーラスにつき放銃が順位に占める割合が大きいため、リスク回避のツモ放棄とした。


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結果は下家が3pを親に放銃し、2900。

下家はツモってきた6pを3pとスライドしての放銃だった。

これによって私は2着浮上、そのまま2着で終了した。

ツモ放棄による紛れがいい結果と出たが、これによって親の連荘が止まらなくなるなんてこともあるため、単なる結果に過ぎない。

オーラスに近づけは近づくほど、不確定要素を減らす選択を取るのは致し方ないところ。

3着目の選択としては69m待ちのリーチもありか。



case2
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南1局2本場、12500点持ちラス目の南家。

白ポンから25s待ちテンパイのところ、最終盤に赤5mが出た。

さて、これを鳴くか?





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スルーした。

@自身のツモアガリが十分に期待でき、

A3着目へ海底を回すことでプレッシャーをかけよう、という意図だ。


しかし、ツモアガリとはならず、このツモ。

さて、どうしよう?





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ホンイツ仕掛けの親に対して、どちらかを選べず、ここでオリに回った。


あれ、こんなはずじゃ…


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結果、親と下家の二人テンパイで流局。

下家の最終手出しは8p、ということは最終ツモでテンパイが入ったということか。

ふんだりけったりだ。


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この局面。

現状下家のテンパイの可能性はそれほど高くなく、対面も明らかに回っている。

ここは、食い替えチーして8m切りすべきだった。

@安手のツモアガリよりもテンパイ流局の方が順位戦略的に上回り、

A対面に海底ツモを回すことに大した影響がなく、

B親にソーズが切れないことがはっきりしている

赤で打点を上げるというよりも、流局テンパイが本局の目的ということが理解できていれば、リスク回避できた局面だった。

実は、赤に釣られて鳴いたという印象を持たれたくないというノイズが入って、スルーした結果が最悪のものとなった。

実戦中は様々な思考が入り乱れるが、何が重要かというその優先順位を間違えてしまった失敗例だ。

幸いにもこの半荘は3着だった。上品なスルーと神様は評価してくれたか。



case3
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南1局1本場、23900点持ち2着目の南家。(王牌が開いているがこれは見ないことにして)

3着目の親からリーチが入っている。

海底間際に3sが出たが、さてどうするか?(7sは下家が通している)





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チーして7s切りとした。

@親に海底が回ることはなく、

Aカン6sにさほどの感触がないため仕掛けたが、

B自身が赤赤とそこそこの打点があるのが悩ましいところ。

南場の親リーチということもあり、放銃の影響が大きいと判断した。


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結果は三人テンパイで流局。


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実際には6sは山に2枚と、十分にアガリ目のある待ちだった。

仮にツモ放棄してアガリ逃しがあった場合は、順位にそれなりに影響を与えるアガリ逃しとなろう。


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これは本局の途中経過だ。

タンヤオ赤赤だが、まっすぐ行かずに迂回してリーチに対応する構えを取っている。

対応する構えでテンパイが入っている以上、テンパイ維持の仕掛けは一貫性があると考えることもできる。

このへんの過程をツモ放棄の判断に加えても良さそうだ。



case4
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南3局、23600点持ち2着目の南家。

ラス目の対面がリーチだが、宣言牌がツモ切りだったので私と下家はブンブン押しているところ。

私にメンホンのテンパイが、下家が3フーロでテンパイ濃厚、トップ目の親はベタオリの構え。


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残りツモ1枚というところ、親が現物の赤を切ってきた。

さて、これを鳴くか?





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チーして食い替えの8s切りとした。

@この巡目の発中は持ち持ちもしくは親の手に止められている可能性が高く、アガリ目が薄い。

Aラス目のリーチに対して海底だけは勝負に行きづらい。

B下家の待ちは47mの可能性が高く、掴んだらオリざるを得ない。海底を回したとしてもラス率に影響はない。

海底だけは、という感じでツモ放棄のメリットが大きいと判断した。


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結果は三人テンパイで流局。

対面リーチはチートイツ、下家は予想通り47m待ちだった。


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スルーしても大勢に影響はなかった。

が、私の待ちは山にないのに対し、9sと47mはともに1枚ずつ。

アガリ目がないのであればツモ放棄は正解だと言えるだろう。

ただ、これによってなかったはずのアガリが生まれる可能性があるのが仕掛けの難。

9sツモなら私は6sとスライドできるわけだしね。



case5
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オーラス、42000点持ちトップ目の南家。

10400点持ち3着目の親からリーチが入っている。

親と3着目は競り。

2pを仕掛けてテンパイに取れるが、さてどうしよう?





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スルーした(ラグあり)。

形テンに取る巡目としてはまだ早い。

トップ目としては余裕を持ってギリギリまでアガリを見たいところ。

スルーが生きて、赤5pをツモ。テンパイだが、対応の結果6mがフリテンになっている。


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残り5枚というところ、親から5mが出た。

さて、どうしよう?





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スルーした(ラグあり)。

@海底を放棄し、1s切りで4sツモというアガリ目もあるが、

A2着目のツモを増やして海底を回すというデメリットがある。

6mが切れるならともかく、6m連打ができないのであれば、仕掛けるメリットはそれほどなさそう。

それならば、B自身のツモを減らさず、ひょっこり56mツモに期待しても良さそう。


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残り1枚で、7mが出たが、さてどうしよう?





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チーしてさっき通った5m切りとした。

@海底のリスクを回避しつつ、自身のテンパイが確定する。

A自身のツモアガリ確率は低い。

B下家にテンパイ気配がなく、ツモを回しても大丈夫そう。


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結果、三人テンパイで流局となった。


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仮に5mポンしていると、次の7mツモで困ることになる。

このように、ツモ放棄および形式テンパイは、不確定要素を排除した海底間際でするのが効果的だとわかる。



case6
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オーラス1本場、21500点持ち微差ながらラス目の親番。

2着目からリーチが入って絶体絶命。

ここでは全力の6s切りを選択した。


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巡目的にもやむなしの形テンに。

ひとまずテンパイに向かうしかない。


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終盤になんとかテンパイが入って、上家が通した3m切り。

トップ目が3mを切るということは、上家もテンパイだろう。


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残り2枚というところ、上家から9mが出た。

さて、どうしよう?





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スルーした(ラグあり)。

これは結構迷った。

@ツモを放棄して安全にテンパイに取れるが、

A仕掛けることでリーチに海底を回すことに躊躇いがあった。

海底ツモを許したら一生後悔する、そんなことを考えていたわけだが、持ってきたのは超危険な7s。


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賢明な読者はお分かりの通り、この7sが上家に刺さって12000。

無駄に高いことはさておき、痛恨のラスを喫してしまった。


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9mを仕掛けていても無風で、下家に7sを流すことができていた。

下家は単騎を振り替えられる構えで、7s単騎のテンパイ。四人テンパイの流局に逃げ込むことが可能だった。

残り山を見てもらえばわかるように、当たり牌がうようよしていた。47sは3枚、58mは2枚。

つまり海底を回すことでツモられるリスクは確かにあった。

しかし、この局面で考えるべきはそれよりも、

@自身のアガリ目がゼロなのでツモにメリットがない。

A対面のみならず上家もテンパイ確定なので、放銃リスクが2倍ある。

この2点がBリーチに海底を回すことのデメリットを遥かに凌駕している。

さらに、C対面が海底で上家か私の当たり牌を掴むかもしれない、ということが海底を回すリスクを相殺している。

何が重要かの判断を誤った失敗例だが、一つ言えることは、自身にアガリ目がない場合はツモ放棄のメリットは相対的に大きい、ということだ。



case7
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南3局、21400点持ち3着目の南家。

下家のリーチに対応していると、テンパイが入った。

さて、どうするか?





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赤5mを勝負してテンパイに取り、ダマにした。

放銃確率はそれほど高くないと思ったので。


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ところが、下家が4p暗カンすると当たれない西が出てきた。

さて、これを鳴く?





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スルーした(ラグあり)。

@鳴くことで安全にテンパイを取れるが、

Aリーチのツモを増やしてしまうことになる。

海底ツモでのリスクを負うことになるが、リーチをしていたらロンできている牌。

アガリを逃してこういうのを仕掛けるのは紛れの要素になると判断した。


直後に親から西が合わせ打ちされる。

さて、どうするか?





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ポンした。

@下家に海底つきでツモをプレゼントすることになるが、

A西を切られたことで、自身のアガリ目がかなり薄くなったことを判断基準とした。

ツモられたら最悪だが、それが自身のラス率の低下に結びつくわけではない。


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結果、リーチと私の二人テンパイで流局となった。

下家はドラ単騎リーチという難しい待ちだった。


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私がリーチをしていたとしても、裏は乗らずに2600。

勢いリーチというのもあるが、流局した際のリーチ棒が意外とラス目にとって大きかったりもする。

意外にもドラは山に2枚と強かった。

5pはもう山になく、自身のアガリ目がないのであればこのツモ放棄は妥当だと言えるだろう。



case8
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東2局、23000点持ち3着目の南家。

ラス目の対面が終盤にリーチ。

こちらも役なしダマに構えていたところ、上家から4sが出た。

さて、どうするか?





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チーして、何を切るか?





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海底のリスクを負うので、安全度の高い雀頭のトイツ落としとした。

不安定な部分を捌いて、やや安全なところを勝負する手法。

これが脇への放銃になったらひどいが、このへんは打牌テンポなどから判断していく。


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無事、流局二人テンパイ。

このへんは形テンの取り方にも通じるトピック。


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4sスルーでも無風だった。

@4s3枚切れだけに、自身のツモアガリの可能性が低く、

Aそれだけに不確定なツモを放棄する工夫が必要となってくる。



case9
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南2局2本場、31300点持ちトップ目の南家。

タンヤオのテンパイを入れていたところ、持ってきたのはドラ。

さて、どうするか?





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4pの方がやや安全と見て、スライドするとこれをポンされる。

むむっ。


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残り1枚というところ、上家から4sが出たが、さてどうするか?





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チーして2s切りとした。

@自身のアガリよりも放銃のダメージが大きいので、アガリ目にかかわらず海底のリスクを回避するところか。

放銃で確実に30000点を割ってしまうのが痛いし、A脇のアガリで親が流れることにも期待。


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結果は三人テンパイで流局。


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鳴かずとも無風で、ソーズの変化も安全に凌ぎやすい牌姿。

海底ツモを下家に回しても、河底ロンの可能性は消えていないというのがポイントか。

実際下家の3mは飛び出る可能性があった(待ちは変わった直後だが)。

ただ、これによって親がアガったりするとひどいことになる。



case10
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南1局、16800点持ちラス目の北家。

テンパイが入ってどうするか?





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9s切ってダマにした。

マンズの変化はあるが、この巡目に369mのスジは切りにくいので、36mは切らない前提で。


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親から6mが出たが、これをポンするか?





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スルーした(ラグあり)。

@ほぼ確実にテンパイである親のツモを増やす鳴きである割に、自身の安全度は確保できていない。

Aワンチャンスとはいえ、8sは上家対面に通っていない。

こういうのを鳴くのは、スジが悪い、という。


残り3枚というところ、上家から4枚目の7sが出たが、さてどうするか?





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これを鳴く。

@自身のアガリ目がなくなり、かつ6mが完全なる安全牌に昇格。

先ほどと状況はわずかに変わっただけだが、不確定要素を排除したツモ放棄こそ、「必然の」鳴きとなる。


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二人テンパイで流局。

意外にも親はノーテンだった。


以上のように、判断基準が錯綜しても目的に照らして確かな正着というのはある。

メリットデメリットを天秤にかけてタイミングを見極めたツモ放棄をすることで、自ずと結果はついてくるだろう。



ラベル:天鳳 鳴き 戦術
posted by はぐりん@ at 23:55 | Comment(2) | 鳴き | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする