2020年11月08日

ドラを大事にする手組み

今回はオーソドックスにドラの扱い方がテーマだ。


一昔前、昭和時代の麻雀においては、ドラはとかく丁寧に扱い、ギリギリまで引っ張ることが是とされていた

赤のない時代におけるドラ1枚の価値は今よりもはるかに大きかった。

不用意にドラを鳴かせることはゲームの興を損なうものとして嫌われる風潮もあった。

当時の麻雀は全体の調和を重んじ、「魅せる」「愉しむ」ことが重視されていた。個々人の実力にも格差があった。


一方、赤麻雀が普及した現在は、相対的にドラの価値は減少した

科学的麻雀観が台頭し、鳴きを含めた技術が飛躍的に進歩した。

勝利至上主義が叫ばれるとともに、責任論といった類の倫理観が消滅した。

現代麻雀はゲームとして純粋に強さを追求する「個人主義」、そして他者に規範を押し付けない「自由主義」に裏打ちされていると言えるだろう。


かなり昔の話になるが、東風荘で打っていた時のエピソードがある。

私のモロ引っかけリーチに暗刻落としで放銃した人が、「卑怯者!」とチャット欄で罵ってきた。

それは冗談ではなく本心から怒っている様子で、突然のことに私はあっけにとられた。

観戦していたその人の知り合いがなだめてくれて収まったが、私はこう思った。

ただ普通に打っているだけなのに、なぜこんな嫌な思いをしなければならないのだろう、と。


今はモロヒを批判する人などいないし、ドラを切って鳴かせても文句を言う人はいない。

当時はゲームを楽しむための精神的土壌が未成熟だったためにこういうトラブルは頻繁に起こった。

技術が向上し、Mリーグが発足していく過程で、一般人の麻雀に対する心構え、他家に対する作法のレベルも確実に向上していった。

これは、不快な思いをすることなく安心して麻雀を楽しめる環境が醸成されたという意味で、喜ぶべきことではないだろうか。


前置きが長くなったが、本題に戻ろう。

赤が普及したとはいえ、ドラの扱い方はいつの時代も頭を悩ませるものである

「ドラは恋人」と言ってみたり「ドラは出世の妨げ」と言ってみたり格言も様々だ。

私はドラを引っ張る方だが、引っ張りすぎて痛い目を見たこともしょっちゅうある。

ただ、早すぎるリリースは臆病さが伝わったり河を逆用されたりしてこちらの方が良くない。


現代麻雀では守備の意識が高く、ドラを引っ張り過ぎるのはやや損という考え方が大勢となってきている。

引っ張って放銃するリスクと自身の手が死んでしまうデメリットの方が大きいという考え方である。

体裁よりも実利を重んじる現代麻雀の特徴が表れていると言えよう。


今回はこうしたドラの切り時を踏まえた上で、孤立ドラの扱い方について触れてみたい。

ドラは基本大事にするが、大事にしすぎない。

この間(はざま)の中で、ドラを手牌に組み込む工夫をどのようにするのか。

ここには、かなり難しい何切るの分岐を含んでいることが多いので、実戦例で確認していただきたい。

それではどうぞ。



case1
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東3局1本場、22700点持ち2着目の親番。

急所のペン7sが埋まってやる気が出たところ。

様々な手役が見えるが、浮いている北はドラ

さて、ここから何を切る?





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2p切りとした。

雀頭をひとまず決めて、一通とチャンタの天秤に。

これだと123の三色は消えるが、そのハードルは高い。

ドラ単騎まで見るなら4m切ってチャンタに決める手もあるが、やや受け入れが狭い。

総合的なバランスを重視した。


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2mをツモってイーシャンテンになった。

さて、どうしよう?





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ツモ切りとした。

これを残してイーシャンテンに取る意味はほぼない。

最終形を大きく見つつ。


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8pをツモってきて、ここで4m切り。

手広くドラ切りとする手もあるが、はっきりと高打点の見えるチャンタに手役を絞った。


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粘った甲斐があり、ドラを重ねることに成功。

これで仕掛けても十分。三色を重視しての3s切り。


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上手くくっついて、789三色が視野に。

迷う形だが、ここから何を切る?





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1pトイツ落としとした。

ターツ落としは選択に裏目が生じて選びにくい。

三色ならチーテンで11600が確定するし、わりと鳴きやすそう。


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惜しくも安目を引き入れてしまったが、これでも十分なテンパイ。

即リーチに踏み切る。


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長引いたが、自身最後のツモで見事引き当てる。3900オール。

このアガリが効いてこの半荘はトップで終了。

何気ないが、丁寧にドラを生かす手順を模索したことが結実した。


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下家の手をご覧いただきたい。

ここでの選択もさることながら、手順前後によってはあっという間にアガられていた可能性があった。

難なくアガっているように見えても、その実結果は紙一重であったことがわかる。



case2
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東3局1本場、41600点持ちトップ目の親番。

ピンフと三色の天秤に構えていると、持ってきたのは生牌のドラ。

さて、何を切る?





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9s切りとした。

リャンシャンテンに戻すターツ落とし。なかなかオリジナリティのある一打。

8sがパッと見悪いわけではないので、ここを嫌うとなるとアガリが結構遠のくようにも見える。

ただ、25mが先に入ったところでのみ手のリーチは敢行しづらいので、それならば先に払っておくのもありか。


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工夫した甲斐あり、ドラを重ねることに成功。

これであとは一本道。


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ほどなくテンパイして即リーチに。

ドラを切っていてもタンピン三色になっていた。


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対面の追っかけが入るも、無事にツモって3900オール。

おっと、三色なら高目の方か?

工夫した結果、打点が安くなるというレアケースになってしまった。

トップ目だからこそアドバンテージを生かして伸び伸びとした手組みを心がけたい。



case3
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開局の北家。

4sに5sがくっつき、ソーズに両面ターツができた。

ポツンと浮いている8mは、ドラ。

ここから何を切る?





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2m切りとした。

雀頭不在につき、ピンズの好形には手をかけられない。

タンヤオの構成ターツを払うのはやり過ぎにも見えるが、ワンチャン678三色も見据えつつ。


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ところが、下家の親から先制リーチが入って、完全手詰まり。

ここで何を切るか?





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やや安全な3p切りとした。

まっすぐなら6p切りの方が風通しはいいが、いかんせん浮いているドラが切れない。

こうなると浮かせたドラが足枷となって、自身の手が死に体となってしまう。


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9pをツモってイーシャンテンとなった。

まっすぐならドラ切りだが、さて何を切る?





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ドラ切りを保留してスジを追うと、これがまさかの当たり。

カンチャンにぶっ刺さって痛恨の12000となってしまった。

ドラを突っ張る価値のある手でもなく、この放銃はある程度致し方ないようにも思える。

が、実戦中はドラを引っ張った後悔の念にあふれていた。


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9mが2枚見えているので、ドラを切ってしまうのも普通。

捻った選択が裏目と出てしまったが、ドラをギリギリまで引っ張ることは常にこういったリスクがつきまとう

こういう失敗は、後の判断に影響を与えやすく、手が縮こまってしまいがちだ。

が、あくまでトータルで見ていく必要がある。

この失敗を自身の中でどういう位置づけにするのか反芻すること、これは成功例を振り返るよりはるかに重要な作業だろう。




case4
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東1局1本場、44000点持ち現在ダントツの親番。

好手からダブ東がポンでき、盤石のイーシャンテンに。

さくっとアガれそう。


68915.jpg

くっつきに構えていたところ、ひょっこりドラを持ってきた。

特別ドラにこだわる局面でもないが、ここから何を切る?





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ドラを残して7m切りとした。

9mが3枚切れたことも加味しつつ。


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立て続けに持ってきて、これはビンゴ。

ドラを河に並べるところだったぜ。


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そして下家から温存されたドラが出てきた。12000。

1枚のドラの行方によって結果は180度変わるのが麻雀の難しいところ。

リードしていても貪欲に打点を追うことで、本局のようにリードをゆるぎないものにすることができる。



case5
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東4局、36000点持ちトップ目の親番。

チャンス手のリャンシャンテンから、8s引きでソーズのメンツが完成した。

345も見える十分形だが、余った3sはドラ

さて、どうしよう?





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3p切りでお茶を濁した。

ポンテンの2900にはそれほど魅力を感じないので、三色に固定しながら、ドラ周辺を伸ばす可能性も見ている。

仕掛け二者には直ちにドラでロンと言われることはそこまでなさそうだが、ドラを鳴かせてしまうと非常にやりづらくなる。


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次巡、1sをツモってきた。

さて、どうしよう?





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ピンズを落としてドラを使い切る算段とした。

表示牌受けは一抹の不安もあるが、これでドラが出ていくことはなくなった。

仕掛けの機動性よりも受けを意識した手順だ。


52361.jpg

結果、下家がドラをツモって1000・2000。

うむうむ、そうだろうそうだろう。


52362.jpg

上家の手をご覧いただきたい。

手順でドラを河に放っていると、5200の放銃となっていた。

これはたまたま助かった例だが、このぐらいの巡目だと仕掛けに対するドラ切りのリスクはそこそこ高いと認識できる。

もちろん、引っ張れば引っ張るほど切り出す際の危険度は高まるわけだが、切り出しを保留しつつ使い切る手順を模索することは、相手に先に仕掛けさせないという点で勝負を長引かせることができる。


時代の変遷とともにドラの役割も変化しつつある。

その中で、ドラを大事にする意識、ドラを大事にしすぎない意識。

両者をバランスよく保つことが現代麻雀では求められていると言えるだろう。



ラベル:天鳳 ドラ
posted by はぐりん@ at 09:37 | Comment(4) | 攻撃力UP | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする