2020年06月07日

赤を引いたら最終形

前原雄大プロの著書に以下の記述がある。

 そしてベクトルというものがあるならば、赤牌は手役やドラよりも高いエナジーを感じるのである

 もちろん、ご祝儀という現実的な実利の面もあるが、それ以上に赤牌の存在そのものに高いエナジーを感じているのである

出典:前原雄大『前原雄大の勝ってこそ麻雀』MYCOM


これは前原プロのかなり昔の著作だが、現在Mリーグでも活躍している前原プロだけに、
Mリーグでの赤の扱いを見ていれば、根本にはこの考え方があることがわかるだろう。


物理学には、『エネルギー保存の法則』というものがある。

これを簡単に説明すると、「エネルギーはいろいろな種類があって姿を変えるけれど、総量は不変である」という法則のことである。


これは、麻雀にも当てはまるのではないだろうか?

一局に利用できるエネルギーは、34種136枚の麻雀牌のみ。

それが均等に四者に配られているため、全員が使用できるエネルギーも均等で差がない。

総量不変で、有限のエネルギーをどのように利用するのかは、参加者の創意工夫にかかっている。

そこからどのような発想で、エネルギーを有効活用するか、というのは物理学に限ったことではなく、麻雀においても重要な要素となってくる。

以前私は、麻雀を打つことは音楽を奏でることに似ている、という記事を書いたが、ひょんなところで物理学にも似ている、ということを発見してしまった。

このように考えていくと、麻雀はすべての学問、すべての道に通じる部分がある、という深い思想を内包しているような気がする。


やや話が脱線してしまったが、つまり、一局における卓上のエネルギーが不変であるなら、赤1枚をツモることによる価値をどのように考えるか、ということである。

自身にエネルギーが満ちている時は、相対的に他家のエネルギーが減少している、これは先の法則より明らかだ。

このことからも、自身の攻守判断にエネルギー量を組み込んでいくことはある程度有効なのではないだろうか。

赤5を有効牌としてツモった場合には攻めの比重を高めることが必然になる、ということである。


資源が限られていることを自覚し、それを有効活用する工夫が求められている時代、それは決して麻雀だけではないだろう。

過去に例を見ない疾病に脅かされている今だからこそ、今一度、天然資源・食料資源のありがたみについて考えるきっかけにもなるのではないだろうか。

それでは、実戦例から見ていこう。



case1
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東2局、28600点持ちトップ目の南家。

現状、好形2種のイーシャンテンだが、役なし安手でドラの白がポツンと浮いている

仮に先制しても、攻め返されると不安が残る状況と言える。


43992.jpg

ずいぶん長引いたが、終盤にテンパイとなる赤5mを引き込む。

ドラの白はすでに場に現れていて、こちらも処理済み。

さて、どうしよう?





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リーチした。

こちらの危険スジがあまりにも見え見えな上、58s自体がさほど強そうにも見えないため、赤じゃなければやや迷うところ。

ただ、持ってきたのが赤となれば話は別。

対面の仕掛けによる赤ツモであることも、その後押しとなる。

エネルギーのあるツモだと思えば、ここはリーチの一手だろう。

仮にこれが最終盤だったり、58sがあと2枚ぐらい見えていたとしても赤ツモならリーチでいいと思われる。


43994.jpg

ほどなくツモって、裏1の2000・3900。

裏が1枚乗るだけで、勝負手に化ける。これが赤1のリーチ効率だ。

なんでもないのみ手が、赤1枚のツモで様変わりするということも珍しくないため、赤引きの好形テンパイなら何も考えずに即リーチすることをオススメしたい



case2
44511.jpg

開局の西家。

中盤も深くなって、ピンフのみでテンパイが入った。

場にはまだ動きがないが、さてどうしよう?





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ダマに構えた。

場況は見ての通り煮詰まっており、ドラの東が見えていないのが気がかり。

ピンズは場にかなり高く、リーチをかけてしまうと47pはまず出アガリが見込めない。

上家から4pが出たばかりというのも、ダマで拾うにはいいタイミングに映る。

マンズが山にいそうで、456の三色変化もわりと現実的ではないかと思っている。



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次巡、持ってきたのは色つきの5s。

さて、どうしよう?





44514.jpg

振り替えてリーチとした。

赤ツモにより、かわし手から勝負手へ昇格したという認識。

元々ツモアガリも期待できる待ちだけに、打点効率を考えたらここはリーチが効果的だろう。

対面の親の仕掛けによりもってきた赤というのも流れエネルギー充填でリーチ発射最大化要因か


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しかし、下家がドラ単騎チートイツツモで、2000・4000。

感触のあるリーチは見事に空を切った。

も、親の仕掛けがなければまず間違いなく私の放銃だっただけに、むしろ助かったと考えられる。

その点を踏まえると、リーチまでの一連の流れは間違っていなかったと言えるだろう。



case3
58986.jpg

開局の西家。

上家に仕掛けが入っている以外は無風。

テンパイが入ったが、役なしドラなしの愚形待ち。

さて、どうしよう?





58987.jpg

テンパイに取って、ダマとした。

取らずに5pくっつきを待つのは不安定で、得策ではないと判断した。

ドラも赤もまったく見えていないため、攻め返された時のリスクが大きすぎる。

ひょっこり7sツモればそれでよし、他家に動きが入ったら対応の余地を残す。


58988.jpg

次巡、持ってきたのは赤5p。

さて、どうしよう?





58989.jpg

ここでリーチに踏み切った。

赤1ならリーチによる打点効率が上がるため、見合うという判断。

上家以外は河が大人しく、即攻め返されるという雰囲気でもない。

私自身の河もまずまず強いので、リーチは抑止力にもなりうる。


58990.jpg

あっさりとツモで決着。

ドギマギする暇もないのはありがたい。


58991.jpg

裏1があまりに大きい、2000・3900。

赤1の優位性はまさにこれにある。

リアルなら2枚オールということで、半荘の収支を決定づけるアガリにもなりうる。

赤ツモの得点加速度を最大限利用した例だが、テンパイ取らずだとこれが効いていないため、一旦テンパイに取っておいて赤ツモの変化を待つ、というのも戦略的にありだということがわかる



case4
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東1局2本場、21900点持ち北家。親が連荘中。

一応テンパイしたが、さて、どうしよう?





61829.jpg

8m切って、取らずとした。

これは678の三色があるし、8m9pが1枚ずつ場に見えていることから、ほぐすのが基本だろう。

タンヤオ主眼の9pトイツ落としもあるが、ダイレクト678三色を逃すのと、マンズの横伸びで一手遅れになるため、8m切りの方が懐が深い。

特に、ドラツモの愚形テンパイが役ありになるのが大きい。


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次巡、持ってきたのは赤5m。

待ちとしてはイマイチが継続しているが…

さて、どうしよう?





61831.jpg

ここでリーチに踏み切った。

取らず続行や、ここで9pトイツ落としなど、選択肢は多岐に渡る。

マンズの横伸びは期待値がかなり高そうで、即リーチはためらわれるところ。

一方、対面の切り出しから5mはわりと狙い目につき、赤ツモのエネルギーを重視して、ここがひとつのリーチタイミングだと考えた


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手詰まりに陥った対面から9pがこぼれてのアガリ。

もちろん、リーチの狙いはここにもあった。


61833.jpg

裏1枚にこのリーチの価値の大きさを実感することができる。

5mは2枚脇に持たれていたため、実質山にない待ちでアガリを得ることに成功。

何より、テンパイ取らずの変化待ちだとテンパイすら入っていないため、本局に関しては積極策の即リーチが功を奏した言える。

言ってみれば、赤ツモの余勢を駆ってのリーチ判断であった。



case5
32762.jpg

東4局、17000点持ちラス目の西家。

対面親の先制リーチに対して、下家から追っかけリーチが入っている。

こちらもテンパイが入ったが、さてどうしよう?





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6m切って、ダマにした。

3mがちょうど通ったので、下家には6mはかなり通りそう。

問題は追っかけに踏み切るかどうか。

自身の点数的には追っかけで問題なさそうだが、待ちにさほど自信がないのと、ピンズの危険牌を引いたら9p切りで回れるのが本局は大きいと考えた

6p含めてピンズの無スジはかなり危険だが、下家が9pを通しているので、テンパイを維持しつつ回りやすい状態にあるからだ。


32764.jpg

次巡、持ってきたのは望外の赤5s。

さて、どうしよう?





32765.jpg

ここで腹を括って追っかけに踏み切った。

8sが通ったので、5sは割合切りやすくなった。

どうしても切れない36pを待ちにして、出アガリ6400からなら十分に勝負に値するだろう。

赤を吸収することで、自身のリターンが大きくなっただけでなく、リスクも相対的に小さくなる。

卓上のエネルギーバランスが大きく変化した瞬間だと言える。


32766.jpg

しかし、下家の当たり牌を掴んで、8000の放銃となってしまった。

下家には赤が2枚も使われていて、エネルギーに満ちた手だった。

待ちを25sに受けていれば、対面から先にアガリがあった。つまりこちらにも十分にチャンスはあった。

ただ、この2件に対してやっぱり6pは切りづらいなあ…


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牌山をオープンしてみると、下家の待ちがかなり強かったことがわかる。

腹を括った結果なので、この放銃に後悔はない。

その潔さが良かったのか、この半荘は2着終了と挽回することができた。


ちなみに、2件リーチに対して私の手に9p、中というはっきりした安全牌が6枚ある。

他家リーチに対する完全安牌が自身の手に多ければ多いほど、山には相対的に他家の危険牌が眠っていることが多い。

これはあまり語られることは少ないが、このあたりも攻守判断の基準に加えれば、精度は上がるだろう。



case6
53983.jpg

東3局、22000点持ち3着目の北家。

ご覧のように、かなり変則的な場況となっている。

こちらも、ピンフのテンパイとなったが、7pがたった今4枚切られたばかり。

さて、どうしよう?





53984.jpg

これは通なら5p切ってリーチも考えるところだが、普通にピンフに受けてダマとした。

6pは明らかに強いが、2pは強いとは言いがたいので。

それならば、サッと4pを拾うのでも良さそう。


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次巡、赤5sに振り替わったが、さてどうしよう?





53986.jpg

ここでリーチとした。

4pが弱いわけではないので、赤1あるならリーチで良さそう。


53987.jpg

上家から追っかけが入るも、無事にツモって1300・2600。

変則的な場況の割には、上家も普通にピンフだった。

非常にオーソドックスな赤振り替わりリーチの例。



case7
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東4局、40900点持ちトップ目の西家。

フリテン部分を完成させて、役ありテンパイ。

さて、どうしよう?





49338.jpg

テンパイに取って、ダマとした。

4pを浮かせる手もあるが、出アガリできる手につき、緩手になる可能性もある。

トップ目につき、あまり捻らず、局回しを優先させるという意図。


49339.jpg

ほどなくして持ってきたのは、赤5s。

ソーズの好形変化をミスった感がなきにしもあらず。

さて、どうしよう?





49340.jpg

黒5sを切ってリーチに踏み切った。

2sじゃないのは安全度の観点から。

トップ目につき、リーチする必要もないが、ここは打点を叩くチャンスだと考えた。

私の河からは、8mは拾いやすい感じもある。


49341.jpg

狙い通りに上家から出て、5200のアガリ。

積極策が奏功して、さらに点差を広げることに成功した。

東場のうちはできるだけ点差を気にせず、叩けるだけ叩いておくのがオススメだ。



case8
41508.jpg

南1局、31400点持ち2着目の南家。

上家の親がやや抜けたラス目で、その親が仕掛けている。

この局はかわしで十分と考えていたところ、絶好の赤5mがインする。

さて、どうしよう?





41509.jpg

入り目が赤ならと、迷わずリーチした。

親はドラも切ってるタンヤオ仕掛けなので、脅威がまったくない。

仮に9p掴んでも出るだろうし、ここはきっちり打点を稼ぎにいくところだと判断した。


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長引いた末に、親のカン4pに捕まり、1500の放銃となる。

負ける気はまったくしなかったが、さすがに4pを引いた時は観念した。

放銃したといっても1500なので、全然問題ないはずなのだが、この綻びをきっかけになんとラスまで落ちてしまう

ラス目の親をきっちり落とせなかったことがあまりにも大きな代償を生んでしまった。


41511.jpg

この1枚の絵には多くの示唆を含んでいる。

この時すでに対面にはテンパイが入っていたが、私がリーチしたことにより、対面は回ってしまった。

結果的にそれが親のアガリを生んでしまったわけだ。

つまり、

@私がダマなら、ほぼ間違いなく、対面か私か下家がアガっている

A裏ドラが1mにつき、この手をアガれば決定打になっていた

B369pではなく58p待ちに受けていれば私のアガリだった


みなさんは、この分岐についてどのような感想を持っただろうか?


天鳳においては、ラス回避という別ゲーの側面もあるため、自分の手に溺れずラス目の親はきっちり流すということも重要となってくる。

それを踏まえた上で、このリーチが勇み足だったとは私は思わない。

赤ツモの勢いに乗じて、勝ちを決める局面だと思うからだ。

長い目で見てどうかということを判断していかなければならない。


感触のいい赤引きによっても、良くない結果になることももちろんある、ということである。



ラベル:天鳳 赤5
posted by はぐりん@ at 23:59 | Comment(0) | 天鳳 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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