シンプルだが、非常に汎用性があり、個人的にはかなり重要な内容だと思っている。
難しい牌理についてあれこれ考えるよりは、こういう基本的なことをミスなくこなすことの方が大事だろう。
なぜかというと、出現頻度が多く、結果に与える影響も大きいため、出来不出来が即成績に結びつきやすいからだ。
具体的に、「強い部分」というのは、
・両面
・外よりの受け(23m、78m)
・場に安い色の受け
・場況から山に居そうな受け
・他家が使いづらいと推定される受け(分断形など)
・染め手が使っていない色
「弱い部分」というのは、
・ペンチャン
・内寄りの受け(45m、56m)
・場に高い色の受け
・場にたくさん切れている受け
・染め手が使っている色
のことである。
ペンチャンなどの弱い部分は、889と厚く持つことで、不安定な部分を解消しやすくする。
愚形同士の選択では、より場に安い色を固定し、場に高い色を厚く持つように工夫する。
染め手がいる場合、その色はネックになりやすいので厚く持って最終形を強くするのが基本(危険度との勘案はあるが)。
強い部分を先固定することで、そこが最終形になった場合に、迷彩が効いて出アガリがしやすいという相乗効果も生まれる。
同じ両面でも、端よりのターツを先固定することで、ぐっとアガリ率が高まる。
コツとしては、刻一刻と変化する河・場況に目を光らせ、どの部分が強くてどの部分が弱いのかを1巡毎に精査していくことだ。
それによって、ターツ選択などに迷いが生じなくなり、突然の変化に対しても慌てることが少なくなる。
かなりバラバラな手であっても、強い部分を固定しつつ、ある程度安牌を持ちながら打つことで、安全を確保しながら攻め返す、という手法が成り立つ。
場に見える情報から、シンプルに選択するだけでいいのに、なまじ相手の手を読んだがゆえに選択を間違えてしまう。
これはむしろ上級者にありがちであり、麻雀を理解すればするほど正解率が下がる、みたいな現象も起こりうる。
また、安全度の兼ね合いでシンプルに選べない、というのも上級者が陥りがちな罠だ。
基本の部分をいかに間違えないか、という部分は麻雀の長期成績においては非常に重要であるため、高度な技術論をかじった人も、本記事で今一度確認していただきたい。
それではどうぞ。
case1

東4局、29100点持ち2着目の北家。
嬉しいドラツモで、形が良くなった。
さて、何を切る?

5m切りとした。
対面の仕掛けと4m切りを見ているので、36m、特に3mは強そう。
5mは暗刻からの切り出しにつき、3mは他家が使いづらく、ピンフの含みもある。
ピンズは何を切ってもロスが大きいので、どちらかというと牌効率の要素が強い。
ピンズを「厚く持つ」という思考ができれば消去法でマンズに手がかかる。

テンパイを逃す8mをツモってしまったが、これは想定内。
マンズは三面張とさらに受け入れが広がった。
裏目を牌効率に組み込む、裏目のフォローが利く選択、というのも重要な観点。
ピンズの待ち取りに迷わなくていい、というのは(先制テンパイを逃した手前)言いすぎだが、厚く持った部分でドンと構えることができる。

対面の1000・2000ツモとなった。
裏目っていなければ6p切りで放銃だった、というのは結果論だが、
自身の369mは極めて強く、「強い部分を固定する」ことに成功したと言えるだろう。
case2

南2局1本場、21500点持ち微差3着目の南家。
絶好のカン6sを引き入れて、イーシャンテンになった。
さて、何を切るか?

6p切りとした。
場況がなければ4m切って単純両面固定が優勢ではないだろうか。
5pツモでイーペーコーだし、5pは自分が1枚使っているし。
ただ、さすがに25mが5枚切れとなると弱い認定してもよさそう。
こうなると縦の4mもかなり強いので、厚く持つ意味合いが増える。
2巡ぐらい河を見ていないだけで、パッと4mに手をかけてしまうということは十分にありえるだろう。

嬉しい赤をツモって即リーチ。
ここが入り目なら、どちらを切っても一緒だったわけだが。

これが上家から出て、5200。
ノーテンから出てきたのはやや意外だが、これは大きなアガリとなった。

選択時、南は持ち持ち。
6p4mの縦は山に1枚ずつで、25mが山2、25pが山3につき、「強い部分」は25pで正解だった。
こういうわずかな差を間違えないことが長期的には重要だったりする。
case3

東4局、32800点持ち2着目の親番。
ターツオーバー4トイツで、やや捌きの難しい手。
ここから何を切るか?

8s切りとした。
安全度まで含めると難しいところだが、3sがパタパタと切られたので。
最終形も69sの方が強そうなので、その部分を固定した。
4sも後々かなり危険度が高いので、先切りする手はあるかもしれない。

薄い3sをツモって、手順で4sを処理できる。
こうなるとにわかにアガリが見込めそうになってきた。

2枚目の白をポンテンに取った。
狙い通りの69s受け。
前巡の9sスルーが俺流で、焦らずにアガリを見据えている。

ドラをツモって2000オールGET。
限りなくベストに近いアガリではないだろうか。
手順が違っても同じアガリ形だった可能性は高いが、69sの先固定によりグッとアガリやすさが増していることがわかるだろう。
case4

南3局、45500点持ちトップ目の西家。
チートイツも視野だったが、ズバリのカン7pが埋まった。
さて、何を切る?

トイツ手を見切るのであれば、シンプルに両面固定でいいだろう。
5sのロスはさほどでもなく、3m周辺の好形変化にも活路を見出すことができる。
当然ながら678の三色が本命。

2sをツモってイーシャンテンとなった。
何を切るか?

8s切りとした。
愚形同士の強さ比較。
場にはマンズが高く、ソーズが安い。カン7s待ちになった場合はかなり拾えそうな場況となっている。
8sが1枚出ていることはソーズが安いだけにあまり関係ないが、
安全度からカン7mに決めてしまうのはやや損が大きいと考える。
4mツモの好形変化もあるし、カン7mが強い保証がどこにもないので、アガリやすさに疑問符がつくからだ。

狙い通りに7sを引き込み、打点十分の最終形に。
明確に危険な河がいないため、ここはある程度目いっぱいに構えてもよさそう。
トップ目だからこそ、きっちりアガって局を潰したい。

すぐに出て8000となった。
マンズは厚く持たれていて、36mは山にゼロだったが、3mポンの余地があった。
3mポン時の最終形がカン7sかカン7mかでは結構な差があるので、愚形でも強い部分を固定することは重要だとわかるだろう。
case5

東2局3本場、24800点持ち2着目の南家。
東ポンの仕掛けを入れているところ。
3pをツモってきたが、何を切るか?

3pは強そうに見えるので残したくなるが、ツモ切りとした。
牌効率的にはいずれかのカンチャン固定が広い。
アガリ優先であれば、発にこだわる必要もない。
場況からピンズの下がダダ安につき、2pは固まっていない限り出やすいはずだ。

場に高い方のソーズが先に捌けてテンパイ。
この最終形ならかなりアガれそう。3p先切りもあるし。

すぐに出て、1000は1900。
2pは誰の手にもなく、山4と強かった。
ちょっとアガリが遅れると、親のドラドラや下家のメンチンが間に合ってしまう可能性があるため、何気ないが大きなアガリではないだろうか。
こういうのを間違わずに捌く、というのが現代のスピード麻雀ではかなり重要だと思う。
case6

南1局、43500点持ちトップ目の南家。
超十分形イーシャンテンだが、ここから何を切るか?

9p切りとした。
147pはかなり強そうなので、通常はこれで問題ないだろう。
あるいはマンズや2sを仕掛けて一通のテンパイに取ることもできる。

安目でテンパイ。
役はあるものの、親の2フーロ目が間に合ってしまった。
さて、どうしよう?

取ってダマにするもこれがアウトで、11600(´・ω・`)
危険度を勘案しなければならないのはこういう時。
親はマンズが濃く、自身はトップ目につき、3mは先に処理しておくべきだったか。

2sポンなども脳裏によぎって3m先切りに踏み切れなかったが。
このタイミングで3mを切るのがバランスだった。
「厚く持つ」部分は危険度が高い傾向もあるため、その見切り時も重要となる。

3m先切りなら、おそらく先にこちらのアガリがあっただろう。
この放銃で混沌としたものの、なんとかトップを死守することができた。
case7

南1局、16500点持ちラス目の西家。
ドラ3の大チャンス手で、是が非でもものにしたい手。
7pツモったが、ここから何を切るか?

6p切って両面固定とした。
テンパイチャンス的にはMAXではないが、強い58pを固定して、ソーズは流動形とした。
場況的に3s2sあたりも強そうなので、そのへんが伸びればさらに広くなる。
あとは、7s9sの縦引きも魅力。

なかなかテンパイが入らないまま、無情にも6s8sが場に3枚ずつ。
かなり景色のいいソーズだっただけに暗雲立ち込める。

2sをツモってきて、ここで9sを払う。
カン8sが残り1枚、カン3sが残り2枚につき、枚数重視で。
6sツモった時の形が強いので、一応9sから。

おお、こちらが先に埋まるなんて。
まんまん満を持してリーチ!

親が一発で突っ込んできて8000。
これは上手くアガリをGETできたぜ。

ここでの選択が功を奏した。
テンパイチャンスを重視しているとアガリはない。
強い58pを固定して、形の弱いソーズに柔軟性を持たせることで、後の状況変化に機敏に対応できた。
このように、強い部分を固定し、弱い部分の受け入れを広げることで、二次変化、三次変化を見込むことが可能となり、手牌に柔軟性が生まれる。
これによって、本ケースのように突然待ちが枯れてしまうような状況変化に対しても、臨機応変に対応できる。
この場合のソーズは弱い部分ではないが、変化に優る形であれば、テンパイチャンス重視よりも厚く持つメリットの方が大きいこともある。
弱い部分を厚く持つことは、流動性を広げるということ、それすなわち状況変化に対応しやすくなるということ。
千変万化する状況に対応力を持たせる、これが重要なのは現在のコロナウイルスに限ったことではないとわかるだろう。