2015年12月13日

タイトル戦の鳴きの怖さ 十段位決定戦より

今号の近代麻雀(2016・1・1号)の付録のDVDに、
第32期十段位決定戦の最終戦が収録されていた。

今回はそれについての所感を述べていきたいと思う。
ネタバレ含むので、まだ見ていない人はこれを見る前にコンビニにGOだ(`・ω・´)キリッ


最終戦を迎えてトータルポイントは以下の通り。
櫻井秀樹  +48.2
藤崎智   +29.6
柴田吉和  + 5.5
野方祐介  −13.3


見どころは、現ホルダーの櫻井が首位で迎えて連覇なるか、
昨年鳳凰位を獲得してノっている藤崎が最後に捲りきるのか、というところ。

一発・裏ドラなし、沈みウマ方式の連盟Aルールなら、
この二者がかなり有利であるのは間違いない。


個人的には、タイトル最終戦だけに、
この四者がどれくらい平常心で打てるかというところに注目した。

条件戦だけに普段通りではないのだけれど、
焦った着手をしない、という意味での平常心であり、
こういう点では数々の修羅場をくぐってきた藤崎に一日の長があるだろう。


私が上位二人の立場なら、一牌も鳴かなくてもいい、ぐらいのつもりで打つ。
それぐらい仕掛けによるミスは致命的なものになりやすいと思っているからだ。

ベテランの藤崎プロがどのような打ち方をするのか、非常に興味を持って見た。


★東2局 7巡目 北家藤崎

東東東一索四索四索六索七索八索三萬三萬三筒三筒
ドラ
六索

東1局に櫻井が3900の放銃で沈み、顔色が変わった藤崎。
上家から出た3pをここからポン。


「単独トイツは仕掛けて良し」より、このポンは妥当だ。
テンパイに取りつつ、マンズもソーズも好形変化に富んだ形となっている。

次巡、ドラの6sを引き、当然4s切りのカン5sに受ける。

東東東四索六索六索七索八索三萬三萬ポン三筒三筒三筒
ドラ
六索

すぐに、上家から7sが出たが、どうしよう?
(藤崎の捨て牌には9sがある)





私の第一感はこの食い延ばしはスルーなのだが、藤崎は機敏にチー。

東東東四索六索七索八索三萬三萬六索

藤崎はこの順序の牌列から、一番右の6sと右から4番目の8sをつまんでカン7sのチー。

並びを崩している上、ノータイムだったので仕掛けを想定していたというのがわかる。

しかし、打牌が4sということになると、隙間が2ケンずつとなる。

裏裏裏四索裏裏八索裏裏六索

相手から見ると、牌の出どころはこのように見える。

切り出した4sと8sの間が2ケン、チーした6sと8sの間が2ケンであり、
どこからどう見ても、その間のソーズが匂う鳴き方となっている。

しかも4sのトイツ落としであるため、単純な468sからのチーではないという疑問を抱かせる。

藤崎は4sと9sを切っているので、これは58sが100%マークされる仕掛け方だ


この仕掛け自体は正当性があるが、
仕掛けを前提にするなら、もう少し読まれにくい牌の並びにするべきではないかと私は思った。

いわゆる飛ばし鳴きにしてしまうぐらいなら、鳴かない方がいい、そんな直観が働いた。


この仕掛けによって、野方に絶好のカン7sが入り、即リーチ。
14巡目にカン2mをツモって、2000・4000。

三索三索六索七索八索一萬三萬四萬五萬六萬七萬八萬九萬
ドラ
六索ツモ二萬

この結果は藤崎にとってはそれほど悪いものではないが、
私の感触としては、今日の藤崎は出来がいまいちだな、と思った。


★東3局 7巡目 西家藤崎

七索九索東一萬二萬三萬四萬六萬七萬八萬九萬九萬九萬
ドラ北

次局、西家の藤崎がこの牌姿。
7巡目に上家から5mが出たが、さてどうしよう?(東は生牌)





私はこれはスルーする。
カン5mで鳴いてしまうとマンズが分断されて横伸びがしにくくなる。
先にカン8sツモでも一通で十分だし、東の重なりも見られてスルーの方が柔軟に見える。

藤崎の選択は、チー。

七索九索東一萬二萬三萬七萬八萬九萬九萬九萬
チー
五萬四萬六萬ドラ北

そしてここから、打7sとした。

一通で局をかわす選択肢を見ずに、一直線にマンズの染めへ。

テンパイに取りつつ、チンイツに渡れるため、普通は東を切りたくなるところだが、
なるほどこの辺は藤崎らしい。

打点が見込める局面ではきちんと手筋を追うということか。

ドラが北なので相手に対応させるということや、
一発・裏ドラのないルールであるということも考慮にあるのだろう。

ただ、いつもの藤崎より仕掛けるのが一手早いかな、という印象がある。


東東一萬二萬三萬七萬八萬九萬九萬九萬チー五萬四萬六萬
ツモ
東ドラ北

この局は、残した東が重なり、藤崎が15巡目に2000・3900のツモあがり。

中途半端にテンパイを取らなかったのが見事で、最高の結果を生んだ。

これは藤崎としてもかなり手応えのあるあがりだったに違いない。
このあがりで現状、藤崎がトータルトップへ。


★南2局2本場 4巡目 北家藤崎

三索七索八索三筒四筒八筒八筒八筒六萬西中白白
ドラ
一索

柴田の連荘で迎えた2本場、藤崎は33700点で浮きの2着をキープしている。

4巡目、対面から白が出たが、さてどうしよう?





親のツモを増やす北家の仕掛け、かつ河に1pを被っていて、かなり怖いところだが、藤崎はポン。
8p周りが雀頭として機能しそうだし、
一発・裏ドラのない連盟ルールでは安手リーチが隙になることも踏まえると、
この白ポンは妥当な仕掛けだろう。


ただし、白をポンしたからには絶対にあがり切る覚悟で鳴くわけで、
腹を括っていくという意味では仕掛けも安手メンゼンも変わりない。

この局面ですらスルーの選択もあると私は思う。


七索八索西西二筒三筒四筒八筒八筒八筒ポン白白白ツモ六索ドラ一索

この仕掛けが奏功し、あっという間にテンパイが入った藤崎、
12巡目に6sツモで300・500。

これは非常に上手くいったパターン。

柴田の愚形リーチが2テンポぐらい遅かったのにも助けられた。

テンパイ即リーチなら、藤崎は4sを掴んでどうしたのかを見たかったが、
おそらくこの局はゼンツでぶつけるような気がする。


★南3局 西家藤崎 9巡目

一筒二筒三筒三筒三筒四筒四筒五筒二萬二萬五索七索七索
ドラ
二索

いよいよトップ目にたった藤崎、9巡目に上家から出た4pで考えている。

これは・・・?





一筒三筒三筒四筒四筒五筒二萬二萬五索七索七索
チー
四筒二筒三筒


えっ、なにこれ…?(;^ω^)



なんと藤崎はここから23を晒してチー。しかも5sを切った。


あまりに衝撃的で、何が起こっているのか一瞬わからなかったが、
これは、単なる食い替えということなのか。

連盟Aルールは、現物以外の食い替えありなので、まっすぐなら1p切りでいいはず。
それなのに、効率を犠牲にして5s切り???

それだったら、ピンフテンパイになるカン6sの受けを残して仕掛けない方がよっぽどマシだ。
場況からは6sも7sも良く見えるので、ここの受け入れを狭める理由が見当たらない。


しかもだ、1pを切らないということは食い替えを見せたくないということなのだが、
それならば、カン4pでチーして1pを切るべきだろう。

二筒三筒三筒四筒四筒二萬二萬五索七索七索チー四筒三筒五筒

カン4pでチーすれば食い替えを見せずにタンヤオに渡れる。


これは、私の勝手な想像だが、
藤崎ほどの打ち手が少考してカン4pチーに気づかないとは思えない

おそらく、藤崎は先ほどのカン7sチーのような、飛ばし鳴きになるのを嫌ったのではないか。

考えての2ケン飛ばしカン4pチーでは、25pが透けてしまうので、
咄嗟に23pを晒す手順に変更した、と。

しかし、やはり1p切りでは食い替えが透けてしまうので、5sを切った、と。
これなら少考からの思考過程に納得がいく。


普通に考えれば、この手順の仕掛けは効率的にロスが大きすぎて、
鳴かない方が得だったというのは藤崎もすぐに把握したはずだ。

ただ、止まってしまってからの一連の行為というのは、
藤崎クラスでもタイトル戦の決勝というのがいかに平常心を保てない場なのかということを表している


そして、それを生んだのは何かというと、
藤崎の今までの仕掛けに、何か引っかかる部分があったからに違いない。

振り返った時にピンと来るのがやはりあのカン7sの鳴き方で、あそこに伏線があったのではないか、と私には思えるのだ。


この仕掛けによって、11巡目、まず親の野方にテンパイが入る。

一索二索三索三索四索一筒二筒一萬二萬三萬五萬六萬七萬
ツモ
三索ドラ二索

三色が確定する急所の3sツモで、野方は即リーチ。


仮に4pをチーしていなければ、この同巡に6sをツモって藤崎、以下の先制テンパイが入っている。

一筒二筒三筒三筒三筒四筒四筒五筒五索六索七索二萬二萬
ドラ
二索

さらに、13巡目に、南家の櫻井もテンパイ。

四筒五筒六筒七筒八筒九筒三萬四萬二索二索三索四索南
ツモ
五萬ドラ二索

当然の追っかけリーチに踏み切る。


四筒五筒六筒七筒八筒九筒二索二索三索四索三萬四萬五萬
ツモ
五索ドラ二索

結果はなんとなんと、櫻井が一発ツモ(一発はつかないが)。

ラス目の櫻井が満貫をツモあがったことにより、藤崎は一気に同ポイントにまで並ばれてしまう。


藤崎の仕掛けがどのように作用するのかに注目が集まったが、
麻雀の神様は非情で、最も咎められたくない相手に咎められてしまった。


「くだらない鳴き、必然性のない鳴きは自分以外の他家に利する」
これは鳴きのデメリットの項目で私が主張してきたが、
タイトル戦決勝クラスではこういうミスは致命的になりやすい。


藤崎は体勢論者でもあり、仕掛け倒れを大変に嫌う打ち手だと私は認識している。

それは、仕掛けの怖さを知っているということであり、
よもや藤崎がこのような仕掛けをするとは思わなかった。

それは同時に、タイトル最終戦というもののプレッシャーがどれくらい重いものかというのを如実に物語っている。

さらに言うと、仕掛けのリズムが藤崎のペースではなかったからこそ、
最後の最後に間違えてしまった、ということもあるのだろう。

普段通りに打つ、ということはかくも難しいことなのだ。


★南4局 西家柴田 13巡目

東東南西北白發中一萬九萬一筒一索九索
ツモ
九筒ドラ五筒

そして、生まれた柴田の劇的な国士。


藤崎の仕掛けに、オーラス櫻井の手組。

このヒューマンエラーが重なって生まれた大逆転劇で、
勝負の結末としては、非常に面白く、興味深いものとなった。

国士のバラバラな手牌にあって、東南西北と整然と並べられた最後のあがり形は、
藤崎・櫻井両者の乱れた心情と、柴田の澄み切った心情のコントラストにも映り、
この半荘を象徴しているかのようだった。


五十嵐毅プロをして、最強の打ち手と言わしめる藤崎プロ。
ただで終わる男ではない。今後の奮起に私は期待しています。



ラベル:評論 鳴き
posted by はぐりん@ at 13:16 | Comment(0) | 天鳳 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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