「牌形」というのは自身の手牌がどのような傾向・偏りを持っているのかを示す言葉であり、主に縦と横を分類する際に用いる(私自身はそのように用いている)。
「牌形が縦寄り」とか「牌形トイツ手」などと用いる。
牌形が縦横のどちらを示しているかをある程度把握しておくことは、自身の手牌の方針・方向性を決める上で非常に重要だ。
例えば、明らかに配牌がゴツゴツしていてシュンツ手がアガりづらそうだ、という時があるだろう。
そういう時は自身の牌形を「縦」としてまずは定めるわけだが、これに場況の情報を加味していく。
場況も縦の傾向を示しているなら、自身の牌形が場況にマッチしているとして、縦方向の手役を狙うのが定跡となる。
場況が縦か横かを判断する方法は、過去にいくつか記事にしているので参照していただきたい。
以下は牌形についての過去記事である。
トイツ場の兆候 3・7(尖張牌)が固まっている
牌形と場況の組み合わせでどういう方針にするのが効率的かというのが大きく変わってくる。
牌形縦&場況縦 いわゆるトイツ場 トイツ手に決め打ち
牌形縦&場況横 中立 トイツ手方向に向かう
牌形横&場況縦 中立 シュンツ手方向に向かう
牌形横&場況横 いわゆるシュンツ場 シュンツ手に決め打ち
牌形によって方針を決め、ツモと場況からそれに修正を加えていくのが効果的な手組み、いわば真の牌効率ということになる。
牌形トイツ手の場合、ひとつの完成シュンツが足枷となって、受け入れが狭いのに仕掛けるに仕掛けられないというジレンマに陥ることがある。
こういうケースでは牌形を重視し、シュンツを壊してトイトイ狙いで仕掛けるのが有効となることも少なくない。
難しいことは考えずに、手牌がトイトイになりたがっていると感じたら積極的にポンしていくことをオススメしたい。
それでは、実戦例から見ていこう。
case1

東1局1本場、23500点持ちの北家。
ドラドラのチャンス手だが、手牌がややゴツゴツしている。
上家から8pが出たが、さてどうしよう?

ポンした。
258pがきれいにスジトイツとなっていて、牌形トイツ手の典型的な形だ。
こういうケースではピンズは他家が縦で固めていることが多い。
さて、ここから何を切るか?

タンヤオとトイトイの両天秤なので、1sが不要となる。
この8pに反応するためには、ある程度の準備が必要だが、258pのトイツがメンツ手の足枷になりやすいと考えれば自然とポンの声が出るはずだ。
形で反射的にポンする人もいるかもしれない。

牌が縦に寄ってきて、2s重なりの後3sも重なった。
さながら仕掛けてチートイツの様相だが、ここから何を切る?

当然ながら縦に寄せる。
単独の23sシュンツがそれぞれ重なって、並びトイツができた。
並びトイツやスジトイツはトイツ場に現れやすい牌形につき、これはトイツ形に決めていい。
23sはいずれも鳴きやすいので、間違ってもここは切らない。
赤5mをフォローしたい方は4m切りでもギリギリいいかもしれない。

これぞというツモでイーシャンテンに。
美しい並びトイツとスジトイツを生かして予定通り4mを払っていく。

直後に3sが出て、電光石火のテンパイ。
あの仕掛けからわずか3巡でこの最終形になるとは我ながら驚きだ。
下手に効率を重視していると、このテンパイは入っていない。

アガリまでは長引いたが、無事にツモって2000・4000。
対面の手に注目していただきたい。
下家の2pがタッチの差で254p待ちのテンパイが入っているものの、既にアガリ牌は山に1枚もない。
逆に私の2sは山に2枚も残っていた。
これがトイツ場のマジックであり、牌形と場況にマッチしたトイトイの捌きであったことがわかるだろう。
トイツ系雀士はこのアガリひとつで間違いなくノリノリになるはずだ。
case2

南1局、30000点持ち2着目の北家。
トップ目の親とは900点差の微差となっている。
ドラドラ赤のチャンス手をもらっているが、ここから何を切る?

素直に浮いている5p切りとした。
7mを残すことでチートイツへの渡りがあるため、くっつきよりもそちらを重視した。
牌形トイツ手の捌きの基本として、孤立牌よりも牌の重なりを重視するというのがある。
特にこういう高いけれども動きづらい手の場合、次の牌の重なりによってはトイトイの渡りを打てることがあるからだ。

こういう6m重なりを捉えられるかどうかは大きい。
メンツ手のみならず、チートイツのイーシャンテンにもなる。
ピンズで1メンツミスったのは痛いが、楽しみな手牌になってきた。

下家から7mが出たが、さてどうしよう?

ポンして赤切りとした。
58mが薄いわけでもなく、メンゼンテンパイも十分に可能だが、積極的に仕掛けた。
マンズの場況が絶好なのは見ての通りで、7mポンにより6mの出にも期待できる。
いわゆるシャンテン数の変わらない鳴きだが、ポンテンに取れることでテンパイスピードがアップするのが大きなメリットだ。
ドラ待ちでリーチすることになっても、まあアガれないだろうし。

狙い通りに6mがポンできてテンパイ。
テンパイまで漕ぎつけられればひとまず成功と言っていいだろう。

3着目対面のリーチ(宣言牌を上家がチー)直後に持ってきたのは赤5s。
これはさすがに切れずに、1pの暗刻落としで回る。

海底前に上家が4sを勝負してきた。
これを鳴けばテンパイが入るが、さてどうしよう?

これをチーテンに取ったが、3sがアウト。
掴んだ356s全部当たりとはこれいかに。
裏は乗らずに1600で済んだのが不幸中の幸いだった。
少しバタバタしたが、この半荘は2着で終了した。

鳴かなければ絶好の5mをツモってテンパイだった。
アガれたかどうかは微妙なところ。
3m9pが全部持たれていたことから、場況に完全にマッチしていた仕掛けではなかったということだろう。
このように上手くいかないこともあるが、牌形に照らしたチャレンジなら及第点は得られるはずだ。
case3

開局の南家。
牌形トイツ手では、完成メンツに重なるこういうツモを大事にしたい。
中も2枚切れになったし、とてもいいツモ。
また、1pをカンしないことでチートイツの芽を残すことができる。

9sが出たがどうするか?

ポンした。
オタ風の西が1枚切れということで、仕掛け前提のトイトイ移行とした。
メンゼンテンパイの敷居が高いため、これはcase2よりもポンしやすいかもしれない。

西が早いとしてやったりのテンパイ。
西は待ちになっても面白かったが。

も、下家の3900に捕まってしまった。
下家は4mチーにより2mを使い切り、上手く打たれた感が満載。
私の待ちはというと、おやおや…?

ポンテンの時点で、なんと全山だった。
イメージ通りだったが、当たり牌が山に深かった。
それにしても下家は直後に掴んだ2mが完全なる浮き牌だった。
これを使い切った上でアガり切る粘り強さはぜひとも見習いたいところ。
このように、メンゼンテンパイの受け入れが狭い牌形トイツ手はシュンツをぶっ壊す意識を持つことで時にアガりやすさを得られることがある。
コツとしては、完成シュンツに重なる牌を大事にすることで、トイトイへの渡りを打ちやすい。
牌形を意識しつつ、それに場況を組み合わせることで、目指すべき最終形が見えてくるはずだ。
5トイツ時に結構守備力的にもチートイツを重視しすぎてトイトイに寄せていくのを嫌ってましたが、ドラドラなら満貫確定ですし強引に鳴いていったほうがいいですね
最終的な待ちが内側になっても、トイツ場だと案外ツモってきたり他家が隣の牌を暗刻っていて使いにくくなっての出和了りもたまに出来て和了率upにつながりました
いつもためになる記事ありがとうございます
そうですね。
守備力との兼ね合いでトイトイは躊躇してしまいやすいですが、場況にマッチしていれば案外放銃しないですし、アガリも十分に見込めますよね。
アガリ率UPにつながったのならよかったですね!
こちらこそありがとうございます。